メタルクライシス〜枯渇する金属元素〜(5)経産省の「希少金属代替材料開発」
2007年06月06日02時55分 / 提供:PJ
(4)からのつづき。前回まで、文部科学省の元素戦略プロジェクトについて取り上げた。今回は、プロジェクトのもう一方のけん引役である、経済産業省の取り組みについて紹介する。製造産業局非鉄金属課の大江朋久さんにお話を伺った。
−経済産業省が立ち上げられた「希少金属代替材料開発プロジェクト」について、お聞かせいただきたいと思います。まずプロジェクトの予算規模を教えてください。
「このプロジェクトは、平成19〜23年度の5年間で実施します。平成19年度の予算は11億円、5年間では55億円の予算を予定しています」
−プロジェクトの現在の状況をお聞かせください。
「希少金属代替材料開発プロジェクトでは、3つの金属に絞って代替材料の開発研究課題を募集し、その中から採択課題を決定します。去る4月16日に公募を締め切りました。10件程度の研究提案の応募があり、現在、これらの中からプロジェクトの実施機関を選んでいるところです。応募者は様々ですが、いくつかの組織がグループを作って、共同提案の形で応募してきています。詳細はお話しできませんが、複数企業・大学・研究機関、という組み合わせが多いようです」
−政府は「科学技術立国」を大きな目標としています。このため政府レベルでの科学技術振興も活発ですが、今回のプロジェクトの立ち上げは、どのような位置づけなのでしょうか。
「このプロジェクトは、平成18年3月に閣議決定された「第3期科学技術基本計画」や平成18年7月に財政・経済一体改革会議が取りまとめた「経済成長戦略大綱」等に沿った、重点プロジェクトの一つです。希少元素の代替材料開発を通じて、我が国の科学技術の基盤をゆるぎないものとするプロジェクトだと考えています。」
−経済産業省のプロジェクトということで、大学などの研究者だけではなく、企業からの参加を呼び掛けておられますが、企業・産業界の反応はいかがですか。
「一般的に経済産業省のプロジェクトは、実用化に近い分野を対象としています。このため、経済産業省のプロジェクトに応募してくるグループは、企業が中心となっていることが多いという背景もありますが、このプロジェクトについても、企業・産業界から多くのご支持や問い合わせを頂いていますので、注目度は高いと感じております」
−このプロジェクトでは、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)という3つの元素をターゲットにして公募されています。この3元素を選定された経緯などをお聞かせください。
「このプロジェクトを開始する前に、平成17年度に「各種レアメタルに関するリスク評価及び重要元素に関する需給の現状と課題」という先導調査を独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が行いました。その調査結果をもとに、3つの鉱種を選定しました」
「先導調査の内容としては、第一ステップとして、公開されている情報から可採年数、埋蔵国、生産国、輸入相手国、価格上昇、価格変動、世界需要、国内需要、特定分野の需要、備蓄、リサイクル、生体影響の12項目について、各種の希少金属のリスクを点数化して評価しました。その結果、13の鉱種を選定しました。さらに第2ステップとして、専門家による議論を行い、3鉱種を選定しました。」
−最近の市場動向を見ますと、優れた製品が発売されると一気にシェアが上昇して、短期間のうちに特定の金属元素の需要が伸びることもあるようです。5年間のプロジェクト研究の期間の中で、これらの3元素以外にも、政府の対応が求められる場面も予測されますが、そのような場合にもこのプロジェクトの中で対応されるのでしょうか。
「新たに対象鉱種を加える必要性が生じれば、このプロジェクトを拡充するか、新しいプロジェクトを立ち上げるかのいずれかで対応していきたいと考えてます。」
−今回選定された3つの金属は、アメリカやヨーロッパでもほとんど産出しない金属です。つまり、これらの元素の供給が滞ると経済が停滞するという点では、先進各国共通の課題のようにも思われます。この点について、他の国との協調はお考えですか。それとも、代替材料分野でトップを目指すために、オールニッポンで進められる予定ですか。
「希少金属を初めとする資源の安定供給確保のため、他国と協調出来る部分については協調して行きたいと考えてます。」
−今回のような希少資源の問題は、狭い国土しか持たない日本が潜在的に持っているリスクと考えられます。このプロジェクトは、政府レベルでの初めての代替材料開発プロジェクトですが、このプロジェクトを端緒として、継続した支援をされる中長期計画はあるのでしょうか。
「平成18年6月に、資源エネルギー庁長官の私的研究会である資源戦略研究会が「非鉄金属資源の安定供給確保のための戦略」において、基本的な考え方の整理を行いました。その中で、資源セキュリティ確保のために、探鉱開発の推進・リサイクルの推進・代替材料の開発・レアメタルの備蓄、が大きな柱として示されました。このプロジェクトもその一環となっています」
−お忙しいところどうもありがとうございました。プロジェクトの成功を期待しています。【了】
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−経済産業省が立ち上げられた「希少金属代替材料開発プロジェクト」について、お聞かせいただきたいと思います。まずプロジェクトの予算規模を教えてください。
「このプロジェクトは、平成19〜23年度の5年間で実施します。平成19年度の予算は11億円、5年間では55億円の予算を予定しています」
−プロジェクトの現在の状況をお聞かせください。
「希少金属代替材料開発プロジェクトでは、3つの金属に絞って代替材料の開発研究課題を募集し、その中から採択課題を決定します。去る4月16日に公募を締め切りました。10件程度の研究提案の応募があり、現在、これらの中からプロジェクトの実施機関を選んでいるところです。応募者は様々ですが、いくつかの組織がグループを作って、共同提案の形で応募してきています。詳細はお話しできませんが、複数企業・大学・研究機関、という組み合わせが多いようです」
−政府は「科学技術立国」を大きな目標としています。このため政府レベルでの科学技術振興も活発ですが、今回のプロジェクトの立ち上げは、どのような位置づけなのでしょうか。
「このプロジェクトは、平成18年3月に閣議決定された「第3期科学技術基本計画」や平成18年7月に財政・経済一体改革会議が取りまとめた「経済成長戦略大綱」等に沿った、重点プロジェクトの一つです。希少元素の代替材料開発を通じて、我が国の科学技術の基盤をゆるぎないものとするプロジェクトだと考えています。」
−経済産業省のプロジェクトということで、大学などの研究者だけではなく、企業からの参加を呼び掛けておられますが、企業・産業界の反応はいかがですか。
「一般的に経済産業省のプロジェクトは、実用化に近い分野を対象としています。このため、経済産業省のプロジェクトに応募してくるグループは、企業が中心となっていることが多いという背景もありますが、このプロジェクトについても、企業・産業界から多くのご支持や問い合わせを頂いていますので、注目度は高いと感じております」
−このプロジェクトでは、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)という3つの元素をターゲットにして公募されています。この3元素を選定された経緯などをお聞かせください。
「このプロジェクトを開始する前に、平成17年度に「各種レアメタルに関するリスク評価及び重要元素に関する需給の現状と課題」という先導調査を独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が行いました。その調査結果をもとに、3つの鉱種を選定しました」
「先導調査の内容としては、第一ステップとして、公開されている情報から可採年数、埋蔵国、生産国、輸入相手国、価格上昇、価格変動、世界需要、国内需要、特定分野の需要、備蓄、リサイクル、生体影響の12項目について、各種の希少金属のリスクを点数化して評価しました。その結果、13の鉱種を選定しました。さらに第2ステップとして、専門家による議論を行い、3鉱種を選定しました。」
−最近の市場動向を見ますと、優れた製品が発売されると一気にシェアが上昇して、短期間のうちに特定の金属元素の需要が伸びることもあるようです。5年間のプロジェクト研究の期間の中で、これらの3元素以外にも、政府の対応が求められる場面も予測されますが、そのような場合にもこのプロジェクトの中で対応されるのでしょうか。
「新たに対象鉱種を加える必要性が生じれば、このプロジェクトを拡充するか、新しいプロジェクトを立ち上げるかのいずれかで対応していきたいと考えてます。」
−今回選定された3つの金属は、アメリカやヨーロッパでもほとんど産出しない金属です。つまり、これらの元素の供給が滞ると経済が停滞するという点では、先進各国共通の課題のようにも思われます。この点について、他の国との協調はお考えですか。それとも、代替材料分野でトップを目指すために、オールニッポンで進められる予定ですか。
「希少金属を初めとする資源の安定供給確保のため、他国と協調出来る部分については協調して行きたいと考えてます。」
−今回のような希少資源の問題は、狭い国土しか持たない日本が潜在的に持っているリスクと考えられます。このプロジェクトは、政府レベルでの初めての代替材料開発プロジェクトですが、このプロジェクトを端緒として、継続した支援をされる中長期計画はあるのでしょうか。
「平成18年6月に、資源エネルギー庁長官の私的研究会である資源戦略研究会が「非鉄金属資源の安定供給確保のための戦略」において、基本的な考え方の整理を行いました。その中で、資源セキュリティ確保のために、探鉱開発の推進・リサイクルの推進・代替材料の開発・レアメタルの備蓄、が大きな柱として示されました。このプロジェクトもその一環となっています」
−お忙しいところどうもありがとうございました。プロジェクトの成功を期待しています。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一
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