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臨界事故隠しのあった福島第一原子力発電所を訪ねた(下)

2007年04月06日07時04分 / 提供:PJ

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臨界事故隠しのあった福島第一原子力発電所を訪ねた(下)
原子炉内部の模型。制御棒が外されると核分裂が起こり熱が発生。水が温まり蒸気となってタービンを回して電気を発生させる。東電福島第一原子力発電所のサービスホールで。(撮影:小田光康、4月2日) 写真一覧(4件)
(上)からのつづき。その後、東電のバンに乗り、職員の方が発電所構内を案内してくれた。敷地面積は東京ドーム77個分の350万平方メートルと広大だ。この中で東京電力職員約1000人を含む4000人から5000人が働いている。そのうち約7割が地元出身者だ。この発電所全体が生み出す計460万キロワットの電力のほとんどが東京都に送られる。都の使用電力の3分の一をこの発電所が生み出している計算になるそうだ。また、この発電所は福島県の予算6%の税収を稼ぎ出すという。2001年に起こった「9.11」同時多発テロ以降、警備が厳重になり、構内には県警の警察官が24時間態勢で警備に当たり、近くの海域には海上保安庁の監視艇が目を光らせている。この重々しい雰囲気の一方で、構内の道路脇にはサクラやツツジが植えるなどして発電所の周りを彩り、陸上競技場や野球場など従業員の息抜きの施設もあった。

 「発電所構内を撮影させていただけますか」と尋ねると「セキュリティーの関係上、お断りさせていただいています。「では、外部から発電所の概観を撮影できる場所ありませんか」と問うと「展望台があるのでそこにお連れいたします」といって、その場所に連れて行ってもらった。あたりを一望できる展望台に立つと、この日は風が強く、望遠レンズのファインダーをのぞくと景色がぶれてよく見えないほどだった。展望台からは発電所構内の一部が見える。発電機は5号機だけが見えた。発電機は海抜10メートルほどに位置している。内田さんが「津波が来ても大丈夫なんですか」と問うと「いろいろなデータを集めて計算した結果、津波が来ても大丈夫なように建設してあります」と答えてくれた。

 発電所の岸壁に発電に使う蒸気を冷却する復水を海に戻す排水口が見えた。この蒸気と海水は別々の管を通っているので、直接触れたり混ざることはないそうだ。案内をしてくれた職員の方によると「温められたこの復水を使って、近くでヒラメやアワビ、ウニの養殖をしています。水温の低い冬の間でも魚や貝類が成長できる」そうだ。展望台から発電所と反対側の海岸線を眺めると、福島県栽培漁業協会の養殖場があった。そこまで温排水をパイプで送っているという。

 サービスホールに戻る途中、白い砲弾状の機械が展望台脇に設置してあった。放射線の検知機だそうだ。この情報が近くにある福島県原子力センターに送られ、県が発電所周辺の環境放射線量などを独自に測定しているという。

 サービスホールに帰ると、案内係の上司の方が同発電所の説明をしてくれた。まず、臨界事故隠しについて質問した。「なぜ、7時間以上もの間、臨界状態になる事故が発生してしまったのですか」とわたし。「作業員の不注意といいましょうか。次の交代員が引き継ぎの際に異常に気づいて対処しました。申し訳ございませんでした」とその上司の方。「でも、先ほど制御棒の異常事態を防ぐために『インターロックシステム』があって異常があると3.5秒以内に原子炉が緊急停止すると教わりましたが」「点検中だったのです。点検中にはそのシステムが働きません。今では改善されています、申し訳ございませんでした」。

 次ぎに原子力発電の必要性について質問した。「火力発電や水力発電など他に発電方法があるのになぜ、万が一の事故が危惧(きぐ)される原子力発電をするのですか。風力発電や太陽光発電など自然エネルギーを利用した発電方法もありますが」。「電力を安定供給するために原子力、火力、水力などをバランス良く利用する体制を作っています。原子力を利用することに経済的な理由がありますが、そのほかにも火力では地球温暖化ガスの問題、水力では場所確保の問題があります。原子力は単位あたり5.3円ですが、水力は10円かかります」と水力発電が必ずしも経済的ではないという。

 原発を理解してもらうからといって、こんな豪華な施設が必要なのだろうか。この施設はさほどでもないが、青森県の原発銀座といわれる六ヶ所村には、原野の中に燦然とした原発啓蒙施設が立っていた。わたしはその上司の方に「原発を理解してもらうこんな豪華な施設が必要なのですか。この建設や維持の費用はわたしたちの電気代からまかなわれているのですよね。この施設の建設費と年間の維持費用を教えてください」と問いかけると「こまかな修繕を繰り返して、きれいに保っています。建設費や維持費用についてはお答えできません。申し訳ありません」と返事が来た。

 原子力発電所が自宅近くにあることは住民にとってあまり気分の良いことではない。「この発電所の電力のほとんどが東京に送られるのですから、だったら東京の真ん中に原発を建てたらいいのではないですか」と聞いた。「東京は地盤が弱いので原発は建てられません。原発は岩盤の上に建てることになっています。それに東京に原発を建てようとしても、土地買収費用だけで無理でしょう。ここは以前は何も無い場所でした。県が産業のない地域を有効利用・活性化しようと東京電力を誘致したのです」との答えが返ってきた。

 最後にこの原発で最近トラブルの有無を聞いた。「公表されている以外のトラブルはありませんか」「約20年前から、トラブルで停止することはほとんどありません。強いて言えば5号機なのですが、これは現在停止中です。この詳細については報道発表し、ホームページにも掲載されています。具体的には非常用の弁に不具合がありました。修理は終わっているのですが、一連の不祥事で再開には至っておりません。申し訳ございません」。

 実は、これらわたしのほとんどの質疑について、東京電力のホームページ上にその応答が掲載されている。不祥事について、同じ公開かつ公共企業であるはずのテレビ局よりも格段に情報開示が進んでおり、公開されていない疑問に対しても真摯(しんし)な態度で応答してくれる。あるある事件では社長の不祥事をひた隠しにし、ADHD患者への誤解を生む放送をしておきながら自らの非を認めないフジテレビとは大違いだ。

 見学が終わり、お礼を言って施設を出ようとすると、説明してくれた方が玄関まで見送ってくれ、「道中、お気をつけて。ありがとうございました」と言って深々とお辞儀をしてくれた。その姿を見ているとなんだか複雑な気持ちになった。この原発で働く人のほとんどが地元の人々だ。失礼だが、原発以外あたりには何もない。案内のおねえさんは「地元にいたいので、ここに就職させてもらいました。この発電所が無かったら、今のようにここで暮らせなかったと思います」と話してくれた。

 嫌な言い方だが、原発の危険性の見返りに東電に地元での生活を保障してもらっているわけだ。わたしは原発関係はまったくの素人なので、原発の必要性やその経済的効果についてはよく分からない。ただ、一つだけ理不尽が理解できる。この寒村で生まれた電気が都会の不必要な冷暖房はおろか、歓楽街のけばけばしいネオンに浪費されているということを。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小田 光康

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六ヶ所村  風力発電  原子炉  サクラ  津波  
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