■『ハチワンダイバー』作:柴田ヨクサル/発行:集英社

パッと見は、巨乳のメイドさんが活躍する将棋漫画です(とてもキャッチーで良いですね)。さてメイドさんというと「小柄で細身な妹タイプ」というのが定番ですが、この作品のメイドさんは「大柄でグラマーなお姉さんタイプ」という完全に真逆なイメージになってます。作者の柴田先生は、こういうタイプがお好みなんでしょうか(余計なお世話)。

読むとすぐに気付くのですが、この作品の主人公はメイドさんではありません(1巻の表紙はフェイク)。主人公は、かつてプロ棋士を目指しながらも夢破れた青年・菅田(すがた)。彼は将棋以外に能がなく、不本意ながらも賭け将棋で生計を立てる"真剣師"生活を送っています。働かずにパチスロで稼ぐニートの親戚みたいな感じです。賭け将棋(真剣)では連戦連勝で勝率はなんと10割! そのあまりの勝ちっぷりに、いつしか"真剣"を指してくれる相手は周りにいなくなってしまいます。

そんな時、どんな相手でも"倍層"で指すという通称「アキバの受け師」の噂を聞きつけ、菅田は秋葉原へ出向いていきます。ちなみに"倍層"とは、相手の賭け金の倍額を負けた時に払うルールのこと。仮に2万円賭けてきた相手に負けたら4万円払うことになります。これは腕に相当の自信がなければできません。

菅田は、このアキバの受け師(眼鏡っ娘)にあっさり負けてしまいます。将棋しか能がない男のプライドは傷つけられ、自宅に帰って「ありえない」「何かの間違いだ…」「この負けで人生ごとダメになる」と悶絶しまくります。そしてこのままではイカン! ということで一念発起。もう一度将棋の勉強をしようと決心するのです。

勉強の前にまずは部屋を片付けようと、掃除サービスの業者に電話をかけるのですが、そこでやってきたのが前述の巨乳メイド!! 頼んだ先がメイドさんのお掃除サービスだとは気付かなかった菅田は激しく動揺します。さらに目の前のメイドさんがあの「アキバの受け師」だと気付いて二度ビックリ! ここまでが1話の中盤までのストーリーです。かなり濃ゆい展開です。

いかにもニートな主人公が2巻でようやく表紙に登場。幸福が100m10秒フラットで逃げていきそうな薄幸オーラがビンビン。


残念ながら最新巻の2巻では受け師さんのメイド姿は見られないのですが、物語のテンションは、菅田と戦う真剣師が、自分が勝ったら受け師さんの「オッパイを揉む」と突然言い出すという意外な形で最高潮にハジけていきます。対する菅田も釣られて「ボクもオッパイで」と言い返し、立ち会った受け師さんの意志とは無関係に真剣勝負は進んでいってしまうのです。

この流れにとまどう受け師さんの恥ずかしそうな表情がサイコー!!!! これだけで単行本を買う価値があるといっても過言ではありません(断言)。ちなみに真剣師は100万円近い大金も一緒に賭けているのですが、勝負中の2人の興味はオッパイのみに精神集中(ある意味清々しい)。二次元であまりムチムチしてるのは基本的に苦手な私ですが、受け師さんは例外!

ちなみに柴田先生は、小学生の頃にプロ棋士をリアルに目指していて、激戦区の地元・北海道大会では、出れば優勝の実力者だったそうです。このあたりのバックボーンが、画面に迫力と説得力を持たせるのに重要な役割を果たしているのは間違いありません。将棋を指すシーンの描写もスピーディーで熱く、格闘漫画のアクションシーンに似た快感があります。おそらく将棋のルールがよくわからなくても楽しめるのではないでしょうか。これは本気でオススメできます。

余談ですが、1巻の最後に作品タイトルの意味が明かされ、2巻の後半に受け師さんの名前が明かされます。これは本編を読んでのお楽しみということで。


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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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