メディアが伝えない真実。原発&都市ガス、恐怖の物語(下)
2007年07月31日04時43分 / 提供:PJ
(中)からのつづき。監督官庁の原子力安全・保安院では、『都市ガスの安全な使用、敷地内に埋設された経年ガス管の早期取替について都市ガスをご利用の皆さんにお願いしています。都市ガスの事故は年々減ってきてはいるものの、不適切なガス機器の使用による事故や経年ガス管からの漏洩事故が依然発生しています』と注意を喚起する。だが都市ガスの被害による死者は毎年後を絶たない。 事故というより人災に近いガス器具の不整備や、配管による都市ガス供給とボンベによるLPガス供給についての区分さえ明快に判断できる消費者は少ないだろう。
「プレハブ住宅」で名を上げたダイワハウス工業の創始者石橋信夫氏は、20数年前のある日、新工場建設に際し、石川県小松市付近の有力候補地を視察した。義経伝説で名高い安宅関は元来日本海沿いの二堂山(ふたつどうやま)にあったとされ、「現在地より十数キロ沖に海没した」と聞いた石橋社長は、即刻当地での新工場建設を断念した。「海に沈むような場所を工場にはできない」というのである。
また、世界に冠たるロボット技術を誇るファナックは、売上高5000億円、経常利益1700億円を上回る有力企業である。創業者稲葉清右衛門氏は名誉会長職に甘んじているように見えるが、今年1月、茨城県筑西市にワイヤカット放電加工機と直接駆動(DD)モーターの新工場をそれぞれ建設すると正式に発表した。工場立地の理由を、「本社のある山梨県忍野村は富士山の噴火が予測されるため」と説明。「危険地帯に主力工場を建設できない」というコメントは、ダイワハウスの石橋信夫氏と同見解である。
賢明なる読者諸氏はここで、わたしの主張に気がつかれるはずである。東京電力は、中越沖地震による甚大な被害を、「想定外の大震災」などと強調し、自らの不明をさらす。これは事故ではない、事件なのである。企業犯罪と主張してもよいだろう。自社での災害を過小評価する東電幹部の不埒な発表など、今に始まったことではない。タバコの外箱に、「喫煙の弊害」が記載されているように、電力各社は「原発の弊害」をホームページに記載することを提案したい。核アレルギー過多などと言うなかれ。原爆の被害も、原発の事故も同様、地球規模で甚大なる禍根を残すのだ。
また、都市ガス各社は、LPガスと異なり空気より軽いガスが上昇し、地中管の破損によっては最大級の事故が発生すると注意すべき義務がある。さらに大震災に当たっては、火災発生の主要因になったと広報すべきなのである。全国各地に未発見の老朽地中管があるなど論外だ。都市ガスにかかわる「パロマのガス器具事故」も忘れされつつある。ちなみに、阪神淡路大地震では、域内に多数存在したGSからは一箇所たりとも火災は発生していない。そればかりか、都市ガス管破裂に起因する神戸市内長田町界隈の火災の多くはGSの「防火塀」によって阻止された。GSは小規模経営者が多い。消防法上の規制も多く、地場密着型事業者には、近隣への不始末には敏感なのである。電力・都市ガス会社のトップは、石橋、稲葉両氏の経営スタンスに見習う必要がある。地域における安全確保は、コンブライアンスの遵守以前の事業経営の問題。高額予算を執行して、地元を「カナ縛り」にする手法はもうごめん蒙りたい。
まがりなりにせよ、わたしは40年近くエネルギー関連企業に勤務してきた。専門的でないにせよ、エネルギー問題に関しては知悉(ちしつ)している。当然、原発の存在理由をも充分認識し、地球温暖化を阻止する有力な手段だと考えている。だが、PJニュース記事での、「メディアは、自ら恩恵に預かりながら、原発をパッシング」などという単純思考は容認できない。
エネルギー問題をメディアリテラシーと関係づけるなら、電力各社や都市ガス会社との癒着こそ追及すべきだ。簡単な証左は、今月27日付産経新聞13版30面下部を見た上で、28日の同紙朝刊を熟読されるとよろしかろう。朝日、毎日、読売各社の一面大見出しは28日も「東電柏崎刈羽原発」の大見出しが躍る。だが産経にはただの一行の原発関連記事は見当たらない。これは偶然ではない。「中越沖地震による現況報告」の東電の広告(写真)と関連付けるのが理解しやすいのである。
公共サービス企業が、ある1社の紙面をのみ選んで、「原発事故の現状」を、「市民に報告する」という思惑はどこから来たのか。東電幹部にお聞きしたい。付け加えれば、韓国より2倍以上高いという(朝鮮日報、ハン・サムヒ論説委員)電力料金の理由も消費者に知らせる必要があろう。
大騒動になった食品の安全安心問題。雪印食品の牛肉偽装事件、不二家の正味期限切れ材料使用問題、あるいは苫小牧市の食肉加工販売「ミートホープ」の食肉偽装問題などは、単なるコンプライアンス遵守の欠如。ただ一人の死者も出ず、入院患者も発生していない問題など、当節はやりの人民裁判にしか過ぎず、経営資質の粗末さは糾弾できても、会社自体を叩き潰す必要など皆無なのである。
度重なるメディアや市民らのパッシングによって、多くの「善意の社員」や下請け業者は失職した。かたや電力会社トップたちには、人命にかかわる危機管理意識は極めて低調であり、石橋信夫氏や稲葉清右衛門氏のような「先見性」など持ち合わせているとは到底思えない。つまり糾弾する相手と情熱を、メディアも市民も履き違えているのだ。国家経営も事業経営も、「百年の計」に基づいてほしい。
都市ガス事業も原発事業も「必要悪」である。だからこそ、関連各社の経営陣はこぞって安全第一を企業目標のトップに掲げ、深い反省に基づいて事業経営にあたるべきだ。今頃、「各原発に自衛消防隊を結成」など新聞の一面に書きたてられても困惑するだけ。「トップが秘密主義者」、「IAEAの査察を容認」など、北朝鮮の話題ではない。イタリアのセリエAのサッカーチームが来日を断った。外務省では、「日本は安全な国」と対外キャンペーンを張るという。費用は国費、国民の税金である。グローバリゼーションとは言葉だけ。もはやこの国の安心安全神話はついえ去ったと知るべきなのである。
巨大組織の経営陣は、企業存続の意味を今一度かみ締めるべきだ。メディアは「真なる危機」を感知し、市井に膾炙(かいしゃ)する報道を続けねばならない。火山列島の住民たちは、身辺に迫る「真の恐怖」を掌握せねばならない。安心安全に関する大問題だと騒いだ中越沖地震による柏崎刈羽原発事故。だが、メディア各社の報道は、29日の参院選の結果を踏まえた政局の行方に焦点は移った。賢明なる消費者は、恣意(しい)のまま動く大手メディアに翻弄(ほんろう)されてはならないのである。【了】
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「プレハブ住宅」で名を上げたダイワハウス工業の創始者石橋信夫氏は、20数年前のある日、新工場建設に際し、石川県小松市付近の有力候補地を視察した。義経伝説で名高い安宅関は元来日本海沿いの二堂山(ふたつどうやま)にあったとされ、「現在地より十数キロ沖に海没した」と聞いた石橋社長は、即刻当地での新工場建設を断念した。「海に沈むような場所を工場にはできない」というのである。
また、世界に冠たるロボット技術を誇るファナックは、売上高5000億円、経常利益1700億円を上回る有力企業である。創業者稲葉清右衛門氏は名誉会長職に甘んじているように見えるが、今年1月、茨城県筑西市にワイヤカット放電加工機と直接駆動(DD)モーターの新工場をそれぞれ建設すると正式に発表した。工場立地の理由を、「本社のある山梨県忍野村は富士山の噴火が予測されるため」と説明。「危険地帯に主力工場を建設できない」というコメントは、ダイワハウスの石橋信夫氏と同見解である。
賢明なる読者諸氏はここで、わたしの主張に気がつかれるはずである。東京電力は、中越沖地震による甚大な被害を、「想定外の大震災」などと強調し、自らの不明をさらす。これは事故ではない、事件なのである。企業犯罪と主張してもよいだろう。自社での災害を過小評価する東電幹部の不埒な発表など、今に始まったことではない。タバコの外箱に、「喫煙の弊害」が記載されているように、電力各社は「原発の弊害」をホームページに記載することを提案したい。核アレルギー過多などと言うなかれ。原爆の被害も、原発の事故も同様、地球規模で甚大なる禍根を残すのだ。
また、都市ガス各社は、LPガスと異なり空気より軽いガスが上昇し、地中管の破損によっては最大級の事故が発生すると注意すべき義務がある。さらに大震災に当たっては、火災発生の主要因になったと広報すべきなのである。全国各地に未発見の老朽地中管があるなど論外だ。都市ガスにかかわる「パロマのガス器具事故」も忘れされつつある。ちなみに、阪神淡路大地震では、域内に多数存在したGSからは一箇所たりとも火災は発生していない。そればかりか、都市ガス管破裂に起因する神戸市内長田町界隈の火災の多くはGSの「防火塀」によって阻止された。GSは小規模経営者が多い。消防法上の規制も多く、地場密着型事業者には、近隣への不始末には敏感なのである。電力・都市ガス会社のトップは、石橋、稲葉両氏の経営スタンスに見習う必要がある。地域における安全確保は、コンブライアンスの遵守以前の事業経営の問題。高額予算を執行して、地元を「カナ縛り」にする手法はもうごめん蒙りたい。
まがりなりにせよ、わたしは40年近くエネルギー関連企業に勤務してきた。専門的でないにせよ、エネルギー問題に関しては知悉(ちしつ)している。当然、原発の存在理由をも充分認識し、地球温暖化を阻止する有力な手段だと考えている。だが、PJニュース記事での、「メディアは、自ら恩恵に預かりながら、原発をパッシング」などという単純思考は容認できない。
エネルギー問題をメディアリテラシーと関係づけるなら、電力各社や都市ガス会社との癒着こそ追及すべきだ。簡単な証左は、今月27日付産経新聞13版30面下部を見た上で、28日の同紙朝刊を熟読されるとよろしかろう。朝日、毎日、読売各社の一面大見出しは28日も「東電柏崎刈羽原発」の大見出しが躍る。だが産経にはただの一行の原発関連記事は見当たらない。これは偶然ではない。「中越沖地震による現況報告」の東電の広告(写真)と関連付けるのが理解しやすいのである。
公共サービス企業が、ある1社の紙面をのみ選んで、「原発事故の現状」を、「市民に報告する」という思惑はどこから来たのか。東電幹部にお聞きしたい。付け加えれば、韓国より2倍以上高いという(朝鮮日報、ハン・サムヒ論説委員)電力料金の理由も消費者に知らせる必要があろう。
大騒動になった食品の安全安心問題。雪印食品の牛肉偽装事件、不二家の正味期限切れ材料使用問題、あるいは苫小牧市の食肉加工販売「ミートホープ」の食肉偽装問題などは、単なるコンプライアンス遵守の欠如。ただ一人の死者も出ず、入院患者も発生していない問題など、当節はやりの人民裁判にしか過ぎず、経営資質の粗末さは糾弾できても、会社自体を叩き潰す必要など皆無なのである。
度重なるメディアや市民らのパッシングによって、多くの「善意の社員」や下請け業者は失職した。かたや電力会社トップたちには、人命にかかわる危機管理意識は極めて低調であり、石橋信夫氏や稲葉清右衛門氏のような「先見性」など持ち合わせているとは到底思えない。つまり糾弾する相手と情熱を、メディアも市民も履き違えているのだ。国家経営も事業経営も、「百年の計」に基づいてほしい。
都市ガス事業も原発事業も「必要悪」である。だからこそ、関連各社の経営陣はこぞって安全第一を企業目標のトップに掲げ、深い反省に基づいて事業経営にあたるべきだ。今頃、「各原発に自衛消防隊を結成」など新聞の一面に書きたてられても困惑するだけ。「トップが秘密主義者」、「IAEAの査察を容認」など、北朝鮮の話題ではない。イタリアのセリエAのサッカーチームが来日を断った。外務省では、「日本は安全な国」と対外キャンペーンを張るという。費用は国費、国民の税金である。グローバリゼーションとは言葉だけ。もはやこの国の安心安全神話はついえ去ったと知るべきなのである。
巨大組織の経営陣は、企業存続の意味を今一度かみ締めるべきだ。メディアは「真なる危機」を感知し、市井に膾炙(かいしゃ)する報道を続けねばならない。火山列島の住民たちは、身辺に迫る「真の恐怖」を掌握せねばならない。安心安全に関する大問題だと騒いだ中越沖地震による柏崎刈羽原発事故。だが、メディア各社の報道は、29日の参院選の結果を踏まえた政局の行方に焦点は移った。賢明なる消費者は、恣意(しい)のまま動く大手メディアに翻弄(ほんろう)されてはならないのである。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資
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