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雪山の魅力とアクシデント=八ヶ岳・硫黄岳の山行より(中)

雪山の魅力とアクシデント=八ヶ岳・硫黄岳の山行より(中)
硫黄岳山頂の近くからみた、八ヶ岳の主峰・赤岳(2899メートル)。(撮影:穂高健一、4日)
【PJ 2007年04月07日】− 春山登山の事故の主なものは、アイゼンをズボンやスパッツに引っ掛けた転倒、アイスバーンでの滑落、雪庇(せっぴ)崩れによるブロック雪崩に巻き込まれるケースなどがあげられる。天候も大きな要素をしめる。雪山で雨に遭うと、疲労凍死の危険度が高い。

 赤岳鉱泉小屋に入ったのは3日の15時過ぎだった。思いのほか早い到着だった。宿泊者は全部で15名。香港からきた男女登山者6名がいた。4日間の滞在だという。明日はインストラクターがついた赤岳の登攀(とうはん)だと語っていた。個室は2人で5000円増しだから、PJは大部屋にした。

 所沢市からきた男性(60)が先着でいた。ストーブが点火されており、室内は暖かい。合計3人で、大きなスペースだから、ずいぶん得した気持ちになれた。ただ、冬季は温泉がなかった。所沢の人は単独行で本沢温泉から硫黄岳、横岳、赤岳を縦走してきたベテランだった。山の話が弾んだ。夕食と朝食はともに6時だった。真夜中に目覚めると、窓から満月の月光が射し込んでいた。明け方になると、透明ガラス窓には雪の結晶の文様が浮かぶ。中学生時代の理科の本を思い出した。

 赤岳鉱泉小屋の出発は朝7時で、天気は快晴。午後からは崩れる予報だった。所沢の男性はおなじく硫黄岳を越え、本沢温泉を目指す。途中まで一緒だった。樹林帯は深い雪で、トレース(雪道)がしっかりしていた。硫黄岳の森林限界を超えると、視界が開けた。阿弥陀岳、赤岳、横岳の雪峰連山の迫力はことばに言い表しがたい美観だった。こちらの稜線も深い雪だ。『硫黄岳の稜線は砂塵がまわっているところもある』という池袋の某登山用品店の情報がいい加減なものだとわかった。

 PJふたりは稜線の斜面で滑落停止訓練をおこなうので、所沢の男性には先に行ってもらった。滑落停止訓練はビギナー、ベテランでも欠かせない。切り立った雪面で転倒し、滑り始めたならば、ベテランでも停止はかなり厳しいものがある。

 『転ばないこと』が第一条件だが、ヒマラヤ登山経験者のベテランですら、バランスを崩した滑落事故の体験は一度や、二度あるもの。初心者、ベテランにかぎらず、雪山に入ったら、一度はピッケルによる滑落停止をやっておくべきだ。転倒のアクシデントが発生したら、とっさに身体が反応するように。

 滑落停止の技法とすれば、仰向けで胸もとにピッケルを巻き込む。と同時に、上半身の体重をかけ、ピッケルのピックを押さえ込む。『顔までも雪面に押し付けるように。顔は傷つくが、それよりも生命が大切』という考えだ。PJふたりは1時間あまり滑落停止訓練をおこなった。

 硫黄岳山頂(2760メートル)に向かうが、アイスバーンの連続で、軽アイゼンでは足もとが実に不安定だった。たどり着いた山頂の気温はマイナス7度。北風で、粉雪が舞いはじめていた。5分と留まりたくない、寒さだ。山頂出発が11時半で、予定通り夏沢峠に向かう。十数分後の下山ルートで、生死を分けるようなアクシデントが起きてしまったのだ。

 「このアイスバーンは危険だな。右手にルートをとろう」と方角を指した。油断したわけではないが、PJの意識には、踵だけの軽アイゼンだという認識が抜け落ちていた。いつもの12本爪アイゼンを装着した登山靴の感覚だった。踏み出した靴の先端でアイスバーンの上に立った。つまり、鉄の爪がない登山靴裏の部分で、つるつるした氷の上に立ったのだ。

 PJは思い切り足をとられて転倒した。とっさにピッケルのピックを打ち込む。だが、転んだ体勢が悪く、力が入りきらず、停止できなかった。稜線から切り立つ断崖へと落ちていった。【つづく】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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