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『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』の真相について 経済アナリストの菊池英博氏に聞く(2)
【PJ 2007年09月28日】−
(1)からのつづき。
−平成の大不況が大恐慌に発展したのは、米国と逆の政策を採ったためと書かれていますね。
「日本は1995年からの金融恐慌に際して、1990年代米国のS&L(貯蓄貸付組合)への措置をまねたことがスタートラインとして大きな失敗だった。特に旧大蔵省『金融システム委員会』の委員だった池尾和人氏、伊藤隆敏氏、堀内昭義氏、翁百合氏らは公的資金注入に反対し、当時の実情に合わない的外れなことばかり言ってきた。1990年代前半の米国の措置は中小銀行を対象にしたものだった。それをまねしようとして適正を欠く提言を行っていた。平成金融恐慌では大手銀行が対象になるからであって、1990年代のアメリカの政策は当てはまらない。大手行は株を大量に持っていたため、被害が大きくなった。だから参考にすべきは「大恐慌タイプ」の1930年代の米国だったはず」
「米国は1933年施行の新銀行法(グラススティーガル法)で、銀行の株式保有を禁止し、金融機関への時価会計の適用を無期限延期し、この方針は実に1993年まで60年間も継続した。1990年代の日本では、これと同じことが発生し、株価が下がると含み損が発生し、自己資本比率の低下を招き信用収縮を引き起こしたのである」
「そして、1998年6月に深尾光洋氏や池尾和人氏、伊藤隆敏氏、翁百合氏、香西泰ら『金融監督政策研究会』が提言を発表した。この案では、不良債権が多ければ、大銀行でも破たんさせ、ブリッジバンクを政府が設立して破たん銀行をその管理下に置くという案であった。大手行を一方的につぶしたらどうなるか。金融恐慌が一挙にぼっ発し金融システムが破壊されてしまう。その後、わたしが提案したように大手銀行に公的資金を注入する方針を決めて金融システムが回復した。危機の認識を誤り、大手行の株式保有がもたらす金融システムへの危険性を分からなかった市場原理主義者たちが、当時の市場を混乱させたのであり、彼らが現在でもまだ金融審議会に残っている。本来なら10年前に公職から追放(パージ)すべきである」
−彼らは認識が甘かったというより、米国の手先としてわざと企業破たんをもくろんだ可能性は。
「それはないと思う。このブリッジバンク法案が間違っていると言ったのは、米国のグリーンスパン(当時の連邦準備制度理事会議長)だから。彼は親切にも1995年のG7の会合で、『日本は1990年代の米国より、1930年代の米国を参考にすべき』と助言している。わたしは米国を悪く言うつもりは全くない。米国のまねをして日本に合わない政策を導入しようとしたのは、日本の学者(ブラインド・オポチュニスト)だ。不況のとき時価会計を入れたり、デフレのとき緊縮財政をやったりする日本人を見て、米国の心ある識者は内心『ばかだねえ』と思っている。
−国際会計基準の導入は米国の要求で行われたはずでは。
「それは確かだ。ただし、デフレのときに採用する必要はない。いつやるかは日本の判断であり、議論すればいい。それから、日本がどんどん悪くなることを米国はそれほど希望していない。わたしが2003年12月にベン・バーナンキ(当時、連邦準備制度理事。現在は同総裁)に会ったときに彼はこう言った。『世界で需要があるのは、米国と中国だけ』と。日本はなぜ需要喚起させないのかとの趣旨とも受け取れる。日本の需要が増加して輸入増加すれば、米国もプラスなはずだ。対日要求があることは事実だ。しかし、日本の現状に合わない米国のシステムを盲目的に日本に受け入れる学者と政府が間違っている。日本にとって適切な意見を持っている学者が政府の周りにいないのが残念だ。竹中氏がやってきたことは全面的に間違っている。結果を見れば分かることで、日本はまだデフレが続いており、金融システムはかってないほど弱体化している」
【つづく】
■関連情報
【書評】『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠・このままでは日本の経済システムが崩壊する−−ゆうちょ銀行、かんぽ生命が引き金を引く−−』(菊池英博著、ダイヤモンド社 2007.6)
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−平成の大不況が大恐慌に発展したのは、米国と逆の政策を採ったためと書かれていますね。
「日本は1995年からの金融恐慌に際して、1990年代米国のS&L(貯蓄貸付組合)への措置をまねたことがスタートラインとして大きな失敗だった。特に旧大蔵省『金融システム委員会』の委員だった池尾和人氏、伊藤隆敏氏、堀内昭義氏、翁百合氏らは公的資金注入に反対し、当時の実情に合わない的外れなことばかり言ってきた。1990年代前半の米国の措置は中小銀行を対象にしたものだった。それをまねしようとして適正を欠く提言を行っていた。平成金融恐慌では大手銀行が対象になるからであって、1990年代のアメリカの政策は当てはまらない。大手行は株を大量に持っていたため、被害が大きくなった。だから参考にすべきは「大恐慌タイプ」の1930年代の米国だったはず」
「米国は1933年施行の新銀行法(グラススティーガル法)で、銀行の株式保有を禁止し、金融機関への時価会計の適用を無期限延期し、この方針は実に1993年まで60年間も継続した。1990年代の日本では、これと同じことが発生し、株価が下がると含み損が発生し、自己資本比率の低下を招き信用収縮を引き起こしたのである」
「そして、1998年6月に深尾光洋氏や池尾和人氏、伊藤隆敏氏、翁百合氏、香西泰ら『金融監督政策研究会』が提言を発表した。この案では、不良債権が多ければ、大銀行でも破たんさせ、ブリッジバンクを政府が設立して破たん銀行をその管理下に置くという案であった。大手行を一方的につぶしたらどうなるか。金融恐慌が一挙にぼっ発し金融システムが破壊されてしまう。その後、わたしが提案したように大手銀行に公的資金を注入する方針を決めて金融システムが回復した。危機の認識を誤り、大手行の株式保有がもたらす金融システムへの危険性を分からなかった市場原理主義者たちが、当時の市場を混乱させたのであり、彼らが現在でもまだ金融審議会に残っている。本来なら10年前に公職から追放(パージ)すべきである」
−彼らは認識が甘かったというより、米国の手先としてわざと企業破たんをもくろんだ可能性は。
「それはないと思う。このブリッジバンク法案が間違っていると言ったのは、米国のグリーンスパン(当時の連邦準備制度理事会議長)だから。彼は親切にも1995年のG7の会合で、『日本は1990年代の米国より、1930年代の米国を参考にすべき』と助言している。わたしは米国を悪く言うつもりは全くない。米国のまねをして日本に合わない政策を導入しようとしたのは、日本の学者(ブラインド・オポチュニスト)だ。不況のとき時価会計を入れたり、デフレのとき緊縮財政をやったりする日本人を見て、米国の心ある識者は内心『ばかだねえ』と思っている。
−国際会計基準の導入は米国の要求で行われたはずでは。
「それは確かだ。ただし、デフレのときに採用する必要はない。いつやるかは日本の判断であり、議論すればいい。それから、日本がどんどん悪くなることを米国はそれほど希望していない。わたしが2003年12月にベン・バーナンキ(当時、連邦準備制度理事。現在は同総裁)に会ったときに彼はこう言った。『世界で需要があるのは、米国と中国だけ』と。日本はなぜ需要喚起させないのかとの趣旨とも受け取れる。日本の需要が増加して輸入増加すれば、米国もプラスなはずだ。対日要求があることは事実だ。しかし、日本の現状に合わない米国のシステムを盲目的に日本に受け入れる学者と政府が間違っている。日本にとって適切な意見を持っている学者が政府の周りにいないのが残念だ。竹中氏がやってきたことは全面的に間違っている。結果を見れば分かることで、日本はまだデフレが続いており、金融システムはかってないほど弱体化している」
【つづく】
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