大地震で山は脆いぞ。落石・倒木で死んだら、だれの責任?(上)
2007年07月22日06時27分 / 提供:PJ
夏山シーズンに突入のさなか、新潟・中越沖地震が発生した。震度6強で、新潟県や長野県に甚大な被害が出た。北アルプスの山岳関係者によると、ここ10年は山が脆(もろ)くなっているという。槍穂の縦走路、表銀座、裏銀座、剣・立山など常に危険と隣りあわせのようだ。これら地域の登山者は、中越沖地震の影響などをも視野に入れた、細心の注意が必要だ。
高所登山の登山道で、山が崩れたり、立ち木が倒れたり、土石流に飲み込まれたりして、登山者が死傷したならば、だれが責任を負うのか。PJはこの問題を追及してみた。
登山者には関心のある判決がある
2003(平成15)年8月4日。奥入瀬渓谷の遊歩道で、当時38歳の女性が石に腰掛けて昼食を取っていた。地上約10メートルの高さから、ブナの枯枝(長さ約7メートル、直径約20センチ)が落下し、女性を直撃した。両下肢マヒの重傷を負った。女性は国と青森県に損害賠償請求の訴訟を提起した。
一審では「観光客等が常に落木の危険にさらされていたにもかかわらず、掲示などによる警告の処置を講じなかった」と、県と国の瑕疵(かし)責任を認めたものだ。二審でも1億9000万円の支払いを命じた。現在、県と国は最高裁に上告中である。
国有林を管轄するのが農水省・林野庁だ。同庁はこのたび国有林を使用する事業者に『国有林野使用許可書』の改定を通達した。そこには奥入瀬渓谷の遊歩道で二審まで国が負けている背景があるようだ。
林野庁が事業者に貸し付けている土地は約5万件ある(林野庁・国有林野管理室)。市町村など公共団体、森林レジャー関連企業などから、国立公園内にある、弱小の山小屋にまで及ぶ。同改定については、今年の6月ごろから各地の森林管理署で説明会が行われている。
PJは『国有林野使用許可書』を入手した。そのなかで、特に注視するのは第16条の安全確保義務である。この条項には、『事業者(山小屋)は、第三者(登山者)の安全確保のため、使用許可物件またはその周の国有林において、注意標識の設置、立ち入り規制、危険木の処置など、必要な処置を講じなければならない』という内容が記載されている。
山小屋関係者たちは「山小屋の負担が大きすぎる」と問題視する。北アルプスの現地で、複数の山小屋経営者から、直接話を聞いてみた。
「安全確保義務」という規定が、登山道全域に及ぶのではないか。山小屋経営は基盤が弱い。このままでは山小屋経営の継続が危ぶまれる、というつよい畏怖(いふ)があった。【つづく】
■関連情報
『国有林野使用許可書』(安全確保義務)
第16条 事業者は、第2条に定める指定用途が消去物件またはこれに設置する施設を第三者の利用に供することを目的とする場合には、その利用者の安全確保のため、使用許可物件またはその周辺の国有林野において、注意標識の設置、立入り規制及び危険木の処理など、必要な処置を講じなければならない。
2 事業者は、前項に定める処置を講じるときは森林管理署長の承認を得なければならない。
3 事業者は、第1項に定める処置に要する費用をすべて負担しなければならない。
4 事業者は、使用許可物件もしくはその周辺の国有林野または当該国有林野に所在する立木その他の地上物件に起因して、使用許可物件などを利用する第三者または使用許可物件に損害を与えたときには、その賠償のすべての責を負わなければならない。
5 事業者は、賠償責任保険への加入など、前項に定める賠償の責の履行に備えるものとする。
記者HP:穂高健一ワールド
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高所登山の登山道で、山が崩れたり、立ち木が倒れたり、土石流に飲み込まれたりして、登山者が死傷したならば、だれが責任を負うのか。PJはこの問題を追及してみた。
登山者には関心のある判決がある
2003(平成15)年8月4日。奥入瀬渓谷の遊歩道で、当時38歳の女性が石に腰掛けて昼食を取っていた。地上約10メートルの高さから、ブナの枯枝(長さ約7メートル、直径約20センチ)が落下し、女性を直撃した。両下肢マヒの重傷を負った。女性は国と青森県に損害賠償請求の訴訟を提起した。
一審では「観光客等が常に落木の危険にさらされていたにもかかわらず、掲示などによる警告の処置を講じなかった」と、県と国の瑕疵(かし)責任を認めたものだ。二審でも1億9000万円の支払いを命じた。現在、県と国は最高裁に上告中である。
国有林を管轄するのが農水省・林野庁だ。同庁はこのたび国有林を使用する事業者に『国有林野使用許可書』の改定を通達した。そこには奥入瀬渓谷の遊歩道で二審まで国が負けている背景があるようだ。
林野庁が事業者に貸し付けている土地は約5万件ある(林野庁・国有林野管理室)。市町村など公共団体、森林レジャー関連企業などから、国立公園内にある、弱小の山小屋にまで及ぶ。同改定については、今年の6月ごろから各地の森林管理署で説明会が行われている。
PJは『国有林野使用許可書』を入手した。そのなかで、特に注視するのは第16条の安全確保義務である。この条項には、『事業者(山小屋)は、第三者(登山者)の安全確保のため、使用許可物件またはその周の国有林において、注意標識の設置、立ち入り規制、危険木の処置など、必要な処置を講じなければならない』という内容が記載されている。
山小屋関係者たちは「山小屋の負担が大きすぎる」と問題視する。北アルプスの現地で、複数の山小屋経営者から、直接話を聞いてみた。
「安全確保義務」という規定が、登山道全域に及ぶのではないか。山小屋経営は基盤が弱い。このままでは山小屋経営の継続が危ぶまれる、というつよい畏怖(いふ)があった。【つづく】
■関連情報
『国有林野使用許可書』(安全確保義務)
第16条 事業者は、第2条に定める指定用途が消去物件またはこれに設置する施設を第三者の利用に供することを目的とする場合には、その利用者の安全確保のため、使用許可物件またはその周辺の国有林野において、注意標識の設置、立入り規制及び危険木の処理など、必要な処置を講じなければならない。
2 事業者は、前項に定める処置を講じるときは森林管理署長の承認を得なければならない。
3 事業者は、第1項に定める処置に要する費用をすべて負担しなければならない。
4 事業者は、使用許可物件もしくはその周辺の国有林野または当該国有林野に所在する立木その他の地上物件に起因して、使用許可物件などを利用する第三者または使用許可物件に損害を与えたときには、その賠償のすべての責を負わなければならない。
5 事業者は、賠償責任保険への加入など、前項に定める賠償の責の履行に備えるものとする。
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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