【セキュリティ魂】横行する不法行為!法規制なく荒れるネトゲーの実態
2007年07月02日10時00分 / 提供:ネットセキュリティ
RMTという言葉を聞いたことがあるだろうか。RMTはリアルマネートレード(Real Money Trade)の略で、その言葉から伝わるように現金で何かを取引するものである。
その何かとは、オンラインゲーム内の通貨やアイテムなのだ。実体がないゲーム世界のバーチャルな通貨を、現実の通貨で買うという、一般的には考えられない現象が起こっている。
いま、バーチャルな世界であるはずのゲーム内の経済が、現実世界の市場経済と重なり合っている。そこでは何が起こり、なぜそういうことが起こっているのだろうか。全3回の連載でお送りする。
前回はゲーム世界のバーチャルな通貨を、現実の通貨で買うRMT(リアルマネートレード)についての概要と、なぜRMTが行われるような状況になっているのかということについて紹介した。
今回は、RMTの実態とその問題点について紹介していこう。
・生産者:ひたすらゲームをプレイしてゲーム内通貨を稼ぐ
・仲介業者:生産者から買い取り、購入者へ販売する
・購入者:仲介業者から現金でゲーム内通貨を購入する
MMORPGでは、プレイしている時間が長ければ長いほど、稼ぐことができるゲーム内の通貨も多くなる可能性が高い。ほとんどのゲームでは、ゲーム内で流通している通貨の総量に上限があるわけではなく、敵を倒すほど通貨を手に入れることができる。
RMTの生産者はひたすらゲームをプレイし、敵を倒したりしてゲーム内の通貨や貴重なアイテムを稼いでいくことを目的としている。ひたすら稼いで、それを仲介業者に卸して収入を得るのだ。
この生産者には国内の時間を持て余した人々もいるが、外国人であることが多い。しかも、組織的に行われているものも多く見られる。外貨を稼ぐ手段として、日本で運営されているMMORPGにバーチャルな出稼ぎ労働に出てきているのである。中には人件費が安い海外の労働力を活かして、24時間ゲームを続けさせてゲーム内通貨などを稼ぎ続ける場合もある。
生産者はゲーム内の行為を労働として行っているので、ゲーム自体を楽しむことや、物語の進行やゲーム内のイベントには興味がないことが多い。24時間活動している生産者によって、敵が現れる狩り場と呼ばれるポイントを独占して、一般ユーザーを寄せ付けないといったことや、ゲーム内で一般ユーザーに攻撃を加えたり、倒したりすることによって、所持しているアイテムを強引に奪っていくといったPKと呼ばれる行為も目にする。
一般ユーザーの購入者に対する否定的な意見としては、RMTの行為自体がアンフェアだとか無粋であるといった意見もある。しかし、最大の問題はRMTのための荒稼ぎする無法者の生産者が増えてしまい、一般ユーザーのプレイが阻害される恐れがあるので嫌悪されるのだ。RMTの購入者がいる限りは生産者や仲介業者が存在し続けるということだ。
RMTを利用することについて一般ユーザーの意見は賛否両論であるが、国内では否定的な意見の方が多いようだ。否定的な意見を生む原因として、特にゲーム内での生産者の行動が一般ユーザーから問題視されていることが挙げられている。
ちなみにオンラインゲームが日本以上に流行っている韓国でのあるアンケート結果では、RMTの利用はユーザーの判断に任せるべきだという賛成意見が8割を占めていた。同様に欧米でもRMTはそれほど嫌われているわけではない。国内のRMT生産者が諸外国に比べて特に悪質だと言うわけではないのに、RMT行為は嫌われている。日本人独特の美徳に反すると言ったところだろうか。
まったくの野放し状態かと言えばそういうわけでもなく、2005年7月にはRMTに起因した不正アクセス事件による逮捕者が出ている。
事件は「リネージュ2」のユーザーが自分のアカウントが使えなくなったことで香川県警に相談をし、調査を進めたところアカウントの盗難が発覚したことで中国人留学生がアカウントの不正利用の容疑者として浮かんだ。
さらに「リネージュ2」が利用規約の中で禁止している海外からのサーバーへのアクセスを可能にするためにプロキシサーバーを国内に設置して、海外のユーザーを不正に中継してアクセスさせていたこともわかった。この中継で大量のアクセスが生じてサーバーに負荷が掛かり、そのため「リネージュ2」のサービスが一時的に中断したことで運営会社のエヌ・シー・ジャパンは損害を被った。
事件は、前者のアカウント盗難に基づくいわゆる不正アクセス禁止法ではなく、後者のプロキシサーバーの件により刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)で逮捕され、懲役2年、執行猶予3年の判決がでている。
この人物はRMTの仲介業者として活動していたようで、プロキシサーバーの運営以外に、生産者からの仕入れや、購入者への販売なども行っており、半年間で数千万円の利益を得ていたようだ。
この事件以外にも生産者がRMTのために海外から不正アクセスしたり、不正ツールによる荒稼ぎするといったことも問題になっている。また、RMTの購入者が現金を払い込んだのに、ゲーム内通貨の受け渡しが行われなかったというような、仲介業者と購入者の間で詐欺行為なども起こっている。
先の事件で注目するポイントとしては、RMTという行為自体は運営会社が利用規約で禁止していたとしても、違法だとして立件されていないところにある。現状では、運営会社が利用規約でRMT行為を禁止していようが法律で取り締まることは困難なのだ。
このように法律でRMTを取り締まることは困難な状況ではあるが、一般ユーザーからの苦情や、ゲーム性を損なうことでユーザーが乖離してしまうと言う問題もあり、運営会社側もRMT行為を放置しておく訳にはいかない。
しかし、RMT行為が可能なゲームデザインである以上は、RMT行為を完全に根絶やしにするための有効な手段がないのだ。IPアドレスを元に海外からの接続を阻止したり、RMT仲介業者を発見次第警告を送ったり、ユーザーにRMTを利用しないように啓蒙するといった対策程度しか実施できていないのが現状のようだ。
次回はRMTがどのような手段で取引されているかを紹介する。
■これもオススメ!ネットセキュリティ・ニュース
・オンラインゲーム通貨が現金で売買される?"RMT"の実態を探る 第1回
・危険な"Winny"を知る!"国際セキュリティ会議"潜入レポート
・Google Desktop ハッキング簡単レシピ
・間に合う?間にあわせる?日本版SOX法対策の現状
・牛丼問題とソフト開発の責任とは?公開されなかった"脆弱性"
執筆:上野 宣
その何かとは、オンラインゲーム内の通貨やアイテムなのだ。実体がないゲーム世界のバーチャルな通貨を、現実の通貨で買うという、一般的には考えられない現象が起こっている。
いま、バーチャルな世界であるはずのゲーム内の経済が、現実世界の市場経済と重なり合っている。そこでは何が起こり、なぜそういうことが起こっているのだろうか。全3回の連載でお送りする。
前回はゲーム世界のバーチャルな通貨を、現実の通貨で買うRMT(リアルマネートレード)についての概要と、なぜRMTが行われるような状況になっているのかということについて紹介した。
今回は、RMTの実態とその問題点について紹介していこう。
■RMT生産者はバーチャルな出稼ぎ労働者
RMTによってゲーム内通貨と現金が流通する際の登場人物の立場としては、生産者・仲介業者・購入者の3通りだ。この中で生産者と購入者は、ゲーム内では通常の一般ユーザー(RMTに関係しない通常のゲームユーザー)と何ら変わることがない存在である。・生産者:ひたすらゲームをプレイしてゲーム内通貨を稼ぐ
・仲介業者:生産者から買い取り、購入者へ販売する
・購入者:仲介業者から現金でゲーム内通貨を購入する
MMORPGでは、プレイしている時間が長ければ長いほど、稼ぐことができるゲーム内の通貨も多くなる可能性が高い。ほとんどのゲームでは、ゲーム内で流通している通貨の総量に上限があるわけではなく、敵を倒すほど通貨を手に入れることができる。
RMTの生産者はひたすらゲームをプレイし、敵を倒したりしてゲーム内の通貨や貴重なアイテムを稼いでいくことを目的としている。ひたすら稼いで、それを仲介業者に卸して収入を得るのだ。
この生産者には国内の時間を持て余した人々もいるが、外国人であることが多い。しかも、組織的に行われているものも多く見られる。外貨を稼ぐ手段として、日本で運営されているMMORPGにバーチャルな出稼ぎ労働に出てきているのである。中には人件費が安い海外の労働力を活かして、24時間ゲームを続けさせてゲーム内通貨などを稼ぎ続ける場合もある。
生産者はゲーム内の行為を労働として行っているので、ゲーム自体を楽しむことや、物語の進行やゲーム内のイベントには興味がないことが多い。24時間活動している生産者によって、敵が現れる狩り場と呼ばれるポイントを独占して、一般ユーザーを寄せ付けないといったことや、ゲーム内で一般ユーザーに攻撃を加えたり、倒したりすることによって、所持しているアイテムを強引に奪っていくといったPKと呼ばれる行為も目にする。
一般ユーザーの購入者に対する否定的な意見としては、RMTの行為自体がアンフェアだとか無粋であるといった意見もある。しかし、最大の問題はRMTのための荒稼ぎする無法者の生産者が増えてしまい、一般ユーザーのプレイが阻害される恐れがあるので嫌悪されるのだ。RMTの購入者がいる限りは生産者や仲介業者が存在し続けるということだ。
RMTを利用することについて一般ユーザーの意見は賛否両論であるが、国内では否定的な意見の方が多いようだ。否定的な意見を生む原因として、特にゲーム内での生産者の行動が一般ユーザーから問題視されていることが挙げられている。
ちなみにオンラインゲームが日本以上に流行っている韓国でのあるアンケート結果では、RMTの利用はユーザーの判断に任せるべきだという賛成意見が8割を占めていた。同様に欧米でもRMTはそれほど嫌われているわけではない。国内のRMT生産者が諸外国に比べて特に悪質だと言うわけではないのに、RMT行為は嫌われている。日本人独特の美徳に反すると言ったところだろうか。
■事件で逮捕者がでるも、RMTは違法ではない
一般ユーザーに嫌悪されるRMTであるが、規約でRMTが禁止されているMMORPGでも、ゲーム運営会社による仲介業者の取り締まりはそれほど厳しくはないようだ。取り締まるためのコストの問題ということかもしれないが、「(MMORPG名)+RMT」というキーワードで検索すれば、ほとんど全てのMMORPGでRMT仲介業者がいることがわかるはずだ。まったくの野放し状態かと言えばそういうわけでもなく、2005年7月にはRMTに起因した不正アクセス事件による逮捕者が出ている。
事件は「リネージュ2」のユーザーが自分のアカウントが使えなくなったことで香川県警に相談をし、調査を進めたところアカウントの盗難が発覚したことで中国人留学生がアカウントの不正利用の容疑者として浮かんだ。
さらに「リネージュ2」が利用規約の中で禁止している海外からのサーバーへのアクセスを可能にするためにプロキシサーバーを国内に設置して、海外のユーザーを不正に中継してアクセスさせていたこともわかった。この中継で大量のアクセスが生じてサーバーに負荷が掛かり、そのため「リネージュ2」のサービスが一時的に中断したことで運営会社のエヌ・シー・ジャパンは損害を被った。
事件は、前者のアカウント盗難に基づくいわゆる不正アクセス禁止法ではなく、後者のプロキシサーバーの件により刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)で逮捕され、懲役2年、執行猶予3年の判決がでている。
この人物はRMTの仲介業者として活動していたようで、プロキシサーバーの運営以外に、生産者からの仕入れや、購入者への販売なども行っており、半年間で数千万円の利益を得ていたようだ。
この事件以外にも生産者がRMTのために海外から不正アクセスしたり、不正ツールによる荒稼ぎするといったことも問題になっている。また、RMTの購入者が現金を払い込んだのに、ゲーム内通貨の受け渡しが行われなかったというような、仲介業者と購入者の間で詐欺行為なども起こっている。
先の事件で注目するポイントとしては、RMTという行為自体は運営会社が利用規約で禁止していたとしても、違法だとして立件されていないところにある。現状では、運営会社が利用規約でRMT行為を禁止していようが法律で取り締まることは困難なのだ。
このように法律でRMTを取り締まることは困難な状況ではあるが、一般ユーザーからの苦情や、ゲーム性を損なうことでユーザーが乖離してしまうと言う問題もあり、運営会社側もRMT行為を放置しておく訳にはいかない。
しかし、RMT行為が可能なゲームデザインである以上は、RMT行為を完全に根絶やしにするための有効な手段がないのだ。IPアドレスを元に海外からの接続を阻止したり、RMT仲介業者を発見次第警告を送ったり、ユーザーにRMTを利用しないように啓蒙するといった対策程度しか実施できていないのが現状のようだ。
次回はRMTがどのような手段で取引されているかを紹介する。
■これもオススメ!ネットセキュリティ・ニュース
・オンラインゲーム通貨が現金で売買される?"RMT"の実態を探る 第1回
・危険な"Winny"を知る!"国際セキュリティ会議"潜入レポート
・Google Desktop ハッキング簡単レシピ
・間に合う?間にあわせる?日本版SOX法対策の現状
・牛丼問題とソフト開発の責任とは?公開されなかった"脆弱性"
執筆:上野 宣
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