慈恵病院HPより。「ゆりかご」窓口の扉には「赤ちゃんに何かを残してあげて」と書かれている

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   赤ちゃんポストが設置されてすぐ、3歳の男児が預けられた。「かくれんぼしよう」と親に言われて、体を折り曲げられるようにして「ポスト」の小さな窓口に入ったらしい。

父親に体を抱きかかえられ、窓口から入った

   親が事情により育てられなくなった新生児を預かる「こうのとりのゆりかご」(以下「ゆりかご」)が慈恵病院(熊本市)に設置されたのは2007年5月10日正午。その数時間後には、3歳の男児が預けられていたという。熊本日日新聞はこう報じている。

「関係者の話によると、男児は10日14〜15時ごろ、『ゆりかご』に入っていた。県外から親と一緒に来たとみられ、自分や親の名前を答えているほか、『かくれんぼしよう』と(親に)言われたなどと話しているという。健康状態はよく、身元を示すような物は持っていなかった」(07年5月15日付)
「男児は『3歳で、父親と福岡から来た』と話しているという」(07年5月16日付)

   3歳の男児といえば、身長は平均95センチ(厚労省データ)くらいだ。慈恵病院の壁面に取り付けられた「ゆりかご」の窓口は横幅60センチ、高さが50センチ。「かくれんぼ」だからと言われた男児は、親に体を抱きかかえられ、体を折り曲げられるようにして、「ゆりかご」窓口から病院に預けられたのだ。「ゆりかご」窓口の扉は一度外から開けられると自動ロックされてしまい、看護師以外は開けられない。

   全国紙でも後日、男児が「ゆりかご」に入った状況を同様に報じた。

「ポストに入った経緯について、男児は『かくれんぼをしようと言われた』と話しているという。男児は活発で、質問に対して自分や父親の名前をはきはき答え、話しかけられるとニコニコとうれしそうな様子を見せたという」(07年5月17日付読売新聞)
「男児は『福岡から来た』『かくれんぼをしようと言われ(入っ)た』と、住んでいた場所と、ポストに入った経緯を話していることが関係者の話でわかった。また、男児は新品の服を着ていて、病院のスタッフがポストの中に駆けつけた時には、ニコニコと笑っていたという。虐待などを受けた形跡はなかった。 (07年5月17日付毎日新聞)

   これについて、当の病院、市や県、警察は、「子どもの人権、福祉を考えて、現時点では一切話せない」と事実関係を明らかにしていない。

ドイツでも3〜4歳の幼児が預けられることがある

   同病院の「ゆりかご」を支援し、「赤ちゃんポスト ドイツと日本の取り組み」というビデオを企画しているNPO法人「円ブリオ基金」に、3歳男児が預けられたことについてたずねた。

「ドイツへBaby Klappe(ドイツ版「赤ちゃんポスト」)視察に行った際、偶然3〜4歳の幼児が預けられた場面に遭遇した」

   関係者はこんな事例を明かした。ほどなく保護者が現れ幼児を引き取ったが、日本でも、幼児が預けられてしまう可能性はもちろんある。これについて、

「一概には言えないが、3、4歳で不幸にも『捨て子』となってしまったとしても、養父母に育てられ幸せな人生を送ることも現実にあるし、命の可能性を信じる方が重要なのではないか」

としている。