大地震で山は脆いぞ。落石・倒木で死んだら、だれの責任?(中)
2007年07月24日13時57分 / 提供:PJ
(上)からのつづき。 山小屋とは単なる営利の旅館業ではない。経営基盤の弱いが、山登りを愛する多くの国民にとっては必要不可欠のものだ。テントを持たない中高年の登山者には、「山小屋があるからこそ、安全に山を登れる」。アルプスの長い縦走路も、随所に中継役の山小屋があるから登山ができるのだ。
このたび林野庁から示された『国有林野使用許可書』の改定は、山小屋など零細な事業者にとっては経営を圧迫するものだ。山小屋の将来性を奪い、跡継ぎすらも嫌になる、そうした改定だ、と複数の山小屋経営者たちは異口同音に語る。
それでは失政ではないか。山小屋経営者の悲鳴を下に、PJは林野庁管理室(東京・霞ヶ関)を訪ねた。そして、「国有林野使用許可書」の改定の真意をただした。「山小屋への縛りつけとか、強化とかではありません。国家賠償法、民法717条の瑕疵(かし)責任にのっとったものを明文化したものです」と担当官は開口一番に応えた。
瑕疵とは、施設の管理にミスがあった場合に負う責任のことだ。「県や市の自治体、大企業、たとえ山小屋といえども、瑕疵があれば、法的に責任が問われます。原則にのっとり、事業者には第16条(安全確保義務)で、明示したまでです」と話す。
登山道などの整備は歴史的にみても、道標をつけたり、整備したり、各山小屋が他の諸官庁と連携して自発的、自主的にやってきたものだ。山小屋と山小屋が話し合って、たがいの領域を決める。双方の中間点が一般的だ。とはいっても、北アルプスなどは距離が途轍もなく長い。
山小屋の人たちはこまめに自分たちの領域の安全対策を施す。そのほかにも、高山植物の保護、夏山診療所の開設なども行う。どこまでも山小屋の自発的なものだ。ある種のボランティアだ。
今回の『国有林野使用許可書』の改定では、登山道の修理、道標の設置、標識の設置、立入り規制、危険木の処置などが求められている。「これを義務化されたら、費用負担は膨大で、とても山小屋経営はやっていけない」という声につながっていた。
経営基盤の弱い山小屋経営者に、長い距離の登山道の整備を義務化させるのは大きな負担になる。本来、国有林は国家、国民のものだから、行政が維持管理をすべきものではないか、とPJは林野庁管理室の担当官に聞いてみた。「アルプスなど山岳の2泊、3泊もする険しい道においては、国費まで使って整備したり、修復したりしません。国民生活にとって重要な生活道路ではない、という認識です」。となると、登山道の責任が山小屋に覆い被されるのではないか、と突っ込んでみた。
「登山道については、実態はだれが占有しているのか、それが重要です」。県や市の自治体に貸し付けている道、森林レクレーション施設として国自ら整備している道、自然発生的にできた、どこにも属さない道。この3通りがあるという。「山小屋自体が登山道を借りていれば、いっさいの安全管理をするべきです。施設の管理にミスがあれば、瑕疵責任を問われるでしょう。しかし、林野庁がアルプスの山小屋に、登山道を貸し付けしている例はないはずです」と説明する。
そうなると、アルプスの山道はどこにも属さない道だ。登山事故が発生すれば、誰がどの範囲内で、責任を取ることになるのか。【つづく】
■関連情報
林野庁は国有林野における、3区分の見解として、
「貸付」=借受者が施設の設置管理=借受者の責任
「国自ら整備」=国が施設の設置管理=国の責任
「自然発生」=グレーゾーン=実態管理者の責任など、個々に判断されるべきもの
記者HP:穂高健一ワールド
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このたび林野庁から示された『国有林野使用許可書』の改定は、山小屋など零細な事業者にとっては経営を圧迫するものだ。山小屋の将来性を奪い、跡継ぎすらも嫌になる、そうした改定だ、と複数の山小屋経営者たちは異口同音に語る。
それでは失政ではないか。山小屋経営者の悲鳴を下に、PJは林野庁管理室(東京・霞ヶ関)を訪ねた。そして、「国有林野使用許可書」の改定の真意をただした。「山小屋への縛りつけとか、強化とかではありません。国家賠償法、民法717条の瑕疵(かし)責任にのっとったものを明文化したものです」と担当官は開口一番に応えた。
瑕疵とは、施設の管理にミスがあった場合に負う責任のことだ。「県や市の自治体、大企業、たとえ山小屋といえども、瑕疵があれば、法的に責任が問われます。原則にのっとり、事業者には第16条(安全確保義務)で、明示したまでです」と話す。
登山道などの整備は歴史的にみても、道標をつけたり、整備したり、各山小屋が他の諸官庁と連携して自発的、自主的にやってきたものだ。山小屋と山小屋が話し合って、たがいの領域を決める。双方の中間点が一般的だ。とはいっても、北アルプスなどは距離が途轍もなく長い。
山小屋の人たちはこまめに自分たちの領域の安全対策を施す。そのほかにも、高山植物の保護、夏山診療所の開設なども行う。どこまでも山小屋の自発的なものだ。ある種のボランティアだ。
今回の『国有林野使用許可書』の改定では、登山道の修理、道標の設置、標識の設置、立入り規制、危険木の処置などが求められている。「これを義務化されたら、費用負担は膨大で、とても山小屋経営はやっていけない」という声につながっていた。
経営基盤の弱い山小屋経営者に、長い距離の登山道の整備を義務化させるのは大きな負担になる。本来、国有林は国家、国民のものだから、行政が維持管理をすべきものではないか、とPJは林野庁管理室の担当官に聞いてみた。「アルプスなど山岳の2泊、3泊もする険しい道においては、国費まで使って整備したり、修復したりしません。国民生活にとって重要な生活道路ではない、という認識です」。となると、登山道の責任が山小屋に覆い被されるのではないか、と突っ込んでみた。
「登山道については、実態はだれが占有しているのか、それが重要です」。県や市の自治体に貸し付けている道、森林レクレーション施設として国自ら整備している道、自然発生的にできた、どこにも属さない道。この3通りがあるという。「山小屋自体が登山道を借りていれば、いっさいの安全管理をするべきです。施設の管理にミスがあれば、瑕疵責任を問われるでしょう。しかし、林野庁がアルプスの山小屋に、登山道を貸し付けしている例はないはずです」と説明する。
そうなると、アルプスの山道はどこにも属さない道だ。登山事故が発生すれば、誰がどの範囲内で、責任を取ることになるのか。【つづく】
■関連情報
林野庁は国有林野における、3区分の見解として、
「貸付」=借受者が施設の設置管理=借受者の責任
「国自ら整備」=国が施設の設置管理=国の責任
「自然発生」=グレーゾーン=実態管理者の責任など、個々に判断されるべきもの
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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