外国資本の流入により、繁栄を極めるプレミアリーグ。シーズンオフの移籍マーケットでは、各クラブが活発な動きを見せている。その流れは、マンチェスター・ユナイテッドやリバプールといったトップクラブに留まらず、ウェストハムやポーツマスといった中堅クラブも外国人オーナーがもたらす潤沢な資金で、積極的な補強を続けている。

 今や世界のトッププレーヤーがこぞって集まる舞台に成長を遂げたプレミアリーグだが、この“バブル”状態に警笛を鳴らす会長がいる。2007-08シーズンの昇格組であるサンダーランドのナイアル・クイン会長だ。元アイルランド代表選手で、サンダーランドでも活躍したクイン会長は、外国資本を手にした中堅クラブの散財が、移籍マーケットのバランスを崩していると厳しい口調で語った。

「新たなオーナーの下、補強に大金を注ぎ込むクラブが6つか7つほどあるようだ。しかし、彼らが獲得する選手は、トップクラブが欲しがるようなレベルではないだろう? もし私が大金を与えられたなら、リバプールやマンUが欲しがるような選手の獲得に動くがね。しかし現実は、幾つかの中堅クラブが1人の選手にターゲットを絞って、お互いに移籍金を釣り上げあっているんだ。ウェストハムやポーツマスを見るといい。代理人にとってはお祭り騒ぎに違いないね。何より私がゾッとするのは、こういったクラブのオーナーが、獲得選手のリストにまで口を挟むことだ。新入団選手と会長が肩を組んで写る写真をみると、『またか…』という気分になる。私は、ウチの監督であるロイ・キーンが決めた獲得選手に口を出すことはない。現場と経営陣の線引きは必要だ。それ以前に、私はロイに全幅の信頼をおいている」

 このクインの挑発に、ポーツマスのハリー・レドナップ監督が即座に反論。ポーツマス入りが決まったイングランド代表FWデイビッド・ニュージェントの争奪戦を持ち出し、クイン発言の矛盾点を鋭く指摘した。

「クインの発言を聞いたが、彼がとやかく言う問題ではない。デイビッド・ニュージェントを巡って、彼らは我々と同額のオファーを提示していたんだ。彼はそんなことも忘れてしまったのか? 他のクラブの補強について口を出す権利は誰にもない。各クラブは、信念を持って補強を行なっている。よそ者がクラブの経営に文句をつけるのは間違っている」

 例年、タイトルレースよりも熾烈を極めるプレミアリーグの降格争い。その厳しい戦いに巻き込まれないためにも、資金に余裕のある中堅クラブにとって、シーズンオフの移籍マーケットはすでに勝負の場となっている。彼らは、ライバルクラブへの戦力流入を阻むため、相場より割高の移籍金で新戦力の契約をまとめるなど、その争奪戦は年々熾烈の一途を辿っているのだ。クインの忠告は、金満クラブへの負け惜しみか、それともフットボール界の行方を憂う声か。その真意は、シーズン終盤の順位が物語るはずだ。