あひるのCMで知られるアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が、がん保険のウェブCMを展開している。そのCM「生きるストーリー」に登場している一人が、自らを「ニュースの職人」と呼ぶジャーナリストの鳥越俊太郎だ。しかし、不偏不党が大原則であるべきジャーナリストが、一私企業のCMに出ることはタブーとされてきた。それゆえ、鳥越氏の行動には、メディア関係者からも疑問の声が上がってきている。
 鳥越氏がCMに登場するのは、初めてではない。2003〜04年と2年連続で日本損害保険協会の「地震保険」のCMにも出演している。だが、その後、損害保険会社の不払い問題が発覚した。社会を揺るがしたこの問題を報道すべき側の人間が、「ジャーナリスト」として損保側のCMに出ていたことは市民のひんしゅくを買った。「鳥越の信頼性で商品が売れる。そのために彼を起用したのだろう」(損保業界関係者)というが、その信頼性を担保しているのは、ジャーナリストという肩書だ。鳥越氏は、その肩書を企業と自分の利益のために使ったというそしりを逃れられないだろう。
「ジャーナリストのCM出演は、個人的にはよくないことだと思う。もし、その企業が問題を起こした場合、出演したジャーナリストだけでなく、ジャーナリズムそのものにも傷をつけるからだ」と指摘するのは、ビデオジャーナリストの神保哲生氏だ。同志社大学社会学部メディア学科の浅野健一教授も、「言語道断。文明国で、現役のジャーナリストがコマーシャルに出るなんてあり得ないこと」だと強調する。
 鳥越氏自身は、自らのCM出演をどうとらえているのか? 筆者が2年ほど前に電話で直撃した際には、「そんなことに、いちいち答えなくちゃいけないの?」と不機嫌そうに回答を拒否。今回、あらためて電話で聞くと、地震もがんも彼自身が経験しており、「保険には公共性があり、世に広まることに意味があると思うので出演した」と答えつつも、途中で「電話が入った」と言い、一方的に切られてしまった。
「公共性があるから出る」。しかし、これは詭弁だ。鳥越氏は2年前には、毎日新聞のテレビCM、最近は英会話学校GabaのウェブCMにも出ている。さらに鳥越氏は、昨年まで関西大学社会学部の客員教授としてジャーナリズムを教えていた。しかも、鳥越氏を広告塔に使うかのように、同大学は彼の写真を大きく学部のホームページに掲載していたのだ。筆者が「CMに出るようなジャーナリストを教授に迎えることに対して問題視する声もあるが?」と同大学に問うと、「コメントは控える」としながらも、早々と写真だけは消去するという不可解な対応を取られたことがある。
 そもそも鳥越氏は、いつジャーナリストの仕事をしているのだろうか? コメンテーターであることは間違いないだろうが、あるメディア関係者は「彼はジャーナリストでなく芸能人だ」と笑い飛ばす。
 メディアの倫理的問題を論じる著書も出している鳥越氏は、アフラックのCMの中で「イラクに行ったこともない人が、いろんなことを知らないままにしゃべっている。それはおかしい」と、自分のイラク取材歴を称賛するような口ぶりだ。しかし、彼がイラクに滞在したのは、たった10日間余り。このような取材は「パラシュート・ジャーナリズム」と呼ばれ、何か起きたときだけ一時的に派遣され、表面的なことだけを報道するという昨今のジャーナリズムの問題のひとつといわれている。
 鳥越氏は、82年11月から1年間ペンシルベニア州の新聞社でインターンを経験、それが「結果的に記者としての成長につながった」と語っている。ところが、そう語っているのが、GabaのウェブCMの中というから冗談のようだ。「記者としての成長」という言葉が空虚に響くではないか。鳥越氏の過去の実績まで否定する気はないが、コメンテーターとCM仕事が中心の今となっては、ジャーナリストの看板を下ろすのが、晩節を汚さぬ最善策といえるのではないだろうか。
(神林毅彦)

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