かつて「ストリートファイター」や「THE KING OF FIGHTERS」シリーズなどがアーケードを風靡した2D格闘ゲームですが、2001年のSNKの倒産に見られるように、現在は時代を代表するものが生まれない「冬の時代」だそうです。

そして今、その状況を打破するためにゲーム会社だけでなく、「ひぐらしのなく頃に」のような、アマチュアが自費で制作した同人ゲームから盛り上げていこうという動きが生まれています。

今回は「MONSTER」という同人格闘ゲームを1人で制作しているShoK氏に、同人格闘ゲームを手がけるようになったきっかけから、ゲームセンターに試遊台を置いてもらえるようになった経緯、開発の苦労などの、さまざまなお話を聞かせてもらいました。

詳細は以下の通り。
◆「MONSTER」ってどんなゲーム?

タイトル画面はシンプル。


パッケージイラスト。キャラクターは隠しキャラクターを含めて10人います。


キャラクター選択画面。こちらは「古郡真夜」と「オセロ」というキャラクター。


こちらは翼がある少女「シェリー」と青い犬「アレクサンドル」。キャラクター選択画面ではキャラクターの色を変えられるとともに、「攻撃性重視モード」「安定性重視モード」「機動性重視モード」の3つを選ぶことができます。


戦闘シーン。


必殺技を使ったところ。キャラクターの顔が大写しになります。


ある一定条件を満たしたときに起きる「パワーブレイク」状態になると、押し負けた方が一定時間無防備になります。


こちらがデモンストレーションムービー。


◆「MONSTER」の制作を始めたきっかけ

GIGAZINE(以下、Gと省略):
どういう経緯で格闘ゲーム「MONSTER」を作り始めたのですか?

ShoK(以下、Sと省略):
私が格闘ゲームを始めた中学生時代は「THE KING OF FIGHTERS」の「97、98」が主流で、非常に人気が高いものでした。当時はとても良いゲームということで私自身も盛り上がっていましたが、格闘ゲームの流れやキャラクターの傾向が変わり、アーケードユーザーに受ける作品が減ったために格闘ゲームが衰退を始めてしまい、私もゲームセンターへ足を運ぶ機会が減っていってしまいました。

そこでもう一度、自分がやりたいような格闘ゲームがあればいいなという思いから、ゲームの制作を始めてみようと思ったことがきっかけです。

◆制作は1人で行っている

G:
制作は1人で行われているのでしょうか?

S:
ゲームのシステムや内容、調整、イラスト、グラフィック、サウンドなどの実作業は私1人ですが、キャラクターの原案や声優さんなどのスタッフの方々はちゃんと別にいます。

G:
本当にほとんど1人で手がけているのですね(笑)あえて自分でキャラクター全員を用意せずに、キャラクター原案を別の人たちに頼んでいるのには何か理由があるのですか?

S:
「動いたことがないキャラクターを実際に動かしてみたい」というのがゲーム制作の上でのコンセプトの1つにありました。そういう経緯から、友人の皆さんから1キャラクターずつ提供を受けています。

◆試遊台設置までの道のり

G:
ちなみに現在、中野TRFというゲームセンターで試遊台が置かれているそうですが、ここにまで至った道のりは?

S:
ゲーム制作に取りかかり始めたのが2003年〜2004年で、2005年後半にイベントでの販売や公式サイトを通して、「体験版」を公開しました。そこから試行錯誤を重ねて改良を加えてゆき、だいたい今の形に落ち着いたのが2006年の夏ごろですね。そして実際に商品として発売されるようになったのが、2006年の冬です。夏はほかのサークルさんが出された3Dアクションなどのタイトルが多かったので、時期をずらしました(笑)

発売後しばらくはネットで通信対戦が出来るというだけだったのですが、その後知人からお話をいただきまして、中野TRFさんに置かせていただくことになり、今現在に至ります。中野TRFさんは新しい試みを積極的に取り入れているゲームセンターでして、金銭の収受が発生しない試遊台という形で設置させていただいています。もしお近くに立ち寄られましたら、お気軽にご利用下さい。

試遊台が置かれている「中野TRF」は「まんだらけ中野店」の近くです。


店内はこんな感じ。


これが試遊台。毎週水曜日に試遊できるようになっており、プレイは無料です。


実際にアーケードで動いています。


◆同人サイドから格闘ゲームを盛り上げていく動きについて

G:
今は「格闘ゲーム冬の時代」と言われているようですが、中野TRFさんのように、ゲームセンター側や同人サイドからのアプローチというものはどのようになっているのでしょうか。

S:
中野TRFさんのほかに、関西のゲームセンターさんの方でも同人ゲームの試遊台が置かれているようです。

要するに今までゲームセンターに置かれるゲームは、商業のものに限られていたわけですけれども、やはり今「格闘ゲーム冬の時代」と言われている背景には、制作されている格闘ゲームがゲームとしての面白さよりも回転率の高さといった収益や、アーケードよりもコンシューマで売れることを重視するようになったことで、実際にゲームセンターで対戦してみて面白いと思える要素が欠けてしまったということがある気がします。

そして同人には、(回転率や売り上げよりも)ゲームが好きで制作しているという要素が強いので、ゲームセンターさんとしては金銭面よりもゲームセンター自体を盛り上げていくために試遊台の設置などを行っているのではないでしょうか。また、そのような店の関係者には業界関係の方もいらっしゃるので、同人ゲーム制作者がそういった方と知り合う機会もあるようです。

G:
つまり場合によっては、試遊台の設置などがきっかけで、商業化への道を歩む場合もあるということでしょうか?

S:
そういうことですね。

G:
同人ゲーム製作の現状はどうなっているのでしょうか。

S:全体的な作品のレベルは向上していますね。ゲーム制作のツールなどの開発環境自体が改善されたことがとても大きく、以前と比べて開発が容易になったことと、技術の向上が相まっているのだと思います。

◆「MONSTER」の強み

G:
「MONSTER」は、ほかの同人格闘ゲームと比べて、どのような強みがあるのでしょうか?

S:
実はもともと「MONSTER」のゲームのシステムは、このゲーム単体のために作り出されたシステムではなくて、アクションゲームを総合的に制作できるシステムとなっています。だから格闘ゲーム以外にもシューティングゲームやロックマンのようなアクションゲームも制作が可能ですね。プログラム本体を一切いじる必要は無く、タイトル画面やメニュー、グラフィックやサウンドもスクリプトを操作するだけで、すべてまかなうことができます。

G:
つまりとても汎用性が高いシステムということですね。

S:
そうです。あと、以前の同人格闘ゲームには、ほとんど通信対戦機能がありませんでした。有志のユーザーの方々がゲームに通信対戦機能を付加するというツールを制作して、それを使って非公式という形で通信対戦をしていましたが、MONSTERでは早い段階で公式に通信対戦機能をサポートしました。

通信対戦待ち受け画面。腕に自信があるユーザーは「乱入」を有効にすると、海千山千の猛者が勝負を挑んできます。


◆制作はどのようにして行われているのか

G:
1日の平均的なスケジュールはどうなっていますか?

S:
その日の作業によって違いますが、だいたい朝〜昼に起きてから寝るまでの間、ほとんど作業をしています。なので漫画を読んだりゲームをしたりするような余暇の時間はあまりありません。ゲームセンターさんなどへのあいさつ回りがあるときは、それに合わせて時間を空けて、ちゃんと間に合うように行きます。

G:
スタッフの人数はどれくらいですか?

S:
1人ですね(笑)ちなみにキャラクターの提供をしてくれたのは6人で、キャラクターに声を当てている声優さんは私を含めて5人です。

G:
声優さんの数がキャラクターの総数10人に対して足りませんが、一人二役があるということでしょうか?

S:
そうですね。大部分の声優さんが一人二役をやっています。

G:
昼食や夕食、休息時のおやつなどはどうしていますか?

S:
その都度近くのスーパーやコンビニに買いに出ています。外に出ることで気分の転換もできますので。

◆「MONSTER」を制作するにあたっての伝説的エピソードなど

G:
同人ゲームとして「MONSTER」を制作するにあたって、メリットはありますか?

S:
うちだけではないと思うのですが、同人ゲームというのはアマチュアの制作なので、商業と比べてサポートに手が回らないというリスクはあります。しかし同時に発売してしまった後でも、インターネットの普及もあって、修正パッチなどのいろいろな試みがしやすいというのもメリットですね。

あとはその時にモチベーションが高い作業にかかれることです。気分によって音楽や絵を進めたり、ゲームの内容を検討し直してみたりといったことがしやすいのが強みだと思います。

G:
MONSTERを制作するにあたって、苦労したエピソードや伝説的エピソードはありますか?

S:
今でも苦労はしていますが、先ほども述べたとおり、MONSTERというのはアクションゲームを総合的に制作できるシステムとなっています。なので、制作するにあたってシステム本体を作るのですが、通常なら実際に動いているところを見ながら作っていくことになるところが、大量の紙で仕様書を作った後、まるまる1年〜1年半ほど全く動かないプログラムをひたすら書き続ける作業をすることになりましたね。そしてそれが完成して実際に動いたときは、感動しました。

G:
プログラム自体にはいつから携わっているのでしょうか。

S:
小学4年のころにパソコンを触り始めまして、プログラムもその頃から始めていました。PC9801で、BASICを使ってRPGの制作をしていました。

G:
小学生のころからゲームを作っていたのですか?

S:
そうですね。あまりゲームをたくさん買ってもらえる裕福な小学生ではなかったもので(笑)、持っている数少ないゲームには飽きてしまうのと、もともと工作が好きだったというのもあります。

◆「MONSTER」の今後は?

G:
「MONSTER」の今後についてはどうお考えでしょうか。

S:
ただいま中野TRFさんで試遊台として動いていますが、まだMONSTERには未完成な部分が多く、完璧な状態ではないので、大部分に関して修正や追加を施すことを考えている最中です。

具体的には未実装の「シナリオモード」の実装や、ゲームのシステムをより分かりやすくしていこうと思っています。ほかにもゲーム画面自体の見栄えを良くするために、キャラクターのドット絵などを作り直している最中です。

これが現在作り直しているというドット絵。開発中につき、変わる可能性があるそうです。


G:
将来的にスタッフを増やしたり、ゲームスタジオを立ち上げたりするつもりはありますか?

S:
私自身はちょっと人と協調してやっていくのがそんなに得意な人間ではないので、自分がやりたいことを、やれる範囲でやっていこうと思っています。だから「スタッフを増やそう」とか「どこかと組んで、自分が主導的な立場になって、共同体として制作していこう」という考えはありませんね。

ただこの度、技術者として別のチームに技術提供をする予定でして、ディレクターのもとで、いいゲームを作っていこうというスタンスにも目を向けている最中です。

G:
この記事を読んで、格闘ゲームを作ろうと思った人に対して一言お願いします。

S:
格闘ゲームの制作は2Dゲームの中ではもっとも時間がかかるものだと思いますので、できる限り効率を上げることを考えていけば、最終的に実現するかもしれません。頑張って下さい。

G:
ありがとうございました。

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