モバイル検索日本での勝者 本当にヤフーとグーグルなのか

写真拡大

   携帯電話用検索エンジンを巡る市場が群雄割拠状態になっている。2006年が「モバイル検索元年」と呼ばれるくらいだから、「戦い」はまだ始まったばかりだ。ヤフーグーグルが2強になったパソコン検索と比べ、まだ「下克上」があり得ると見て、新規参入も相次いでいる。

   パソコン検索と携帯検索は、同じものではない。携帯検索の場合、携帯電話用の専門サイトを検索する一方で、動画など情報容量が大きいパソコン用サイトは対象外とする場合もある。両者を別々に検索するよう設定できるものも。また、まだ携帯検索は本格化して間がないせいもあるのか「関係の薄いサイトが上位にくる」「パソコン検索なら上位にくるサイトが出てこない」といった不満を抱くユーザーも少なくない。まだ「未成熟」といってもいいのだ。

   ちなみに、グーグルを使ってパソコンと携帯でそれぞれ「J-CAST」と打ち込んでみた。すると、パソコン検索では「検索結果約2,150,000件」、携帯では「約8,700件」と大きな違いが出た。上位3位を比べると、パソコンは1位がJ-CASTニュースのトップページ、2位「首相の靖国参拝 ネットで圧倒的『支持』」という06年8月15日のJ-CASTニュースの記事、3位Wikipedia(ウィキペディア)のJ-CASTの項目だった。一方携帯では、1位は「『ゆるい』ネットの付き合い(略)」という07年7月22日のJ-CASTニュースの記事、2位もJ-CASTニュースの記事だった。しかし3位は、J-CASTとは関係がないサイトの「J-POWER」(電源開発)に関する記事。記事を読んでみたが、J-CASTの文字は出てこない。携帯の場合、何度か同様の操作をしても上位に表示される内容はばらつきがあった。同じ「検索エンジン」とはいっても、両者にはかなりの違いがありそうだ。

後発組、やるからには「勝機あり」

    NTTドコモ「i-mode」の検索で「携帯検索」と打ち込むと、14種類の携帯(モバイル)検索サイトが出てきた。上からYahoo!モバイルGoogleモバイルfroute.jp(エフルート)、ケータイLivedoorと続く。14サイトをながめると、パソコン検索でも「顔なじみ」の名前から「初対面」のサイト名もあった。

   これだけではなく、新規参入組もいる。楽天は、ノルウェーに本社がある「ファスト サーチ&トランスファ」と合弁会社を2007年9月中旬に設立する。07年中にモバイル検索サービスを提供する計画だ。ファスト社の日本法人によると、同社は楽天市場のサイトで03年から検索エンジンを提供している。単に検索数が多いものを検索結果に並べるのではなく、「買い物をしたい」という利用者の目的に沿うように検索結果を表示させる「ノウハウがある」と胸を張る。このノウハウをモバイルに生かすという訳だ。「後発組として入っていくからには、良い結果をきちんと出せるという自負も勝機もあります」。

   パソコン検索の世界では、「勝ち組」に挑むのは大変だ。ネットレイティングス社の調査では、07年7月の家庭用パソコンから検索サービスを利用した人数のトップはヤフーだ。2位はグーグル、3位MSNと続く。順位は1年前と変わらないが、利用者数はヤフーが10%、グーグルが29%も伸びた。一方、MSNは1年前よりマイナスとなった。MSNの利用者は、1位のヤフーの3分の1以下だ。4位はMSNの半分以下。4位より下の順位のサイトも一部は微増しているが多くは減少した。「2強」に吸い取られているようにも見える。ネットレイティングスの広報・マーケティング担当は「今後もこの傾向に急激な変化はないでしょう」。

参入する企業の狙いは検索連動型広告

   モバイル検索の世界ではどうか。まだまだ「戦い」は緒についたばかりだ。06年7月にauブランドのKDDIが「EZweb」のトップ画面にグーグル検索を導入した。ソフトバンクもNTTドコモも06年からモバイル検索の取り組みを本格化させた。ネットエイジアリサーチなどの共同調査によると、07年3月の時点で首位はヤフーだった。複数回答でヤフーは52.3%が「よく利用」していた。2位はグーグルで37%、3位i-modeで28%だった。4位はぐっと下がってケータイBIGLOBEの6.7%だ。以下数%台が並ぶ。

   調査結果は、「3強体制」にも見えるが、ネットエイジアリサーチの境野智樹・R&D室長は、まだパソコン検索のように固定的なものではなく「付け入る余地が大きい」と分析する。検索作業にはパソコンを主体に使い、携帯電話を補助的に使う人がまだ多く、パソコン検索「勝ち組」のヤフーとグーグルを「何となく」利用してしまう傾向が見られる。しかし、20代以下の若い世代には「ケータイオンリー派」がかなりの勢いで増えている。

   検索もケータイ主体で、純粋に「目的のものが検索結果として出てくるか」を選択基準にしている。ヤフーとグーグルの「神話」は通用せず、今後「使いやすさ」で評判を取る検索サイトが出てくれば、一気に人気を獲得する可能性があるとみている。ヤフーとグーグルの携帯検索の機能に、現在そこまでの優位性はない、という訳だ。

   技術的に市場に入りこむ余地があるとして、実際に参入する企業の狙いは何なのか。境野室長は「検索連動型広告。これでしょう」と指摘した。モバイル検索を使う人が入力するキーワードはせいぜい2つで、パソコン検索利用者より少ない。その少ないキーワードで、いかにケータイの小さな画面に「目的に合った検索結果、広告を載せるか」が勝負の分かれ目になる。その勝負次第で勝ち組と負け組はくっきり分かれそうだ。「しばらくは参入企業も増えるだろうが、いずれは生き残るサイトは絞り込まれる」

   エフルートの尾下順治取締役COOに「勝算」を取材した。尾下さんは、「パソコン検索の手法」の単純な延長では携帯利用者の期待に応えるのは「至難の業」と見ている。利用者が欲しい情報を表示する。それがなければ情報コンテンツを用意する、という仕掛けを進めているという。「ヤフー、グーグルに勝ちたい。もちろん本気です」。結局は勝たなければ生き残れない、という流れはパソコン検索の世界と同じようだ。