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光市母子殺人事件の被告弁護団を批判する

【PJ 2007年05月27日】− 山口県光市で1999年4月、23歳の女性と生後11か月の幼女が、当時18歳の少年に自宅で殺害される事件があった。「山口県光市母子殺害事件」だ。一審の山口地方裁判所の判決は無期懲役、広島高等裁判所も判決を支持した。2006年、最高裁判所は原判決を破棄し、審理を広島高裁に差し戻した(最高裁判決全文)。

 最高裁が判決の中で認定した犯罪事実の概略は、次のようである。1999年4月14日の午後2時過ぎ、被害者と同じアパートに住む少年が、排水検査を装って被害者宅に侵入した。少年は女性に馬乗りになって暴行を加えようとしたが、激しい抵抗を受けたため、手で首を絞めて殺害し凌辱した。その傍らで泣き叫ぶ幼児を床に叩きつけ、持ってきたヒモで絞殺した。その後、2人の遺体を押し入れに隠し、部屋にあった財布を盗んで逃走した。

 最高裁の判決を読む限り、差し戻し審での死刑回避の可能性は低いだろう。「死刑を回避し、無期懲役刑を選択した情状は不十分であり、もう一度検討せよ」と差し戻したのだ。

 24日、広島高裁で始まった差し戻し審で、被告弁護団は驚くべき主張をし始めた。この事件は「母恋しさ、寂しさからくる抱き付き行為が発展した傷害致死事件」だというのだ。いわく、「(少年は)強姦目的ではなく(被害女性に)優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついた」「(死体を凌辱したのは)生を注入するため」「(幼児を殺害したのは)殺そうとしたのではなく)泣き止ますために首にヒモを蝶々結びしただけ」云々。

 しかし、このような主張は、事件から8年も経過して、初めて出てきたものだ。なぜこのような主張が今頃になってなされるのか。被告自身が考えていたことならば、もっと早く出てきてもいいはずだ。死刑判決が確実な状況の中で、被告の不可解で不合理な発言を取り上げることで被告の責任能力が限定的だったことを主張し、死刑判決を免れようとしているだけの詭弁ではないのか。

 今回のような差し戻し審での弁護がどれほど難しいかは想像できるが、死刑回避のためならどんな詭弁を弄することも厭わない弁護団の姿勢は批判されるべきだ。死刑回避が被告にとって最大の利益であることは当然のことだが、その利益のために、被告の責任能力を過小に主張することは不当だ。真実を明らかにするという裁判の本質的機能から乖離している。

 21人にも上る大弁護団には、死刑廃止を主張してきた弁護士たちが終結している。彼らにとっては不本意かも知れないが、様々な世論調査で死刑廃止を望む意見は少数だ。また、国会でも死刑廃止論は少数意見にとどまっている。つまり、死刑制度の廃止が実現する可能性は、現在のところ極めて低い。このため、死刑廃止を望む弁護士たちは、死刑が予想される個々の事件の弁護に立つ。最高裁が無期懲役刑を選択した原判決を破棄し、差し戻し審での死刑判決が予想されるこのような裁判は、まさに彼らの腕の見せ所でもあるのだろう。

 弁護士法の冒頭にこんなことが書いてある。「第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」。詭弁を弄して遺族感情を傷つけ、世論の猛反発を受けながら、無期懲役判決を「勝ち取った」として、それは彼らが正義と信じる「死刑廃止」の実現につながるのだろうか。わたしはそうは思わない。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林亮一【 宮城県 】
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