殺される犬たち ペットビジネスの“無責任ぶり”(下)
2007年05月10日00時01分 / 提供:日刊サイゾー
そもそも幼齢犬を買うべきではない
問題は、これだけではない。ペットを購入したものの、その世話を続けることができず、所有放棄してしまう飼い主が依然として多い。特に犬に関していえば、全国に設置された動物愛護管理センター(飼い主から放棄された犬や、野良犬などの動物を保護する施設)の04年度の引き取り頭数は8万5414頭、さらに、狂犬病予防法に基づいて各自治体が抑留した頭数は9万5753頭。合わせて、およそ18万頭の犬が収容され、そのうちの約16万頭が殺処分されている(環境省調べ)。保護日数は自治体によって異なり、新しい引き取り手か、元の飼い主が現れない限り、多くの場合は1週間前後で殺処分となる。保護期限の切れた犬たちは、炭酸ガス処理装置にかけられ、苦しみながら命を落とすのである。
こうして殺される犬たちは、野犬よりも飼い主に捨てられた犬の割合が圧倒的に多い。「引っ越し先の都合」や「吠えて困る」「知人に咬みついてしまった」などの問題行動を理由に、毎日飼い犬たちが動物管理センターに連れてこられる。
前出の堀氏は、犬が「吠える」「咬む」などの問題行動を起こす原因のひとつとして、「あまりに早く親犬から引き離しすぎること」を挙げている。堀氏は、八ヶ岳にある「犬の牧場」という施設で、127頭の犬の群れと500日にわたって共に過ごし、犬の生態を観察する中で、犬の牧場の犬と、そうでない犬との行動の違いが気になったという。来場者の多くは、そこにいる犬たちと大自然の中で遊ばせようと、愛犬を連れてくる。しかし来場犬のほとんどは、牧場の犬たちと遊べない。そこで同氏は来場犬約300人を観察し、牧場でとっている飼い主へのアンケートを分析した。その結果、30日齢前後で親兄弟から引き離された犬には、共通してきわめて異常な傾向が見られる、というデータを得た。その傾向とは、「犬なのに犬を怖がる」「ほかの犬を威嚇、攻撃する」「異性に対する性的関心が薄い」「人や周囲の環境に過剰反応し、攻撃的になったりむだ吠えをする」などである。この結果をふまえ、同氏は「子犬時代に親の愛情や刺激を受けずに、ペットショップなどで“施設化”されることが、犬の問題行動の引き金になっている」と指摘。さらに「日本の犬の多くは、犬本来の学習能力を獲得できず、社会性が不足している」と言う。また、生後90日以上を親兄弟と過ごした犬は、学習能力が高く、情動も安定していることから、犬の理想的な入手時期は、生後3カ月だとしている。(一部引用:『犬は「しつけ」で育てるな!』著者/堀明 発行/築地書館)
だが、実際に市場に出回っているのは、生後40〜55日がもっとも多く、全体の8割程度を占めている。市場に流通する犬のほとんどは、生体オークションで繁殖業者からペットショップなどの小売店の手に渡る。現在日本では、全国的に著名な犬猫オークションが、東京、横浜、名古屋、大阪などの大都市周辺に約10カ所、中小規模のものと合わせると計15カ所で、週に1度、毎週開設されている。このオークションでの子犬の出荷日は、生後40日以下が全体の2割、40〜45日が4割、45〜55日が3・5割だ。
実は、動愛法の改正に及び、環境省の諮問機関である中央環境審議会では、幼齢動物の販売規制が最重要の論点となっており、生後8週齢以下の子犬は販売禁止にしよう、という動きがあった。しかし、結局、改正法に「何週齢」と明記されることはなかったのである。雑誌「愛犬の友 3月号」(誠文堂新光社)の中で、全国ペット小売業協会副会長の太田勝典氏は、「現状ではブリーダーが8週齢まで手元に置くのはあまりにも困難。小売店がそれを仕入れても販売に最適な時期は過ぎている」と述べている。3カ月間とは言わずとも、8週間すら手元に置いておけないブリーダーや繁殖場は、そもそも繁殖施設として適切な環境といえるのだろうか? また、販売(購入)に最適な時期とはいつなのか? 犬の社会性が身に付かないというだけでなく、幼齢犬のうちに販売されることが原因で、死亡したり病気にかかる確率も高くなる。にもかかわらず、生後40日前後で販売することが最適と考えられているとしたら、これは業界のみならず、消費者も、認識を改めるべき問題といえるだろう。
われわれは、ペットショップの店先にディスプレイされた、生後1カ月程度の愛らしい子犬を見て歓声を上げる。しかし、その子犬がどのような繁殖場から連れてこられたか想像もしなければ、安易に購入したのち、飼えなくなったらその犬はどこでどう処分されるのか、知ることも少ない。まずは、われわれ消費者ひとりひとりが、ペットを飼うことは、命の責任を負うことなのだという意識を高める必要があるだろう。ペット産業界だけでなく、消費者全体のモラルの向上が、求められている。
サイゾー編集部|取材・文
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問題は、これだけではない。ペットを購入したものの、その世話を続けることができず、所有放棄してしまう飼い主が依然として多い。特に犬に関していえば、全国に設置された動物愛護管理センター(飼い主から放棄された犬や、野良犬などの動物を保護する施設)の04年度の引き取り頭数は8万5414頭、さらに、狂犬病予防法に基づいて各自治体が抑留した頭数は9万5753頭。合わせて、およそ18万頭の犬が収容され、そのうちの約16万頭が殺処分されている(環境省調べ)。保護日数は自治体によって異なり、新しい引き取り手か、元の飼い主が現れない限り、多くの場合は1週間前後で殺処分となる。保護期限の切れた犬たちは、炭酸ガス処理装置にかけられ、苦しみながら命を落とすのである。
こうして殺される犬たちは、野犬よりも飼い主に捨てられた犬の割合が圧倒的に多い。「引っ越し先の都合」や「吠えて困る」「知人に咬みついてしまった」などの問題行動を理由に、毎日飼い犬たちが動物管理センターに連れてこられる。
前出の堀氏は、犬が「吠える」「咬む」などの問題行動を起こす原因のひとつとして、「あまりに早く親犬から引き離しすぎること」を挙げている。堀氏は、八ヶ岳にある「犬の牧場」という施設で、127頭の犬の群れと500日にわたって共に過ごし、犬の生態を観察する中で、犬の牧場の犬と、そうでない犬との行動の違いが気になったという。来場者の多くは、そこにいる犬たちと大自然の中で遊ばせようと、愛犬を連れてくる。しかし来場犬のほとんどは、牧場の犬たちと遊べない。そこで同氏は来場犬約300人を観察し、牧場でとっている飼い主へのアンケートを分析した。その結果、30日齢前後で親兄弟から引き離された犬には、共通してきわめて異常な傾向が見られる、というデータを得た。その傾向とは、「犬なのに犬を怖がる」「ほかの犬を威嚇、攻撃する」「異性に対する性的関心が薄い」「人や周囲の環境に過剰反応し、攻撃的になったりむだ吠えをする」などである。この結果をふまえ、同氏は「子犬時代に親の愛情や刺激を受けずに、ペットショップなどで“施設化”されることが、犬の問題行動の引き金になっている」と指摘。さらに「日本の犬の多くは、犬本来の学習能力を獲得できず、社会性が不足している」と言う。また、生後90日以上を親兄弟と過ごした犬は、学習能力が高く、情動も安定していることから、犬の理想的な入手時期は、生後3カ月だとしている。(一部引用:『犬は「しつけ」で育てるな!』著者/堀明 発行/築地書館)
だが、実際に市場に出回っているのは、生後40〜55日がもっとも多く、全体の8割程度を占めている。市場に流通する犬のほとんどは、生体オークションで繁殖業者からペットショップなどの小売店の手に渡る。現在日本では、全国的に著名な犬猫オークションが、東京、横浜、名古屋、大阪などの大都市周辺に約10カ所、中小規模のものと合わせると計15カ所で、週に1度、毎週開設されている。このオークションでの子犬の出荷日は、生後40日以下が全体の2割、40〜45日が4割、45〜55日が3・5割だ。
実は、動愛法の改正に及び、環境省の諮問機関である中央環境審議会では、幼齢動物の販売規制が最重要の論点となっており、生後8週齢以下の子犬は販売禁止にしよう、という動きがあった。しかし、結局、改正法に「何週齢」と明記されることはなかったのである。雑誌「愛犬の友 3月号」(誠文堂新光社)の中で、全国ペット小売業協会副会長の太田勝典氏は、「現状ではブリーダーが8週齢まで手元に置くのはあまりにも困難。小売店がそれを仕入れても販売に最適な時期は過ぎている」と述べている。3カ月間とは言わずとも、8週間すら手元に置いておけないブリーダーや繁殖場は、そもそも繁殖施設として適切な環境といえるのだろうか? また、販売(購入)に最適な時期とはいつなのか? 犬の社会性が身に付かないというだけでなく、幼齢犬のうちに販売されることが原因で、死亡したり病気にかかる確率も高くなる。にもかかわらず、生後40日前後で販売することが最適と考えられているとしたら、これは業界のみならず、消費者も、認識を改めるべき問題といえるだろう。
われわれは、ペットショップの店先にディスプレイされた、生後1カ月程度の愛らしい子犬を見て歓声を上げる。しかし、その子犬がどのような繁殖場から連れてこられたか想像もしなければ、安易に購入したのち、飼えなくなったらその犬はどこでどう処分されるのか、知ることも少ない。まずは、われわれ消費者ひとりひとりが、ペットを飼うことは、命の責任を負うことなのだという意識を高める必要があるだろう。ペット産業界だけでなく、消費者全体のモラルの向上が、求められている。
サイゾー編集部|取材・文
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