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北アルプスで見つけたぞ、魅力の山小屋はここだ!(下)

北アルプスで見つけたぞ、魅力の山小屋はここだ!(下)
上條文靖さんは3年前に「野口五郎小屋を継ぎます」と、父親の盛親さんに申し出た。勤務先の会社に退職届けを出した。(撮影:穂高健一、7日) 写真一覧(5件)
【PJ 2007年07月28日】− (中)からのつづき。野口五郎小屋の上條文靖さんは、幼いころから父親・母親の登山者への献身的な姿を見て育ってきた。登山者にとって野口五郎小屋がいかに大きい存在か、という認識もあった。だから、後を継ぐ決断に結びついたのだ。

 「妻は大町市内の家を守っています。3人の子どもはまだ小さいですから、山小屋には手伝いに来ません。実は、妻は一度も北アルプス登山をしたことがないんです」と話す。よく賛成してくれましたねと聞いてみた。
「私の決意の強さ。祖父の代からつづく、山小屋への使命感が強かったから、妻が押し切られたのだと思います」という。
 
 山小屋経営など知らない、大町市内に住む愛子さんから、夫の口から山小屋の継承の話しが出たときの状況を聞くことができた。「 えっ、どうやって暮らしていくの? このさき子どもの教育費もかかるし」と驚いたという。主婦として、最大の不安が収入だった、と隠さず教えてくれた。

 冷静になって考えてみれば、「経験豊かな義両親が傍にいるし、夫一人がいきなり山小屋を全面的に取り仕切るわけではない。義両親がきっとおおきな力になってくれるはず。しっかり山小屋を継いでほしいと思いました」。愛子さんは山小屋を見ずして、夫の転職の決意の強さに理解を示したのだ。
 
 長く留守宅を預かる心境についても、愛子さんに聞いてみた。「心細さは隠せません。でも、子どもは中学一年を先頭に3人いますし、もう手もかからないし、母子で家を守っています」と語った。

 上條文靖さんが語った使命感とはいかなるものなのか。北アルプスの裏銀座コースは烏帽子小屋、野口五郎小屋、水晶小屋、三俣山荘、双六小屋、そして槍の肩小屋と一本の線で結ばれている。山小屋から山小屋のスパン(距離)は長い。中高年登山者だと、一日の行程に1カ所の割合のところもある。

 しかし、野口五郎小屋は、天候が良いと通過してしまう山小屋だ。裏銀座は風雨とか、風雪とか、悪天候による遭難事故が多いところだ。最近では雨具が発達し、疲労凍死は少なくなってきた。それでも、北アルプスの山岳のなかで遭難は多いほうだ。

 黒部川を吹き抜ける強風は半端ではなく、風速50メートル強もめずらしくないという。悪天候となると、山小屋間の距離がことのほか長く、登山者にはリスクの高い登山が強いられる。

 夏山登山者でも、天候が崩れたならば、裏銀座の野口五郎小屋はいのち綱の場所に位置する。冬季登山となると、なおさら避難小屋としての役割が高い。廃業すれば、登山者は四季を通して途轍もないリスクを背負う。

 『登山者に対して一人残らず危険から守る、安全を提供する』。それが文靖さんの語った使命感なのだ。

 山小屋の夜は早いが、短い時間をむさぼるように団欒が続いた。「さあ、もっと飲んで」と親子して酒を薦める。断っても、グラスにはいつも酒が満杯だ。

 「月の輪熊や黒熊と出くわすのは、稜線の鞍部だよ。なぜなら、熊は低いところを通るので、稜線の鞍部を横切るからなんだ」と愉しい会話のなかにも、山の要注意などが聞けた。

 登山はガツガツ登ったり、ガイドブック・タイムと競ったりするものではない。情緒豊かな山小屋で、家族同様の団欒を楽しむ。余裕ある山登りを心がければ、人間性が取り戻せる。

 野口五郎小屋の魅力がみえてきた。上條一家は心から登山者が好きなのだ。人間が好きなのだ。営利は薄くても、登山者を守る、強い使命感がある。留守宅を預かる妻・愛子さんにしろ、山岳をまったく知らなくても、母子でヘリポートに荷を届けたりして、登山者を陰で支えているのだ。それが上條家のたまらない人間的な魅力。だから、野口五郎小屋のファンが多いのだ。【了】

■関連情報
野口五郎小屋
電話 090−3149−1197(山小屋直通:衛星電話)

記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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北アルプスで見つけたぞ、魅力の山小屋はここだ!(下)
上條文靖さんの留守宅を預かる家族。左から、上條愛子さん(妻)
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朝の陽が山並みに幾重にも光と影を作る。野口五郎小屋の玄関先で
北アルプスで見つけたぞ、魅力の山小屋はここだ!(下)
砂礫の山肌が、シルエットのスクリーンになってくれる。(撮影:
北アルプスで見つけたぞ、魅力の山小屋はここだ!(下)
野口五郎岳山頂に着くと、別れてきた山小屋がもはや遠く小さく見
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