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【独女通信】丸文字はどこへ行った?
丸文字。独女世代なら、今でもスラスラと書ける人が多いのではないだろうか?
一方で「マンガ字」「ぶりっこ文字」などとも呼ばれていた、丸いフォルムの文字。80年代のコミックを開くと、「かわゆ〜い」「うっそ〜」「うれP」などの丸文字がコマを飾っているのが見受けられる。あらためて丸文字の説明をすると、この文字は80年代、女子中高生を中心に一世風靡を巻き起こした文字の形。楷書体で書けば角ばっているはずの文字を曲線で書き、丸で囲まれたむすびの部分をことさら大きく強調するなど、文字本来の形を逸脱したもので、「読みにくい」「日本語が乱れる」など、一部の大人たちから非難の声があげられていた。
丸文字は当時、社会現象と言われるほどに広まり、ノンフィクション作家の山根一眞氏は1986年に、約8年をかけた取材、調査をもとに発表した『変体少女文字の研究』(講談社)の中で、1980年半ばには約500万人もの若者が書いていたと推定している。そして本書で丸文字は1972年頃に発生し、1976年頃に急速に広まったと報告。その主な理由に、シャープペンシルと横書きノートの普及をあげている。
曰く、横書きで文字を書く場合は、楷書や行書よりも丸文字のほうが書きやすいのだそう。さらに当時、少女たちが常用していた安価なシャープペンシルは芯が折れやすかったため、筆圧を加減をする必要があった。すると、シャープペンシルを握る角度が垂直に近くなり、結果、角ばった文字が書きにくくなる。そのため自然と文字は丸を帯びるようになってしまったのだとか。
また、この時代は少女たちの間で交換日記や手紙交換が流行。文字を書く量が男子よりも圧倒的に多かったため、女子の間で丸文字が浸透したとしている。なるほど、何もかもが思い当たることばかり。さて、そんな丸文字は、今ではほとんど見ることがない。いったいどこに行ってしまったのだろうか。
山根氏によると、丸文字はあまりにも広まりすぎてしまったことで、限られたパーソナルコミュニケーションとしての魅力が失われてしまった。そして、これとは異なった書体がいくつか生まれたのだそうだ。
思い当たるのが90年代の「ヘタウマ文字」だ。こちらは、丸文字では省略されていた文字のハネやハライが強調されているため、文字が上手いのか下手なのか、一見して判断がつきにくいのが特徴的。ヘタウマ文字は現在も受け継がれているが、その一方で台頭しつつある文字がある。「ギャル文字」だ。
知っている人も多いだろうが、「ギャル文字」とは、少女たちが主にメールで使う創作字で、「た」を「ナニ」、「な」を「ナょ」と入力するなど、文字や記号を組み合わせてヘタウマ文字をディスプレイ上に表現したもの。デザインジャーナリストの臼田捷治氏は、芸術新聞社のサイト「ART ACCESS」のコラムで、2003年に発刊された『渋谷発 ヘタ文字BOOK』(実業之日本社)が反響を呼んだことに着目。この本が火付け役となり、ギャル文字が一気に広まったのではと、推測する(※)。
その後、ギャル文字はあれよあれよという間に発展を遂げ、今ではギャル文字に慣れていないものにとっては、解読不能になってしまった。だけど、仲間内だけで通じる暗号めいたやりとりの楽しさは、丸文字で書いた手紙を送りあっていたあの頃の私たちの価値観とそう違うものではない。ギャル文字の起源は丸文字にあり。そう思えば、チンプンカンプンな文字列にも、ちょっぴり親しみがわくというものである。(中沢夕美恵)
(※)初出:「墨」180号「山頭火を書く」(2006年5・6月号)
■関連リンク
・山根一眞オフィシャルサイト
・「ART ACCESS」コラム
■山根一眞氏の近著
・メタルカラー烈伝 温暖化クライシス
■関連リンク 独女のなつかし時代
・ミニクラブを渡り歩くお立ち台独女
・バブル時代に流行ってたあの服、今着るのは“あり”か“なし”か
一方で「マンガ字」「ぶりっこ文字」などとも呼ばれていた、丸いフォルムの文字。80年代のコミックを開くと、「かわゆ〜い」「うっそ〜」「うれP」などの丸文字がコマを飾っているのが見受けられる。あらためて丸文字の説明をすると、この文字は80年代、女子中高生を中心に一世風靡を巻き起こした文字の形。楷書体で書けば角ばっているはずの文字を曲線で書き、丸で囲まれたむすびの部分をことさら大きく強調するなど、文字本来の形を逸脱したもので、「読みにくい」「日本語が乱れる」など、一部の大人たちから非難の声があげられていた。
丸文字は当時、社会現象と言われるほどに広まり、ノンフィクション作家の山根一眞氏は1986年に、約8年をかけた取材、調査をもとに発表した『変体少女文字の研究』(講談社)の中で、1980年半ばには約500万人もの若者が書いていたと推定している。そして本書で丸文字は1972年頃に発生し、1976年頃に急速に広まったと報告。その主な理由に、シャープペンシルと横書きノートの普及をあげている。
曰く、横書きで文字を書く場合は、楷書や行書よりも丸文字のほうが書きやすいのだそう。さらに当時、少女たちが常用していた安価なシャープペンシルは芯が折れやすかったため、筆圧を加減をする必要があった。すると、シャープペンシルを握る角度が垂直に近くなり、結果、角ばった文字が書きにくくなる。そのため自然と文字は丸を帯びるようになってしまったのだとか。
また、この時代は少女たちの間で交換日記や手紙交換が流行。文字を書く量が男子よりも圧倒的に多かったため、女子の間で丸文字が浸透したとしている。なるほど、何もかもが思い当たることばかり。さて、そんな丸文字は、今ではほとんど見ることがない。いったいどこに行ってしまったのだろうか。
山根氏によると、丸文字はあまりにも広まりすぎてしまったことで、限られたパーソナルコミュニケーションとしての魅力が失われてしまった。そして、これとは異なった書体がいくつか生まれたのだそうだ。
思い当たるのが90年代の「ヘタウマ文字」だ。こちらは、丸文字では省略されていた文字のハネやハライが強調されているため、文字が上手いのか下手なのか、一見して判断がつきにくいのが特徴的。ヘタウマ文字は現在も受け継がれているが、その一方で台頭しつつある文字がある。「ギャル文字」だ。
知っている人も多いだろうが、「ギャル文字」とは、少女たちが主にメールで使う創作字で、「た」を「ナニ」、「な」を「ナょ」と入力するなど、文字や記号を組み合わせてヘタウマ文字をディスプレイ上に表現したもの。デザインジャーナリストの臼田捷治氏は、芸術新聞社のサイト「ART ACCESS」のコラムで、2003年に発刊された『渋谷発 ヘタ文字BOOK』(実業之日本社)が反響を呼んだことに着目。この本が火付け役となり、ギャル文字が一気に広まったのではと、推測する(※)。
その後、ギャル文字はあれよあれよという間に発展を遂げ、今ではギャル文字に慣れていないものにとっては、解読不能になってしまった。だけど、仲間内だけで通じる暗号めいたやりとりの楽しさは、丸文字で書いた手紙を送りあっていたあの頃の私たちの価値観とそう違うものではない。ギャル文字の起源は丸文字にあり。そう思えば、チンプンカンプンな文字列にも、ちょっぴり親しみがわくというものである。(中沢夕美恵)
(※)初出:「墨」180号「山頭火を書く」(2006年5・6月号)
■関連リンク
・山根一眞オフィシャルサイト
・「ART ACCESS」コラム
■山根一眞氏の近著
・メタルカラー烈伝 温暖化クライシス
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