「ウソ記事」が話題になっている

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   皆が楽しみにしているエイプリルフールの「ウソ記事」だが、今年は著名ブロガーのある「釣り記事」が注目された。朝日新聞の記事をきっかけに発生した、いわゆる「従軍慰安婦問題」で、「記事を書いた記者を解雇し、秋山社長も責任を取って辞任する」という、社告の形を取った記事だ。コメント欄は、「これが本当だったら良いのに」という声であふれている。

朝日新聞の社告の内容を引用する、という形式

   今回「釣り記事」を仕掛けたのは、池田信夫さん。NHKでディレクターとして報道番組の制作に携わった後93年に退職。その後は、情報通信分野を中心に論客として活躍していることで知られ、自らのブログでもウィキペディアの編集方針の問題点を指摘するなど、ブロガーとしても有名だ。現在の肩書きは「上武大学大学院教授」。

   池田さんは2007年4月1日に日付が変わった直後に「慰安婦問題をめぐる本社の報道について」という記事を掲載。

「4月1日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)の早版に、次のような社告が出ている。日本の良心を代表する新聞社の社長らしい潔い進退だ」

   という書き出しで、秋山耿太郎社長名で出されたとされる朝日新聞の社告の内容を引用する、という形式だ。その内容を、ざっとまとめると、こうだ。

「朝日新聞は1992年に軍が慰安所の設置を指示した事実があった、と報じた。この記事自体は正確だった。しかし、その『解説』の部分で、『朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した』という記述に事実誤認があった。これをきっかけに、官房長官が談話を出して謝罪することになった。海外メディアからも批判を浴びるきっかけにもなった。慰安婦が強制連行されたかどうかは本質的な問題ではないが、事実関係について誤解を招いた責任は免れない」

   そして、以下の文章で締めくくられる。

「とりわけ海外メディアに誤解が広がっていることについての責任の重大性を考え、ここに当該記事を執筆した植村記者を諭旨解雇処分とするとともに、私が代表取締役社長を辞すことによって、全世界の報道機関に事実関係の再検証を促す次第です」

「朝日批判」コメントが圧倒的

   この直後から

「こういう形で決着を付けるとは全く思ってもいませんでした。素直に潔いと思います」
「今更何を言おうと信頼できません」

   といった「マジレス」とも取れるコメントが相次いで書き込まれたが、池田さんが

「通りがかりの人が誤解するといけないので、念のため日付をよく見てください」

   と、エイプリルフール用の「ネタ」であることを明かすと、若干風向きが変わったようで、

「これが現実だったらどんなにいいことでしょうか」
「ホントのコトにしちまおうぜ。あれ、何でまだ社長やってんの?って。」

   と、「朝日批判」の書き込みが相次いだ。これを受けて、池田さん自身も、コメント欄で

「半日で70もコメントが来ましたが、2つぐらいしか削除していません。つまり、ここに出ているのが朝日新聞に対する世間の見方をそのままあらわしているわけです。もちろんバイアスはあると思いますが、それにしても朝日を擁護する意見が皆無だというのは深刻です。この慰安婦問題が、朝日新聞の信用を大きく傷つけていることは明らかです」

   と返答している。

   池田さんは、いわゆる慰安婦問題について「海外メディアは事実認識がずさんだ」として、海外に「正しい」情報が伝わっていないことを問題視。慰安婦についての英語の情報源を提供するブログを立ち上げるなどしている。今回の「ウソ記事」も、慰安婦問題の発端になった朝日新聞の報道が許せなかったことが背景にあると言えそうだ。