IGDA日本 ゲームAI連続セミナー
 5月12日、IGDA日本はゲーム開発者向けAI(人工知能)連続セミナーの第3回を東京大学で開催した。講師はフロム・ソフトウェアの三宅陽一郎氏で、チーム戦をおこなう「クロムハウンズ」のAIを題材に、いかにして「チームとして行動するAI」を実現するか、講義とグループ討論がおこなわれた。

 クロムハウンズ(Xbox360、発売中)は、フロム・ソフトウェアのオンラインマルチプレイ対応メカアクションゲームで、講師である三宅氏がAIを手がけた作品だ。基本的にはXbox Liveで接続された複数のプレイヤーが最大6人ずつのチームに分かれて、4〜6キロメートル四方相当のフィールド上で戦闘をおこなう。本作のAIは、主に対戦相手が揃わなかったときに人間の相手をすることを目的に作られた。フィールドが広いため、各機がばらばらに行動する力押しでは勝機がなく、個々のNPCが連携をとりながら「チーム戦」をいかにうまく戦うように作るかがポイントとなった。

 クロムハウンズで採用されたのは、エージェントとして動作する個々のNPCが、情報を交換しながら連携する「マルチエージェント」システム。開発者自らによる講演ということで、どのように「ちゃんと戦えるAI」を構築していったのかがもっとも興味を集めたが、まず「個としてのAIを自律した知性として制作」したのち、「AI間の協調を定義する」という手順で開発は進められたという。

 クロムハウンズにおけるマルチエージェント技術は、「各NPCが役割を持って協調するマルチエージェント構造」「各NPCは個体としてはゴール指向プランニング」「全体の動きはアルゴリズム的にも制御される」「ゲーム全体としてはチームAIが制御し、ゲームメイキングをする」という特徴を持つ。

 単純なAIの状態からテストプレイをスタートし、デバッガーがどのように戦うのか、三宅氏らが見たり聞き取りをしたりしながら、AIが持つべき機能を拾い上げていった。クロムハウンズのAIのコンセプトは、「人間の心理的な葛藤を人工知能に取り込む」ことにあったという。人間の「常に複数の欲求(通信塔を占拠したい、早く基地に着きたい、等々)を持ち、知能がそのうちから最適な行動を選択する」という思考と判断を、AIにおいては「複数のゴール」から「最適のゴールを選択する」と読み替えた。

 「最適のゴールを選択する」ために、状況によって変動する評価値をもとにゴールを選択することにした。評価値は、ゴールの見返り(重要度)と、それを達成するためのリスクのかねあいから算出される。

 「チームとしてNPCをどう振る舞わせたいか?」、なるべく多対1になるよう動き、勝負をかけるタイミングを揃えるといった動きを実現するため、意志決定機構としてどれか一つの機体(ハウンズ)ではない「チームAI」を用意した。その上でチームから降ってくる命令と個人のゴール、二つの評価値を比較して高い方を選択するよう構成したが、「これでも勝てない」(三宅氏)ため、人間のプレイヤーがどうしているのかをさらに観察、最初は個人の判断を優先しているが、後半はチームの判断で行動している(勝ちに行く)ことが判明したため、チームAIのゴール評価値を、時間に応じて0〜1.2の間で変動させる仕組みを用意した。

 1:開始5分もしくは一機落ちるまではチームAIは介入できない
 2:以後、しだいにチームの評価値への係数をあげていく
 3:後半5分はチーム優先(1.2倍の補正)とすることで、チーム判断が通りやすくする

 これにより、最初は個々のハウンズが独自に敵や通信塔を落とすべく行動するが、後半はチームとして勝利を目指すよう協力し始める、という行動をとるようになり、AIが時間帯に応じてゲームメイキングをしているように人間には見えるようになったという。

 AIは、その「思考」に求められる内容によってさまざまな技術や作り方があるが、ゲームAIの場合は単純に頭がいいだけではなく、人と戦っているように感じさせる、あるいはプレイヤーを楽しませる味付けも必要となる。ゲーム内の登場キャラクタ数が次世代機では格段に増加させられるようになったが、チームAIはこの増えたキャラクタたちをより生き生きと動かす上で重要な技術のひとつだろう。

 AIセミナーは次回6月末に開催される予定。

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