シェバのミラン復帰は果たして・・・<br>【photo by B.O.S.】

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「息子の英語教育のためにロンドンに渡る」と、FWシェフチェンコがミランからチェルシーへ移籍してから1年がたった。移籍会見で語ったその理由に、イタリア中は呆気に取られたものだった。だがシェフチェンコは昨季新天地で不振に遭い、皮肉にも自身が置き去りにしたミランは欧州王者に返り咲いた。「彼は息子のようなもの」と言うミラン会長ベルルスコーニは、FW補強策において昨今シェフチェンコ帰還を歓迎するコメントを連発し、これが微妙な緊張を強いている。

 シェフチェンコのような世界最高レベルのFWが、数々の栄光をともに得てきたミランのようなビッグクラブを後にした1年前の移籍劇は、今も後味の悪さを残している。同会長の実子で、イタリアを代表するメディア・グループ「メディアセット」の副社長ピエルシルビオ・ベルルスコーニなどは「彼の復帰は歓迎しない。一度ミランを後にした者が帰ってくるなど許されない」と厳しい意見を表明した。チーム内の事情で離脱したならともかく、個人的な理由で出ていった挙句、古巣がヨーロッパ王者になった途端に帰るとは虫が良すぎる、というのが本音だろう。

 チャンピオンズ・リーグを制し、バロンドールも獲った。シェフチェンコにとってミランは親にも等しい大事な存在であるはずだった。ミラン側にしても発掘し手塩にかけて世界的スターに育て上げた自負があった。移籍に関して、選手の商品的価値がとかく優先されがちな昨今のサッカー界だが、このシェフチェンコ問題は、珍しく人間的感情がわだかまりとなっているケースとなっている。

 現代サッカー界における移籍事情について、感情入り混じる「ロマン」や「人間主義」は過去の産物なのか? やはりベルルスコーニの寵愛を受け、タイトルを総なめにしたかつての天才MF、ボバンがミランOBとしてシェフチェンコ問題に一石を投じる。【後編に続く

弓削高志