7月31日、今日はなんの日。「星の王子さま」サン=テグジュペリ没
2007年07月31日04時30分 / 提供:PJ
1944年7月31日、コルシカ島のボルゴ飛行場を飛び立ったロッキード偵察機は、二度と地上には戻ってこなかった。乗員は、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ少佐であった。2003年、海底よりその乗機が発見され、引き揚げ回収された。
「南方郵便機」「夜間飛行」「人間の土地」「戦う操縦士」などで知られる作家サン=テグジュペリの一番親しまれている本が童話の「星の王子さま」である。1943年にニューヨークで初版が出版され、フランス本国での出版は1946年に遺作として刊行された。
その本の巻頭に、このような献辞がある。
『レオン・ウェルトに
わたしは、この本を、あるおとなの人にささげたが、子どもたちには、すまないと思う。でも、それには、ちゃんとした言いわけがある。そのおとなの人は、わたしにとって、第一の親友だからである。もう一つ、言いわけがある。そのおとなの人は、子どもの本でも、なんでも、わかる人だからである。いや、もう一つ言いわけがある。そのおとなの人は、いまフランスに住んでいて、ひもじい思いや、寒い思いをしている人だからである。どうしてもなぐさめなければならない人だからである。こんな言いわけをしても、まだ、たりないなら、そのおとなの人は、むかし、いちどは子どもだったのだから、わたしは、その子どもに、この本をささげたいと思う。おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)そこで、わたしは、わたしの献辞を、こう書きあらためる。
子どもだったころのレオン・ウェルトに』(内藤濯訳 岩波書店版)
レオン・ウェルトは実在の人物である。サン=テグジュベリよりも22歳年上であるが、無二の親友となった。ジャーナリストでもあり、作家、批評家といった多彩な仕事をしていた。第一次世界大戦の経験から、熱烈な平和主義者だったが、ユダヤ人であったため、ナチスによる弾圧を避けて隠れ住んでいた。
この「星の王子さま」は、第二次世界大戦中という出版年代の背景をしっかり理解しておくべき本でもあるかもしれない。それによって読み方は大きく変わるのだ。著作権保護期間が2005年に満了して、新たな翻訳も数多く出版されている。その時代の背景を語ろうすれば、本文の倍以上の解説や、脚注が必要になるであろう。第二次世界大戦が終結して62年の歳月が経過している。既にそのことは、歴史の1ページとしてしか語られず、また簡単には理解されない状態になっているのだ。
「星の王子さま」の冒頭の「うわばみ」の話は、示唆的である。子どもの絵は、大人には理解不能である。おとなは、それを理解したようなふりをする。そして、子どもから大人への成長とは、この理解できたようなふりをすることができるか、どうかなのである。現代の日本では、この成長を子どもに一日でも早くするように強いているように、私には感じられて堪らない。とともに、事細かく解説しては、その本質を自らで掴みとることをできなくしているようにも思えるのだ。
実際はこの「星の王子さま」の背景や巻頭の献辞が、だれにでも理解できなくなった時代に於いて、この本が語りかけてくることが大切なのだと私は、考えている。その寓意が理解できなくなった時に、素直に感じてくるものが、この本の「本質」そのものではないだろうか。【了】
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「南方郵便機」「夜間飛行」「人間の土地」「戦う操縦士」などで知られる作家サン=テグジュペリの一番親しまれている本が童話の「星の王子さま」である。1943年にニューヨークで初版が出版され、フランス本国での出版は1946年に遺作として刊行された。
その本の巻頭に、このような献辞がある。
『レオン・ウェルトに
わたしは、この本を、あるおとなの人にささげたが、子どもたちには、すまないと思う。でも、それには、ちゃんとした言いわけがある。そのおとなの人は、わたしにとって、第一の親友だからである。もう一つ、言いわけがある。そのおとなの人は、子どもの本でも、なんでも、わかる人だからである。いや、もう一つ言いわけがある。そのおとなの人は、いまフランスに住んでいて、ひもじい思いや、寒い思いをしている人だからである。どうしてもなぐさめなければならない人だからである。こんな言いわけをしても、まだ、たりないなら、そのおとなの人は、むかし、いちどは子どもだったのだから、わたしは、その子どもに、この本をささげたいと思う。おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)そこで、わたしは、わたしの献辞を、こう書きあらためる。
子どもだったころのレオン・ウェルトに』(内藤濯訳 岩波書店版)
レオン・ウェルトは実在の人物である。サン=テグジュベリよりも22歳年上であるが、無二の親友となった。ジャーナリストでもあり、作家、批評家といった多彩な仕事をしていた。第一次世界大戦の経験から、熱烈な平和主義者だったが、ユダヤ人であったため、ナチスによる弾圧を避けて隠れ住んでいた。
この「星の王子さま」は、第二次世界大戦中という出版年代の背景をしっかり理解しておくべき本でもあるかもしれない。それによって読み方は大きく変わるのだ。著作権保護期間が2005年に満了して、新たな翻訳も数多く出版されている。その時代の背景を語ろうすれば、本文の倍以上の解説や、脚注が必要になるであろう。第二次世界大戦が終結して62年の歳月が経過している。既にそのことは、歴史の1ページとしてしか語られず、また簡単には理解されない状態になっているのだ。
「星の王子さま」の冒頭の「うわばみ」の話は、示唆的である。子どもの絵は、大人には理解不能である。おとなは、それを理解したようなふりをする。そして、子どもから大人への成長とは、この理解できたようなふりをすることができるか、どうかなのである。現代の日本では、この成長を子どもに一日でも早くするように強いているように、私には感じられて堪らない。とともに、事細かく解説しては、その本質を自らで掴みとることをできなくしているようにも思えるのだ。
実際はこの「星の王子さま」の背景や巻頭の献辞が、だれにでも理解できなくなった時代に於いて、この本が語りかけてくることが大切なのだと私は、考えている。その寓意が理解できなくなった時に、素直に感じてくるものが、この本の「本質」そのものではないだろうか。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 鈴木 修司
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