メタルクライシス〜枯渇する金属元素〜(3)文科省の「元素戦略」(上)
2007年05月28日18時06分 / 提供:PJ
(2)からのつづき。今年初め、岸輝雄さん(物質・材料研究開発機構理事長)を議長とする「元素戦略/希少金属代替材料開発 合同戦略会議」が組織された。この会議は、内閣府、文部科学省、経済産業省、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、(独)科学技術振興機構(JST)が合同で立ち上げた、日本初の希少元素代替材料開発プロジェクトである。東京大学鉄門記念講堂で2月16日、日本初の代替材料シンポジウムが開催され、取り組むべき研究領域や課題が活発に議論された。
これから数回にわたって、このプロジェクトの関係者へのインタビューを掲載する。今回と次回は、文部科学省の取り組みについて紹介する。研究振興局 基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室 室長補佐の下岡豊さんにお話をうかがった。
−文部科学省が立ち上げられた、「元素戦略プロジェクト」の概要について、簡単にご説明下さい。
「我々の生活は、様々な材料を組み合わせた製品に囲まれて成立しています。木材や天然繊維、動物の皮など、これら自然の素材は現在でも我々の生活に欠くことのできないものです。しかし、このような天然の材料に比べ、金属や人工繊維、プラスチックなどの人工的な材料は、強度や加工性などの点で優れた特性を有しています」
「我々の便利な生活は、このように人類が自然界の資源を加工して作り出した高機能な材料をふんだんに活用することで成り立っています。材料研究の歴史は、より高度な機能を持つ材料を研究開発してきた歴史そのものです。ことに最近の先端産業の著しい発展は、材料に求める機能を一層高度なものとしており、材料の性能を上げるために、資源として量が少なく、採取も困難である元素を多量に使用するようになってきています」
「鉄鋼の強度等の特性を上げるために、様々な希少元素を添加して合金化することは一般的に行われていますし、新しいところでは、液晶に欠かすことのできないインジウムや、自動車の排気ガスを浄化するために使われているプラチナなど、例を挙げればきりがありません。いずれの希少金属も、先端産業で非常に重要な位置を占めるだけでなく、我々が環境と調和した生活を営む上で不可欠な製品の中心となる材料に、極めて貴重な元素が使われているのです」
「このような希少元素の利用に関しては、なるべく節約して有効に利用すべきであることは言うまでもなく、できるならば、他のより一般的な元素で置き換えていくことが求められます」
「世界的な経済発展の流れの中で、より多くの人々が、現在の我々が享受しているような便利で快適な生活を送ることができるようにするため、希少な元素を有効に活用するとともに、やむを得ない理由から使用されている有害な性格を持つ元素の使用を抑制していくことが環境問題の観点からも、人類全体の課題として重要です」
「このため、元素戦略プロジェクトにおいては、材料を構成して材料の特性を決めている元素の役割を科学的に分析し、それに基づいて、希少元素や有害元素の使用を抑制していくための研究を進めることとしています」
−プロジェクトの規模と現在の状況について教えてください。
「実施予定年度は平成19〜23年度の5年間で、平成19年度予算額は約4億円です。5年間の予算総額は未定です。現在、研究課題の公募審査中で、応募状況はお答えできませんが、1課題当たり3000万円〜8000万円程度、合計4億円程度を想定しています」
−文部科学省と経済産業省間の初めての省庁連携・科学技術プロジェクトということで、基礎科学から実用化までを視野に入れた取り組みだと思いますが、それだけ政府内での希少元素についての危機感が強いということなのでしょうか。
「現在、先端産業に使用される材料に関して、レアメタル問題、有害元素問題などが持ち上がっています。第3期科学技術基本計画に基づき策定された「分野別推進戦略」においても、ナノテクノロジー・材料分野における10の「戦略重点科学技術」の一つとして「資源問題解決の決定打となる希少資源・不足資源代替材料革新技術」が挙げられており、政府としても重要視しています。この技術の開発を進めるために、各省がばらばらに研究開発を行うのではなく、より効果が上がるように文部科学省と経済産業省が連携して推進することにしました」
−経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」では、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)という3つの元素をターゲットにして、公募しています。これに対して、文部科学省のプロジェクトは、もっと広範な元素を対象にして、中長期的な視点あるいは基礎科学的な視点から元素戦略に取り組んでいるように見えます。この点に関連して、文部科学省のこのプロジェクトの中での目標を教えてください。
「材料開発は、研究段階から商品化の段階まで、時間がかかるのが特徴です。特に、従来材料の特性向上のために使われてきた元素を使用しない方向で研究するわけですから、材料を構成する元素が、材料の中でどんな役割を果たしているのか、他の構成要素との相互関係はどうなっているのか、材料の中で、結晶等の状態はどうなっているのかなど、科学的に深く探求していかないと成果に結び付けることは困難です」
「そこで、文部科学省の元素戦略は、5年間の研究期間内に、材料を構成する元素が材料の特性発現にどのように寄与しているのかのメカニズムを科学的に解明することに力点を置き、5年間経過の後に、この科学的な知見をもとにして、具体的な材料作成のための研究に取りかかれることを目標としています」【つづく】
■関連情報
PJニュース.net
これから数回にわたって、このプロジェクトの関係者へのインタビューを掲載する。今回と次回は、文部科学省の取り組みについて紹介する。研究振興局 基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室 室長補佐の下岡豊さんにお話をうかがった。
−文部科学省が立ち上げられた、「元素戦略プロジェクト」の概要について、簡単にご説明下さい。
「我々の生活は、様々な材料を組み合わせた製品に囲まれて成立しています。木材や天然繊維、動物の皮など、これら自然の素材は現在でも我々の生活に欠くことのできないものです。しかし、このような天然の材料に比べ、金属や人工繊維、プラスチックなどの人工的な材料は、強度や加工性などの点で優れた特性を有しています」
「我々の便利な生活は、このように人類が自然界の資源を加工して作り出した高機能な材料をふんだんに活用することで成り立っています。材料研究の歴史は、より高度な機能を持つ材料を研究開発してきた歴史そのものです。ことに最近の先端産業の著しい発展は、材料に求める機能を一層高度なものとしており、材料の性能を上げるために、資源として量が少なく、採取も困難である元素を多量に使用するようになってきています」
「鉄鋼の強度等の特性を上げるために、様々な希少元素を添加して合金化することは一般的に行われていますし、新しいところでは、液晶に欠かすことのできないインジウムや、自動車の排気ガスを浄化するために使われているプラチナなど、例を挙げればきりがありません。いずれの希少金属も、先端産業で非常に重要な位置を占めるだけでなく、我々が環境と調和した生活を営む上で不可欠な製品の中心となる材料に、極めて貴重な元素が使われているのです」
「このような希少元素の利用に関しては、なるべく節約して有効に利用すべきであることは言うまでもなく、できるならば、他のより一般的な元素で置き換えていくことが求められます」
「世界的な経済発展の流れの中で、より多くの人々が、現在の我々が享受しているような便利で快適な生活を送ることができるようにするため、希少な元素を有効に活用するとともに、やむを得ない理由から使用されている有害な性格を持つ元素の使用を抑制していくことが環境問題の観点からも、人類全体の課題として重要です」
「このため、元素戦略プロジェクトにおいては、材料を構成して材料の特性を決めている元素の役割を科学的に分析し、それに基づいて、希少元素や有害元素の使用を抑制していくための研究を進めることとしています」
−プロジェクトの規模と現在の状況について教えてください。
「実施予定年度は平成19〜23年度の5年間で、平成19年度予算額は約4億円です。5年間の予算総額は未定です。現在、研究課題の公募審査中で、応募状況はお答えできませんが、1課題当たり3000万円〜8000万円程度、合計4億円程度を想定しています」
−文部科学省と経済産業省間の初めての省庁連携・科学技術プロジェクトということで、基礎科学から実用化までを視野に入れた取り組みだと思いますが、それだけ政府内での希少元素についての危機感が強いということなのでしょうか。
「現在、先端産業に使用される材料に関して、レアメタル問題、有害元素問題などが持ち上がっています。第3期科学技術基本計画に基づき策定された「分野別推進戦略」においても、ナノテクノロジー・材料分野における10の「戦略重点科学技術」の一つとして「資源問題解決の決定打となる希少資源・不足資源代替材料革新技術」が挙げられており、政府としても重要視しています。この技術の開発を進めるために、各省がばらばらに研究開発を行うのではなく、より効果が上がるように文部科学省と経済産業省が連携して推進することにしました」
−経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」では、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)という3つの元素をターゲットにして、公募しています。これに対して、文部科学省のプロジェクトは、もっと広範な元素を対象にして、中長期的な視点あるいは基礎科学的な視点から元素戦略に取り組んでいるように見えます。この点に関連して、文部科学省のこのプロジェクトの中での目標を教えてください。
「材料開発は、研究段階から商品化の段階まで、時間がかかるのが特徴です。特に、従来材料の特性向上のために使われてきた元素を使用しない方向で研究するわけですから、材料を構成する元素が、材料の中でどんな役割を果たしているのか、他の構成要素との相互関係はどうなっているのか、材料の中で、結晶等の状態はどうなっているのかなど、科学的に深く探求していかないと成果に結び付けることは困難です」
「そこで、文部科学省の元素戦略は、5年間の研究期間内に、材料を構成する元素が材料の特性発現にどのように寄与しているのかのメカニズムを科学的に解明することに力点を置き、5年間経過の後に、この科学的な知見をもとにして、具体的な材料作成のための研究に取りかかれることを目標としています」【つづく】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一
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