アーセナルのピーター・ヒル=ウッド会長は、チェルシーが掲げる“イングランド最強クラブ化計画”を「夢物語」と一刀両断。ビッグクラブの歴史と伝統は「金で買えるものではない」と語った。

 チェルシーの最高経営責任者を務めるピーター・ケニオンは先日、ロシア人オーナーのロマン・アブラモビッチの下でヨーロッパ最強クラブの座を目指すと宣言。「ロマンはチェルシーがヨーロッパのサッカー界を席巻することを望んでいる。そのためには、最低でも10年間で2度、ヨーロッパ王者のタイトルを獲得しなければならない。もちろん、国内リーグを支配する必要もある。そのために必要なインフラや人員の整備も必要となる」と語り、チェルシーがプレミアリーグを支配すると語った。

 しかしヒル=ウッドは、ジョゼ・モウリーニョの退団で揺れるチェルシーが、イングランドサッカー界を牛耳るのは時期尚早と断言。モウリーニョのラストゲームとなったチャンピオンズ・リーグのローゼンボリ戦で観客数が2万5000人を下回ったライバルチームがビッグクラブを目指すには、相応の歴史が必要と語っている。

「チェルシーについて悪く言うつもりはないが、英国サッカー界におけるビッグネームと言えば、やはりマンチェスター・ユナイテッドとリバプールの名前を挙げざるを得ない。チェルシーが突然マンUやリバプールを越える存在になると考えるのはほとんど幻想だ。そんなことはあり得ない。例えば、先日のチャンピオンズリーグの試合。チェルシーの観客数が2万5000人を下回ったと聞いて、私は非常に驚いた。我がクラブでも、最低で3万人は収容する。そのファンの歴史は、親から子どもへと受け継がれる。そこまで到達するのに100年の年月が必要だ。しかし、その歴史が崩壊するのは、100分もあれば充分。クラブの歴史に資金力の規模は関係ないということだ」

 昨シーズン、新本拠地のエミレーツ・スタジアムへと移転したアーセナルは、観客数の増加などにより、その収益が2億ポンド(約470億円)を越えた。さらに、今シーズンのリーグ戦では、FWティエリ・アンリの退団の影響も感じさせず、現在首位を走っている。外国資本によるクラブ買収を拒み続けるなど、独自の経営方針で成果を残すアーセナルは、着々と英国ナンバーワンクラブへの道を歩み続ける。