JASRACは朝日新聞の記事を「誤報」として訂正を要求している

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   朝日新聞に掲載された「iPod vs. JASRAC」と題した記事が、日本音楽著作権協会(JASRAC)から「誤報」であるとして、訂正を求められていることが明らかになった。JASRACによれば、朝日の記者の大きな勘違いが「誤報」につながったらしいのだ。

「アップル側の管理がずさんなため」?

   問題となっているのは2007年5月17日の朝日新聞(朝刊)に掲載された「iPod vs. JASRAC 著作権料2.5億円不払い」と題された記事。携帯音楽プレーヤー「iPod」にインターネット上のサイト「iTunesストア」で音楽を取り込む際の著作権料について扱った記事だが、それによると、05年8月から始まった音楽配信サービスで米アップル社からJASRACに支払うべき著作権料2.5億円が支払われていないのだという。また、この記事によれば、JASRAC側は「アップル側の管理がずさんなため」と言っているようなのだ。

   この記事についてJASRACは2007年5月17日、「正確さを欠く内容が掲載された」として同協会ホームページに抗議の声明を掲載した。それは次のような内容だ。

「当協会と日本地域でiTunesサービスを行う日本法人iTunes株式会社(米国アップル社傘下)との間では、音楽著作物利用許諾契約が存在し、同社による著作物利用実績の報告および暫定著作物使用料の支払いがすでに行われており、現在は当協会において、利用曲目の正確なデータを得るための解析作業を行っております」

   つまり、2.5億円の著作権料はすでにJASRACに支払われていたようなのだ。JASRAC広報部はJ-CASTニュースに対し、記事は「誤報」で、朝日の記者の取材に対しては「(不払いはないことを)もちろん言った」としている。

「権利者」にまだ著作権料が支払われていないだけ

   さらに、この記事で「(不払いは)アップル側の管理がずさんなため、というのが日本の著作権団体の言い分だ」「たとえば、同じ曲で歌手や作曲家の表記がなかったりするなど(アップル側が)ずさんな体裁のため配分できない」とJASRACがあたかもアップルを「ずさん」と評価しているかのような箇所については、

「実際にiTunesには何百万と楽曲があり正確な楽曲データを作成することは簡単にできず、その作業が時間がかかっているということはある。『ずさん』という表現は正確じゃないし、(朝日の取材に対しても)そのようなことはこちらも言っていない」(広報部)

としている。JASRACの話を聞く限り、この記事は「大誤報」であるようだ。同協会は、この「誤報」について次のように推測する。

「5月16日に定例記者会見があって、ぶらさがり取材でiTunesはどうなっているのか聞かれたらしいが、(JASRAC側は)権利者に著作権料が支払われていないということを伝えたようだ。それを、朝日の記者は(アップルがJASRACに支払っていないと)勘違いしたようだ」

   つまり、楽曲データがまだ作成されておらず、作曲家や歌手などの「権利者」に使用料が支払われていないという話を、アップルがJASRACに支払っていないということと取り違えたらしいのだ。一方、朝日新聞社広報部はJ-CASTニュースに対し、

「(JASRACが事実と異なると述べていることについて)承知しているが、調査中でコメントできない」

としている。JASRACは「正確な情報に基づいて改めて記事を掲載するように協議している最中」としており、場合によっては朝日新聞側が訂正記事を掲載する可能性もありそうだ。