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二つの資料館が語る戦争の異なる実相――ひめゆりの塔を訪ねて(上)

2007年03月30日09時32分 / 提供:PJ

pj
二つの資料館が語る戦争の異なる実相――ひめゆりの塔を訪ねて(上)
ひめゆり平和祈念館正門、3月25日。(撮影:野田博明) 写真一覧(3件)
3月23日、わたしは初めて沖縄の地を訪れた。そしてこの日が奇しくも62年前、米軍が那覇西方約25kmに浮かぶ慶良間(けらま)列島へ空襲と艦砲射撃を開始、沖縄本島への上陸作戦を本格的に始動させた日であったことをある資料館の展示で知ることになった。

 1945年3月23日から6月23日の沖縄陥落までの3カ月間におよぶ、あまりにも痛ましく凄惨を極める沖縄戦の火蓋が切って落とされた日にわたしが初めてその地に降り立ったことに、この旅の目的をその人々たちが知りそのように導いてくれたのではないかと感じ、それを知ったときには粛然たる気持ちになった。そして遠く62年前の「その日」に思いをはせた。

 慶良間への米軍の攻撃が始まった23日深夜、沖縄本島の沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒222名と教師18人に、那覇市南部の南風原(はえばる)にある陸軍病院への動員命令が下された。

 わたしは「ひめゆりの塔」という有名な映画を観たこともなく、「ひめゆり学徒」という学徒動員された女学生たちが戦禍に巻き込まれ尊い生命を数多く失った悲劇があったというくらいのことを知るのみであった。

 そうしたわたしを沖縄に向かわせたのは昨夏に亡くなった敬愛するN氏(昭和7年生まれ)が、日本人として「ひめゆりの塔」には必ず行くべきであると生前、強く言われたことが、遺言としてわたしの頭に残っていたことが大きい。

 N氏は、現役時代はビジネス界で冷徹な論客として知られた存在であったが、今にして想い帰すと、2000年7月に開催された九州・沖縄サミット直後に沖縄を訪ねられた際に「ひめゆりの塔」にも立ち寄り、祈念された。そのころからN氏は先の大戦についてそれまで以上に思索を深めていかれたように思えてならない。

 亡くなる直前まで先の大戦の非道、戦争の悲惨さを語り継ぐのが自分の残された人生で行うべきミッションであるとよく語るようになられたのもその後あたりからであった。そして現に亡くなる直前に掲載された某大手新聞のインタビューでも同趣旨のことを述べておられた。

 そのN氏から一昨年11月であったが、靖国神社へ同行しないかと誘われた。境内に建てられている「遊就館」という資料館を見学し、そのなかで放映されているビデオを観る目的のためであった。「遊就館」は各国の大使や公使が着任するとその多くの人たちが訪れる場所であり、逆に日本人のほとんどの人がその展示内容を知らないと、ある外務省関係者から教えられたためであった。

 そのときわたしは「遊就館」なるものが資料館の名前であることすら知らなかった。わたしが知っているのは、幼年時代に遊びに行った外に雨ざらしの状態で人間魚雷回天が置かれた木造の小さな資料館というよりも小屋と表現した方が的確な建物の印象しか記憶に残っていなかったのである。

 その資料館「遊就館」の20室におよぶブースに並べられた展示物やパネルに目を通し一巡したあとで、新館2階のりっぱな映像ホール(収容人員70名余)で毎日6回上映されている「私たちは忘れない!」という50分におよぶビデオを観た。そのビデオを観終わったころには、先の戦争は止むを得なかったとの思いに駆られてくる。

 この資料館では先の大戦のことをかたくなに「大東亜戦争」と呼称し、「大東亜戦争は自存自衛のいくさ」であり、戦争のやむなきに至ったのは「米大統領ルーズベルトの陰謀とも言われている」とも説明し、資料館の出口を出るころには大東亜戦争は止むを得ざる戦争であり日本人としては凛然として起ち上がった戦いであるとの思いにさせられてしまう、その情宣の巧みさには正直、驚きを隠せなかった。

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 野田 博明

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