臨界事故隠しのあった福島第一原子力発電所を訪ねた(下)
2007年04月06日07時04分 / 提供:PJ
原子炉内部の模型。制御棒が外されると核分裂が起こり熱が発生。水が温まり蒸気となってタービンを回して電気を発生させる。東電福島第一原子力発電所のサービスホールで。(撮影:小田光康、4月2日) 写真一覧(4件)
「発電所構内を撮影させていただけますか」と尋ねると「セキュリティーの関係上、お断りさせていただいています。「では、外部から発電所の概観を撮影できる場所ありませんか」と問うと「展望台があるのでそこにお連れいたします」といって、その場所に連れて行ってもらった。あたりを一望できる展望台に立つと、この日は風が強く、望遠レンズのファインダーをのぞくと景色がぶれてよく見えないほどだった。展望台からは発電所構内の一部が見える。発電機は5号機だけが見えた。発電機は海抜10メートルほどに位置している。内田さんが「津波が来ても大丈夫なんですか」と問うと「いろいろなデータを集めて計算した結果、津波が来ても大丈夫なように建設してあります」と答えてくれた。
発電所の岸壁に発電に使う蒸気を冷却する復水を海に戻す排水口が見えた。この蒸気と海水は別々の管を通っているので、直接触れたり混ざることはないそうだ。案内をしてくれた職員の方によると「温められたこの復水を使って、近くでヒラメやアワビ、ウニの養殖をしています。水温の低い冬の間でも魚や貝類が成長できる」そうだ。展望台から発電所と反対側の海岸線を眺めると、福島県栽培漁業協会の養殖場があった。そこまで温排水をパイプで送っているという。
サービスホールに戻る途中、白い砲弾状の機械が展望台脇に設置してあった。放射線の検知機だそうだ。この情報が近くにある福島県原子力センターに送られ、県が発電所周辺の環境放射線量などを独自に測定しているという。
サービスホールに帰ると、案内係の上司の方が同発電所の説明をしてくれた。まず、臨界事故隠しについて質問した。「なぜ、7時間以上もの間、臨界状態になる事故が発生してしまったのですか」とわたし。「作業員の不注意といいましょうか。次の交代員が引き継ぎの際に異常に気づいて対処しました。申し訳ございませんでした」とその上司の方。「でも、先ほど制御棒の異常事態を防ぐために『インターロックシステム』があって異常があると3.5秒以内に原子炉が緊急停止すると教わりましたが」「点検中だったのです。点検中にはそのシステムが働きません。今では改善されています、申し訳ございませんでした」。
次ぎに原子力発電の必要性について質問した。「火力発電や水力発電など他に発電方法があるのになぜ、万が一の事故が危惧(きぐ)される原子力発電をするのですか。風力発電や太陽光発電など自然エネルギーを利用した発電方法もありますが」。「電力を安定供給するために原子力、火力、水力などをバランス良く利用する体制を作っています。原子力を利用することに経済的な理由がありますが、そのほかにも火力では地球温暖化ガスの問題、水力では場所確保の問題があります。原子力は単位あたり5.3円ですが、水力は10円かかります」と水力発電が必ずしも経済的ではないという。
原発を理解してもらうからといって、こんな豪華な施設が必要なのだろうか。この施設はさほどでもないが、青森県の原発銀座といわれる六ヶ所村には、原野の中に燦然とした原発啓蒙施設が立っていた。わたしはその上司の方に「原発を理解してもらうこんな豪華な施設が必要なのですか。この建設や維持の費用はわたしたちの電気代からまかなわれているのですよね。この施設の建設費と年間の維持費用を教えてください」と問いかけると「こまかな修繕を繰り返して、きれいに保っています。建設費や維持費用についてはお答えできません。申し訳ありません」と返事が来た。
原子力発電所が自宅近くにあることは住民にとってあまり気分の良いことではない。「この発電所の電力のほとんどが東京に送られるのですから、だったら東京の真ん中に原発を建てたらいいのではないですか」と聞いた。「東京は地盤が弱いので原発は建てられません。原発は岩盤の上に建てることになっています。それに東京に原発を建てようとしても、土地買収費用だけで無理でしょう。ここは以前は何も無い場所でした。県が産業のない地域を有効利用・活性化しようと東京電力を誘致したのです」との答えが返ってきた。
最後にこの原発で最近トラブルの有無を聞いた。「公表されている以外のトラブルはありませんか」「約20年前から、トラブルで停止することはほとんどありません。強いて言えば5号機なのですが、これは現在停止中です。この詳細については報道発表し、ホームページにも掲載されています。具体的には非常用の弁に不具合がありました。修理は終わっているのですが、一連の不祥事で再開には至っておりません。申し訳ございません」。
実は、これらわたしのほとんどの質疑について、東京電力のホームページ上にその応答が掲載されている。不祥事について、同じ公開かつ公共企業であるはずのテレビ局よりも格段に情報開示が進んでおり、公開されていない疑問に対しても真摯(しんし)な態度で応答してくれる。あるある事件では社長の不祥事をひた隠しにし、ADHD患者への誤解を生む放送をしておきながら自らの非を認めないフジテレビとは大違いだ。
見学が終わり、お礼を言って施設を出ようとすると、説明してくれた方が玄関まで見送ってくれ、「道中、お気をつけて。ありがとうございました」と言って深々とお辞儀をしてくれた。その姿を見ているとなんだか複雑な気持ちになった。この原発で働く人のほとんどが地元の人々だ。失礼だが、原発以外あたりには何もない。案内のおねえさんは「地元にいたいので、ここに就職させてもらいました。この発電所が無かったら、今のようにここで暮らせなかったと思います」と話してくれた。
嫌な言い方だが、原発の危険性の見返りに東電に地元での生活を保障してもらっているわけだ。わたしは原発関係はまったくの素人なので、原発の必要性やその経済的効果についてはよく分からない。ただ、一つだけ理不尽が理解できる。この寒村で生まれた電気が都会の不必要な冷暖房はおろか、歓楽街のけばけばしいネオンに浪費されているということを。【了】
■関連情報
PJニュース.net
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
Ads by Google
コメントするにはログインが必要です
関連ニュース:六ヶ所村
- <核燃サイクル施設>周辺2カ所に地殻変動示す地層 青森毎日新聞 11月08日02時33分
- [核廃棄物輸送車]東北道で追突事故 放射能漏れなし 岩手毎日新聞 11月05日23時33分
- 海原雄山が今度は環境を「料理」する!「美味しんぼ」で環境対決始まる。
greenz.jp 10月26日02時00分 - 毎日フルマラソンで3千キロ 青森六ヶ所から沖縄への無謀な旅がスタート
greenz.jp 10月07日02時00分 - 断層の地にウラン工場/吉井議員同行 原発・核燃を調査/青森・下北
しんぶん赤旗 10月03日09時53分
PJニュースアクセスランキング
- りそな銀行破たんでのインサイダー疑惑、亀井金融相が興味示す=PJ出席の「第二記者会見」で
PJ 07日08時30分(1) - ジェネリック医薬品はなぜ普及しないのかPJ 26日09時58分
- ディズニーランド、埼玉県限定割引パスポート利用開始!
PJ 14日09時51分 - ディズニーランド、埼玉県民の日は最悪?
PJ 30日11時02分 - タバコの値段はまだまだ安い
PJ 25日06時54分 - ツカサネットよおまえもか! 11月末をもって一時休止の告知
PJ 08日09時38分(3) - 橋下知事、「神戸空港を救いたい」「関西のために活用したい」―日本航空、神戸空港から撤退決定で
PJ 08日07時01分 - 「誰もが泳ぎたくなる川を」大阪・橋下知事、水都再生河川水質改善に意欲
PJ 09日08時10分 - オリンピック招致は3連続の惨敗。日本には切り札の都市があるぞ
PJ 06日07時00分(18) - 写真は掛け算で考えていなくもない=背面液晶表示の使い方
PJ 09日08時51分
注目の情報
過払い金返還の無料弁護士相談!消費者金融に払い過ぎた利息が取り返せる可能性があります
完済後もOK。返済中であれば取り立てを止めることができます
借金215万円がゼロになり、368万円戻ってきた事例も!!
弁護士相談24時間受付中
主なトピックス
おすすめ情報
ネットリサーチ
- 「事業仕分け」3兆円超の削減は可能だと思う?
2 users
- 酒井被告に1年6か月猶予3年、妥当だと思う?
427 users
- 民主党の政権担当能力は及第点?
1302 users
- 日本の食料自給率41%は低いと思う?
980 users
- 都知事「2020年五輪に名乗り」賛成?反対?
1599 users
- 首相「温暖化ガス「2050年に80%削減」可能だと思う?
1540 users
特集
ケータイでニュースを見る

















行きの電車、帰りの電車で