ミランにとってオールド・トラフォードは縁起の良い会場だが、ホームチームであるマンチェスター・ユナイテッドは2週間前、ここでローマを7−1で一蹴しており、連続してのイタリア勢との対決に自信をのぞかせていた。

 マンチェスター・Uは、ファーディナンド、ヴィディッチ、ネビルと、DFの主力3人を欠いたが、ホーム大観衆の声援に押され、序盤戦から積極的にゴールを狙う。そして開始からわずか5分、コーナーキックをクリスチアーノ・ロナウドが頭で合わせると、ミランGK、ジダにブロックされるも、ボールは大きく浮き上がり、ゴールラインを越えていった。

 ホームチームはこれで勢いづき、攻勢をかけるが、ミランは相手の守備の手薄な点を突き、ボールを得ると、すかさずセードルフへ、そして彼はカカに好パスを送る。そして22分、同様の展開から、すばやく左サイドを抜け出したカカが、DFエインセのタックルより先に左足を振り抜き、右側サイドネットを揺らした。さらに37分には、GKジダからのボールを持ち込んだカカが、巧みなボールさばきで相手DF同士の衝突を誘い、最後はGKファン・デルサルとの1対1を難なくモノにして逆転に成功する。
 一転して絶対的不利に追い込まれたマンチェスター・Uは、後半に入ると、さらに攻撃の手を強めるが、チャンスを生かせず、逆にカカにきわどいシュートを許す場面も……。

 しかし、ミランの試合運びの巧さが目立ち始めた矢先の14分、マンチェスター・Uはフレッチャー、キャリック、スコールズが細かくパスをつないでミランDFラインの裏へボールを送る。これに鋭く反応したのが、ルーニーだった。

 流れを大きく変える同点劇を生み出した彼は、しかしロスタイムにさらなる驚きを提供する。ギグスの絶妙なパスをダイレクトで合わせ、ジダとゴールポストのわずかな隙間を抜いた彼は、まさに救世主となったのである。

 劇的な結末によって、試合はホームチームの勝利となったが、ミランはふたつのアウェーゴールという土産を得た。マンチェスター・Uが、優勝した98−99シーズン同様、イタリア勢を連続撃破して(当時はインテル、ユベントス)決勝に駒を進めるか、あるいはミランが2年前の雪辱を果たすためのイングランド勢との決勝対決を実現するか――。可能性はどちらにも均等に残された。