今週のお役立ち情報
震災3カ月、能登で会った人たち(下)
2007年06月28日06時50分 / 提供:PJ
【PJ 2007年06月28日】−
(上)からのつづき。 安旅2日目は、自由行動の日。当初からオプショナルツアーに行く気はなかったから、事前にネットでレンタカーを頼んでおいた。和倉の宿に着いてすぐ、翌朝の出立を考えレンタカー店に電話をした。何度聞いても所在場所が理解できないのもそのはず、「あえの風」というホテルの内に営業所があるらしかった。
その日、豪華なホテルのフロントが、全国チエーンのレンタカー会社の代行の窓口だった。「あえの風」という奇妙な名のホテルが立派なのも当然のこと。「加賀屋」の新業態店であり、洗練されたホテルマンたちの応対に度肝を抜かれた。クルマの手配を行ったのはフロント係り、鴫島正人(しぎしま・まさと)さんという人だった。通常、レンタカー店ではクルマの諸説明も丹念ならば、キズや凹みのチェックも極めて慎重。だがここでは至極簡単で、さりげない手続きにわたしは瞠目したものだ。レンタカーはホテルの本業ではない。にもかかわらず、七尾湾に面した広い庭園で写真を撮るわたしに気づいた鴫島さんは飛ぶように現れ、「写真、お撮りいたしましょうか?」と聞く。「そう、それなのだ、その気遣いが必要なのだ!」そう口に出したい気分になった。
旅なれたわたしも、軽やかに応対する26歳の青年の動きは心地よかった。その日の夕方、豪雨の中「あえの風」に戻った私に、別のフロント係りは、「どちらまでお帰りですか、ホテルはどちらで?」と問う。雨が降っている、タクシーが来るまで時間がかかる。ウチのクルマで送るというのである。旅人とは些細な気遣いに感激し、無神経な応対に疲れが増すもの。カーナビつき12時間、4千3百円。経済車は終日走って1千5百円のガソリン代しかかからなかった。費用も効果も抜群の仕掛け、接客業の原点が和倉にあった。
クルマを借りたわたしは、能登の現状を取材するため、近くの和倉温泉観光協会に出向いた。アポなしは訪問はさすがに気が引けたが、芦本芳朗事務局長は快く応じてくださった。地震後3ヶ月、相変わらず「風評被害」を受け続け、交通事情も改善され、旅館の施設も復旧したが、「客の入りは、対前年比70%前後で低迷している」と眉を曇らせる。能登空港は、「小さいながらも欠航率は他の雪国空港より低い」そうだが、「このところのガソリン高が、足を引っ張っている」と続け、気ぜわしく次々に能登全体の観光案内をしてくださった。感謝も気持ちもこめ、「お見受けしたところお若いようですが」には、「いやわたし、56歳なんですよ」。「やはり温泉効果ですかねー?」には、耳元まで真っ赤になられた。純粋なお方なのである。
芦本さんからこんな話も耳にした。能登沖地震の折、停電で偶然にも輪島塗の漆が半乾きのまま波状の模様が出来たが、これを「新彩椀(しんさいわん)」と名付け、全国から注文が集まっているというのである。不幸を逆手に取った商売、なるほどしたたかなのだ。和倉温泉で2日の朝夕食の接客をしてくれた76歳のお手伝いさん。輪島朝市の溢れかえらんばかり元気一杯のおばさんたち。七尾城記念館の管理人さん。みな、「高齢化社会」を元気に明るく生き抜いていた。その活気は、わたしたちが子どものころ、マチで見かけた普通の「老人の姿」であった。一方、伝統工芸を支えるヤングギャル、輪島で「海鮮茶屋」という食堂を経営する橋本佳さん、みな負けずに若く明るかった。
3日の旅で感激するほどわたしは若くない。能登半島を注目の観光立地に仕立てるのには、まだまだ不足の事柄が多い。例えば能登金剛付近の海岸には雑多なゴミが流れ着いていた。透き通るような海辺には似つかわしくない光景なのである。別な記事で指摘をしたいが、能登空港はこれからも「アクセスの良さばかり」を売り物には出来ないだろう。東京から1日往復2便。インフラの整備だけで客が呼べる時代ではない。今も変らぬ輪島の朝市だったが、電柱を地下埋設し、こぎれいに改装された道路は輪島には似つかわしくない。多少薄汚れた町並みの中に、老婆たちが今朝も活気を呈する場所、それが「都会人のイメージする輪島」ではなかっただろうか。
だが、それでも能登半島には日本人の原点があるようにわたしには思えた。曰く、「女や子ども、老人をいたわれ」。「元気で何時までも」。「働くことは、ハタを楽にすること」。「逆境は順境のはじまり」。「長幼の序」…。何時のころからか、こんな言葉や日本人が忘れたDNTが息づいている場所。それがわたしの能登なのであり、この日も翌日も、能登一体は豪雨であったが、わたしは小さな旅を十二分に堪能したのであった。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資【 茨城県 】
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その日、豪華なホテルのフロントが、全国チエーンのレンタカー会社の代行の窓口だった。「あえの風」という奇妙な名のホテルが立派なのも当然のこと。「加賀屋」の新業態店であり、洗練されたホテルマンたちの応対に度肝を抜かれた。クルマの手配を行ったのはフロント係り、鴫島正人(しぎしま・まさと)さんという人だった。通常、レンタカー店ではクルマの諸説明も丹念ならば、キズや凹みのチェックも極めて慎重。だがここでは至極簡単で、さりげない手続きにわたしは瞠目したものだ。レンタカーはホテルの本業ではない。にもかかわらず、七尾湾に面した広い庭園で写真を撮るわたしに気づいた鴫島さんは飛ぶように現れ、「写真、お撮りいたしましょうか?」と聞く。「そう、それなのだ、その気遣いが必要なのだ!」そう口に出したい気分になった。
旅なれたわたしも、軽やかに応対する26歳の青年の動きは心地よかった。その日の夕方、豪雨の中「あえの風」に戻った私に、別のフロント係りは、「どちらまでお帰りですか、ホテルはどちらで?」と問う。雨が降っている、タクシーが来るまで時間がかかる。ウチのクルマで送るというのである。旅人とは些細な気遣いに感激し、無神経な応対に疲れが増すもの。カーナビつき12時間、4千3百円。経済車は終日走って1千5百円のガソリン代しかかからなかった。費用も効果も抜群の仕掛け、接客業の原点が和倉にあった。
クルマを借りたわたしは、能登の現状を取材するため、近くの和倉温泉観光協会に出向いた。アポなしは訪問はさすがに気が引けたが、芦本芳朗事務局長は快く応じてくださった。地震後3ヶ月、相変わらず「風評被害」を受け続け、交通事情も改善され、旅館の施設も復旧したが、「客の入りは、対前年比70%前後で低迷している」と眉を曇らせる。能登空港は、「小さいながらも欠航率は他の雪国空港より低い」そうだが、「このところのガソリン高が、足を引っ張っている」と続け、気ぜわしく次々に能登全体の観光案内をしてくださった。感謝も気持ちもこめ、「お見受けしたところお若いようですが」には、「いやわたし、56歳なんですよ」。「やはり温泉効果ですかねー?」には、耳元まで真っ赤になられた。純粋なお方なのである。
芦本さんからこんな話も耳にした。能登沖地震の折、停電で偶然にも輪島塗の漆が半乾きのまま波状の模様が出来たが、これを「新彩椀(しんさいわん)」と名付け、全国から注文が集まっているというのである。不幸を逆手に取った商売、なるほどしたたかなのだ。和倉温泉で2日の朝夕食の接客をしてくれた76歳のお手伝いさん。輪島朝市の溢れかえらんばかり元気一杯のおばさんたち。七尾城記念館の管理人さん。みな、「高齢化社会」を元気に明るく生き抜いていた。その活気は、わたしたちが子どものころ、マチで見かけた普通の「老人の姿」であった。一方、伝統工芸を支えるヤングギャル、輪島で「海鮮茶屋」という食堂を経営する橋本佳さん、みな負けずに若く明るかった。
3日の旅で感激するほどわたしは若くない。能登半島を注目の観光立地に仕立てるのには、まだまだ不足の事柄が多い。例えば能登金剛付近の海岸には雑多なゴミが流れ着いていた。透き通るような海辺には似つかわしくない光景なのである。別な記事で指摘をしたいが、能登空港はこれからも「アクセスの良さばかり」を売り物には出来ないだろう。東京から1日往復2便。インフラの整備だけで客が呼べる時代ではない。今も変らぬ輪島の朝市だったが、電柱を地下埋設し、こぎれいに改装された道路は輪島には似つかわしくない。多少薄汚れた町並みの中に、老婆たちが今朝も活気を呈する場所、それが「都会人のイメージする輪島」ではなかっただろうか。
だが、それでも能登半島には日本人の原点があるようにわたしには思えた。曰く、「女や子ども、老人をいたわれ」。「元気で何時までも」。「働くことは、ハタを楽にすること」。「逆境は順境のはじまり」。「長幼の序」…。何時のころからか、こんな言葉や日本人が忘れたDNTが息づいている場所。それがわたしの能登なのであり、この日も翌日も、能登一体は豪雨であったが、わたしは小さな旅を十二分に堪能したのであった。【了】
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