セミナー会場
IGDA日本(国際ゲーム開発者協会 日本)は、4月28日にPS3「GENJI-神威奏乱-」におけるCGムービーメイキングに関するセミナーを行った。プレイステーション3向けゲームならではの「リアルタイムデモ」制作に関するノウハウや苦心談などを中心に、同タイトルのメイキングについて語られた。

 「GENJI-神威奏乱-」(以下、GENJI2)は、2006年11月11日に、PS3のローンチタイトルとして発売された作品だ。PS2向け3Dアクションゲーム「GENJI」(以下、GENJI1)の続編であり、「GENJI」に引き続いてゲームリパブリック、プレミアムエージェンシー、白組の3社の協力体制で開発が進められた。役割分担としては、メインのゲーム制作をゲームリパブリック、白組がプリレンダリングのCGムービー制作とムービーおよびデモ全般の演出部分。プレミアムエージェンシーが開発プロデュースとモーションキャプチャ、リアルタイムデモの制作を担当。総合プロデュースをSCEJが担当している。

 まず最初に「(レンダリング)ムービー」と「リアルタイムデモ」の区別について簡単に説明しておこう。どちらも動きのある3D映像を画面上に表示するものだが、仕組みはまったく異なる。

 「ムービー」は、映像を1本の動画ファイルとして作ったもの。1コマずつCGを作成(レンダリング)して一本のムービーを仕上げるので、画面内のオブジェクト数の制約を気にすることなくハイクオリティな映像を見せられるが、そのぶんコストがかかる。また、できた動画は固定なので、ゲーム展開によってキャラクターの装備が変わるなどしても変化が反映させられない。

 これに対して「リアルタイムデモ」は、ゲーム内で使われる3Dモデルや背景データなどを活かして、プログラム側でキャラクタやカメラを操作し、あたかもムービーのように見せてしまうというもの。ゲーム中で装備や状態などが変わっても簡単に反映させられるが、ゲーム機の3D能力によって表現が制約される(ポリゴン数やオブジェクト数、テクスチャ、エフェクトなど)。

 この2つ、プレイヤーの目には同じイベントムービーでも、制作体制という意味では大きく異なっている。

 ムービー制作は、ゲーム部分の開発と切り離して進行させることが容易だが、発注前にシナリオや絵コンテを完璧に整えておく必要があり、急な変更に対応しづらい。一方、リアルタイムデモは急なゲームの仕様変更にも対応しやすいが、そうした追加パートをプログラマーなど映像制作の専門家でないスタッフが作るとクオリティが低くなりがちだ。

 「GENJI1」が発売されたのは2005年の6月30日。そして「GENJI2」の発売は2006年11月11日である。「2」の開発がスタートしたのは「1」開発の終了直後で、実質的な開発期間は1年半未満。しかも当初はPS2向けタイトルとして開発が始まり、PS3タイトルに決定後も、PS3のハードスペック仕様や開発環境がなかなか固定されず、ハードの開発と平行してソフトの開発が進むという状態だった。一方でローンチタイトルとしての発売は早くから決定しており、さらに当初はPS3の発売が「2006年春」だったため、非常にタイトなスケジュール進行だったという。

 そのため開発現場の共通認識となったのが「無駄を省く」ということ。開発スタッフがほぼ「GENJI1」と同じで、問題点が明確になっていた点も効率化に大きく働いた。

 まず「GENJI1」における問題となったのが、ムービーとゲームでキャラクタイメージが統一しにくかったという点。前者ではハイポリゴン、後者ではローポリゴンのモデルがそれぞれ別個に制作され、テイストを揃えるのに思わぬ時間がかかった。またゲーム開発の宿命として、シナリオや絵コンテの制作とムービーやゲーム開発が同時並行で進むため、ゲーム展開上あまり必要でない部分からムービー制作が始まり、重要なシーンほど後回しにされてしまった。その結果、重要なシーンほどクオリティが下がりがちとなる。しかも、どたんばで追加されたリアルタイムデモはゲームリパブリック側で作成され、ムービーに比べて演出面で見劣りするものになってしまった。