【TrendDoor】あの煙突を目指して。心を解き放つ古きよき伝統に浸ろう!!
 「仕事や特別なことは一切しない」「極力人と会わない」。
そんな休日を月に1度は作っている。街をぶらつき昼寝と読書を繰り返し、腹が減ったら何かをつまむ。慌しい毎日の連続なので、何もしないことが特別に思えるのはうれしいような哀しいような……。
 そして一日のラストは銭湯。まだ薄明るい路地を入浴セット片手に歩いているだけでワクワクするし、ある意味贅沢な感じがするから不思議だ。
 番台で料金を払いのれんをくぐると、そこにあるのは一昔前のマッサージチェア。目の前には昭和の世界が広がる。弾む気持ち抑えて体を洗い、ゆっくりと浴槽に入って全身を伸ばしながら目を閉じていると、日頃の疲れが一気に吹き飛ぶようだ。そんなお手軽リフレッシュスポットの銭湯が年々姿を消しつつある。

 東京都浴場組合によると、東京に銭湯が誕生したのは1591年。蒸し風呂で始まった銭湯は、江戸時代に入浴の形となって広く庶民に広まったという。ちなみに現在のような洗い場にカランが設置されたのは昭和2年とのこと。近年は利用者が減少し全国的に廃業が相次いでいる。
 東京都を例に取ると、1995年に1546軒あった銭湯は2005年には1025軒に減り(東京都生活文化局調べ)、現在ではついに1000軒を割ってしまったらしい。
 また、利用者の減少と燃料の高騰により、東京都は昨年6月6年ぶりに入浴料を値上げした。入浴料(大人)の最高額は東京と神奈川の430円、最も安いのは山形、長崎、大分、宮崎の300円となっている(データは2006年12月28日全国公衆浴場組合。*長崎は280円だが洗髪代が別途50円かかる)。
銭湯離れが料金の値上げへ、値上げはさらなる利用者減を生む。この悪循環が結果的に銭湯を廃業に追いやっているのだろう。

 銭湯離れの最大の原因は自家風呂の普及。同時にマンションやアパートなどはユニットバスも多く、シャワーが入浴の役目を果たしてしまっている。また生活が不規則な人にとって、営業時間が決まっている銭湯が不便なのも事実だ。欧米化された日本人のライフスタイルには、銭湯はもはやそぐわないのかもしれない。
それでも、大きな浴槽に身を浮かべることで得られる開放感や、温浴効果は誰でも知っているはず。理屈抜きに手足を伸ばして湯に浸かるだけで、疲れや日常を忘れさてくれる。
たまには気分転換をかねて、銭湯に行ってみるのもいいかもしれない。1人でも、グループでも。時間を決めてカップルで楽しむのもおすすめ。湯上りのビールもまた格別だ。大きな煙突の下には、ちょっとの贅沢と非日常の空間が広がっている。
拓蔵

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