楽天とTBSの対立が先鋭化しそうだ

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   楽天による株買い増し問題でTBSは、2007年5月15日に開いた取締役会で、定時株主総会(6月28日開催予定)に買収防衛策の承認を求める議案を出すことを決めた。三木谷浩史社長の社外取締役への選任を求めた楽天の株主提案には反対を明確にした。総会では、楽天の提案を否決したうえで防衛策の導入を承認する見通しで、TBSと楽天の対立がいっそう先鋭化しそうだ。

「条件付き発動」の議案になる見通し

   TBSの買収防衛策は、同総会で承認が得られないと失効する仕組みで、当初から定時総会の議案とする方針だった。一方、防衛策の発動に関しては、その妥当性を判断する「企業価値評価特別委員会」(委員長、北村正任・毎日新聞社社長)への諮問と、特別委による勧告(諮問後90日以内に判断)後、取締役会で意思決定し、改めて臨時株主総会を開く必要がある。

   特別委は、楽天がTBSの企業価値を損ねる「乱用的買収者」にあたるかどうかを慎重に検討するとしており、TBSは「定時総会には間に合わない」と判断したわけだが、「発動」の承認を得るには、現在は、TBSの19.86%の株式を保有する筆頭株主の楽天が「20%超に買い増す」と通告しただけ段階のため、発動の議案は「楽天が20%以上に株を買い増した場合、防衛策を発動する」という「条件付き発動」の議案になる見通しだ。

委任状集め闘争も想定

   楽天の株主提案は、(1)三木谷社長と、楽天の社外取締役でもある増田宗昭カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長をTBS社外取締役に選任する(2)防衛策の導入は、株主総会で3分の2以上の承認を要する特別決議で決定する――の2件。楽天は5月7日にTBSの株主名簿を閲覧しており、株主総会に向けては、TBS・楽天の双方が、自社の提案に賛成する株主の委任状を集める「委任状闘争(プロキシーファイト)」も想定される。

   ここまではTBSにとって「想定の範囲内」。そもそもTBS上層部は、楽天がTBSとの業務提携の交渉を進める一方で、予告なく株を買い増してきたことに不信感を持っており、ソフトランディングは考えにくい。

   一方、楽天はTBSに「特別委の評価期間中は買い増しをしない」と伝えており、特別委の判断が出るまでは、手を縛られる。次の一手は、他株主の自陣営への引き込み、特別委の判断後の買い増し、「発動」の差し止めによる裁判闘争、が考えられるが、楽天幹部は「裁判になれば勝つ」と自信を見せる。

   ただ、楽天にとっての最大の問題点は、三木谷氏の掲げる「ネットと放送の融合による企業価値の向上」が、具体性に欠けることだ。その点では、「メディア王」ルパート・マードック氏が会長を務める米ニューズ・コーポレーションと米ダウ・ジョーンズ、カナダの総合情報企業トムソンと英ロイター・グループの統合交渉など海外のメディア再編が「投資家向け金融・経済情報」という「カネの成る木」の掌握に明確に焦点を絞っているのと大きな違いがある。