太陽光発電所を宇宙に!(中) 〜実用可能な発電コストは?〜
2007年04月24日14時02分 / 提供:PJ
(上)からのつづき。
−欧米でのSSPS研究はJAXAより早く始められましたが、実証研究を行ったのはJAXAが世界で初めてで、欧米の研究チームを追い越しました。後発だったJAXAでのSSPS研究が、世界のトップにまでたどり着いたのはなぜでしょうか。
「JAXAのSSPS予算はNASAの十分の一ですが、継続は力なりということです。1990年台初頭から、組織的に、中断することなく研究開発を継続しているのはJAXAの我々のチームぐらいです」
「先ほどお話ししましたように、経済的に実用化の可能性が見えているのはNASAとJAXAだけなのですが、実用可能だという試算結果を見て、2つの機関の研究者のモチベーションは一気に高まりました。しかし、アメリカではブッシュ大統領が"宇宙でもエネルギーは原子力"という政策を打ち出し、SSPS関係の研究者はNASAから追い出されてしまいました」
「日本では、2003年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」の中で、宇宙太陽光利用の研究は"長期的視野に立って研究する必要のある課題"として、国際熱核融合実験炉(ITER)とともに取り上げられたことが、SSPS研究の追い風になっています。ちなみに自民党には「宇宙エネルギー利用推進議員連盟」が出来ており、会長には甘利明・経済産業大臣、加納時男・自民党政調副会長が就任されています」
−SSPSシステムは、宇宙での太陽光発電、電力の電磁波(マイクロ波、レーザー)変換、地上へのエネルギー移動、電磁波からの発電あるいは水素合成技術から構成されていると理解しておりますが、実現が難しい技術的課題は残されているのでしょうか。
「SSPSを実現するための技術的な課題はほぼクリアしています。実現できるかどうかは予算次第です。安全評価などについては、経済産業省の無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)と業務分担をして研究を進めています」
−SSPSの効率を高めるためには、太陽電池の発電効率や伝送効率などの効率を高める必要がありますが、現状では、どの程度の効率が得られているのでしょうか。
「SSPSの効率は、地上にエネルギーを伝送する媒体として、レーザー光を使うか、マイクロ波を使うかで変わってきます」
「マイクロ波の場合は、集光効率90%、太陽電池での発電効率が19%、マイクロ波発振管の効率が70%、伝送効率(大気透過率)98%、マイクロ波を再び電気に変換する効率が60%、商用電力ネットワークに電気を送る際の接続効率が95%です。システムの総効率は現状6.2%で、将来8.2%を目指しております。レーザー光の場合は、レーザー光の発振効率が25%、レーザー光を再び電気に変換する効率が50%で、総効率は現状10.5%で、将来は16.3%を目指しています」
「宇宙空間に設置した太陽電池では、地上の太陽電池に比べて5〜10倍の電力を作り出すことができます。これは、宇宙では天候に左右されず、長時間発電できるからです」
−SSPSは、さまざまな科学技術を結集して初めて実現するシステムだと思いますが、各要素技術についての研究はどのように進められているのでしょうか。
「たとえば、水素を作り出す方法には電気分解や、光触媒による人工光合成などがありますが、人工光合成の効率は低く、新たな光触媒の開発が求められています。このような技術の開発では、東北大学など外部の研究者との密接な連携が重要だと考えています。JAXAの内部に閉じこもった研究開発をするのではなく、全日本的体制で取り組む必要があると強く感じています」
−先ほど、コストのお話がありましたが、JAXAでは具体的にどのぐらいのコストを目標としているのでしょうか。
「JAXAでは、目標コストを一キロワット時あたり8円としています。この目標を達成するため、関連する全ての技術課題について平行させて取り組んでいます。目標コストを実現するためには、SSPSのエネルギー効率も重要ですし、打ち上げのコストを下げるためには、宇宙の発電設備の重量も重要になります。効率を犠牲にしても、重量を軽くする方が得策な場合もあります」
「したがって、我々が究極の目標としている8円のコストを達成するためには、コストを決める様々な因子を注意深く分析し、効率よくコスト削減のための研究投資をしていく必要があります」
−SSPSの構築には、ロケット打ち上げ費用などを含めて、多額の費用がかかると思います。どの程度の費用がかかるとお考えでしょうか。
「このシステムは全て循環再使用型システムとして設計されてきました。真新しいものをすぐ捨ててしまうロケットではなく、飛行機のように何回も使える経済的な再使用型輸送機をベースに考えていますし、SSPSが壊れたらロボットで修復して、再利用を図るように運用設計されています」
「開発費は20年〜30年間で8000億円、初号基の製造運用費は1.2兆円です。発電コストが8円となり、20円で電力を売れるようになれば、メンテナンスに3%程度の費用がかかっても、運用開始から約30年で建設運用費を償還できる計算になっています」【つづく】
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−欧米でのSSPS研究はJAXAより早く始められましたが、実証研究を行ったのはJAXAが世界で初めてで、欧米の研究チームを追い越しました。後発だったJAXAでのSSPS研究が、世界のトップにまでたどり着いたのはなぜでしょうか。
「JAXAのSSPS予算はNASAの十分の一ですが、継続は力なりということです。1990年台初頭から、組織的に、中断することなく研究開発を継続しているのはJAXAの我々のチームぐらいです」
「先ほどお話ししましたように、経済的に実用化の可能性が見えているのはNASAとJAXAだけなのですが、実用可能だという試算結果を見て、2つの機関の研究者のモチベーションは一気に高まりました。しかし、アメリカではブッシュ大統領が"宇宙でもエネルギーは原子力"という政策を打ち出し、SSPS関係の研究者はNASAから追い出されてしまいました」
「日本では、2003年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」の中で、宇宙太陽光利用の研究は"長期的視野に立って研究する必要のある課題"として、国際熱核融合実験炉(ITER)とともに取り上げられたことが、SSPS研究の追い風になっています。ちなみに自民党には「宇宙エネルギー利用推進議員連盟」が出来ており、会長には甘利明・経済産業大臣、加納時男・自民党政調副会長が就任されています」
−SSPSシステムは、宇宙での太陽光発電、電力の電磁波(マイクロ波、レーザー)変換、地上へのエネルギー移動、電磁波からの発電あるいは水素合成技術から構成されていると理解しておりますが、実現が難しい技術的課題は残されているのでしょうか。
「SSPSを実現するための技術的な課題はほぼクリアしています。実現できるかどうかは予算次第です。安全評価などについては、経済産業省の無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)と業務分担をして研究を進めています」
−SSPSの効率を高めるためには、太陽電池の発電効率や伝送効率などの効率を高める必要がありますが、現状では、どの程度の効率が得られているのでしょうか。
「SSPSの効率は、地上にエネルギーを伝送する媒体として、レーザー光を使うか、マイクロ波を使うかで変わってきます」
「マイクロ波の場合は、集光効率90%、太陽電池での発電効率が19%、マイクロ波発振管の効率が70%、伝送効率(大気透過率)98%、マイクロ波を再び電気に変換する効率が60%、商用電力ネットワークに電気を送る際の接続効率が95%です。システムの総効率は現状6.2%で、将来8.2%を目指しております。レーザー光の場合は、レーザー光の発振効率が25%、レーザー光を再び電気に変換する効率が50%で、総効率は現状10.5%で、将来は16.3%を目指しています」
「宇宙空間に設置した太陽電池では、地上の太陽電池に比べて5〜10倍の電力を作り出すことができます。これは、宇宙では天候に左右されず、長時間発電できるからです」
−SSPSは、さまざまな科学技術を結集して初めて実現するシステムだと思いますが、各要素技術についての研究はどのように進められているのでしょうか。
「たとえば、水素を作り出す方法には電気分解や、光触媒による人工光合成などがありますが、人工光合成の効率は低く、新たな光触媒の開発が求められています。このような技術の開発では、東北大学など外部の研究者との密接な連携が重要だと考えています。JAXAの内部に閉じこもった研究開発をするのではなく、全日本的体制で取り組む必要があると強く感じています」
−先ほど、コストのお話がありましたが、JAXAでは具体的にどのぐらいのコストを目標としているのでしょうか。
「JAXAでは、目標コストを一キロワット時あたり8円としています。この目標を達成するため、関連する全ての技術課題について平行させて取り組んでいます。目標コストを実現するためには、SSPSのエネルギー効率も重要ですし、打ち上げのコストを下げるためには、宇宙の発電設備の重量も重要になります。効率を犠牲にしても、重量を軽くする方が得策な場合もあります」
「したがって、我々が究極の目標としている8円のコストを達成するためには、コストを決める様々な因子を注意深く分析し、効率よくコスト削減のための研究投資をしていく必要があります」
−SSPSの構築には、ロケット打ち上げ費用などを含めて、多額の費用がかかると思います。どの程度の費用がかかるとお考えでしょうか。
「このシステムは全て循環再使用型システムとして設計されてきました。真新しいものをすぐ捨ててしまうロケットではなく、飛行機のように何回も使える経済的な再使用型輸送機をベースに考えていますし、SSPSが壊れたらロボットで修復して、再利用を図るように運用設計されています」
「開発費は20年〜30年間で8000億円、初号基の製造運用費は1.2兆円です。発電コストが8円となり、20円で電力を売れるようになれば、メンテナンスに3%程度の費用がかかっても、運用開始から約30年で建設運用費を償還できる計算になっています」【つづく】
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パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一
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