兜町界隈が「金融センター」に?

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   金融庁が東京・日本橋〜兜町界隈を金融センターにする構想を打ち出した。山本有二金融・再チャレンジ担当相が2007年5月21日、在日米商工会議所の講演でその考えを示した、とロイター通信などが報じたものだ。金融庁は「いまのところ具体的なことはありません。山本大臣もイメージをつかんでもらおうと兜町や日本橋を例にあげたに過ぎません」というが、関連株が上がるなど早くも波紋を広げている。

株式市場も敏感に反応

   兜町といえば東京証券取引所を中心とし、証券会社が軒を連ねる。一方の日本橋〜神田界隈は日本銀行が近いため、地方銀行の東京支店が立ち並び、東京駅をはさんではメガバンクの本店が並ぶ。高島屋三越COREDO日本橋、新装オープンした丸善(書店)などのショッピング街とビジネス街が混在した街だ。

   講演で山本金融担当相が引き合いに出した英国の新金融センターといわれる「カナリー・ウォール」はロンドン東部の造船所跡地で、サッチャー政権の象徴といわれるドックランズ再開発によって誕生した。HSBCやバークレイズ、シティーグループなどの本部やロイター通信の新社屋が集まる。

   近くにはテムズ川が流れることから、「(山本大臣は)東京でいえば、隅田川をテムズ川に見立ててイメージしたのでしょう。どこにするのか、具体的なことはまだなにも決まっていません」(金融庁)と話す。

   とはいえ、22日午前の東京株式市場では、東京証券取引所や日本証券業協会が入居するビルなどを有して不動産業を展開する平和不動産株に買いが入り、金融センター構想に早くも投資家が飛びついた形だ。

アジアの拠点として、「復権」狙う

   そもそも「金融センター構想」はバブルのころからあった。東京市場をニューヨークやロンドンに匹敵する、魅力あるマーケットにするため、外資系金融機関が参入かつ活動しやすくするために金融街をつくろうというもの。かつて、東京都がお台場に内外の金融機関を誘致しようと計画したこともあった。その後のバブル崩壊の影響もあって計画は立ち消え。そうこうしているうちにアジアのマーケットを見渡すと、香港やシンガポール、最近では上海が台頭してきて、東京市場の存在は霞んできた。

   金融庁は、「山本大臣は外資系も含めた競争をもっと活発化させることで日本の金融サービスを向上させようということを考えておられるようです。そのためにも外資系金融機関にも魅力のある金融の集積地が必要なのです」と説明。すでに外資系金融機関のなかにはアジア本部をシンガポールに置き、東京はその出先機関としての機能しかないところもあって、アジアの拠点としての東京市場の「復権」を懸けようというのだ。

   「なんとか、(骨太の方針に)入れてほしいんですけど」と、金融庁の担当者も期待する。