【ファンキー通信 昭和編】「わたし、キレイ?」- 口裂け女が広まった理由

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 下校途中、見知らぬ女に声をかけられた。口元をマスクで覆ったその女性は、執拗に「私、キレイ?」と問いかけてくる。とりあえず「キレイです」と答えると、彼女は「これでも?」と言いながらマスクを取り去った。マスクの下に現れたのは、耳元まで大きく裂けた口だった・・・ギャー!!

 以上が有名な都市伝説「口裂け女」のスタンダードな説である。これにさまざまなオプションがついた説も存在し、口裂け女が赤いコートを着ているパターンもあれば、白いコートを着ているパターンもある。口元を覆っているマスクの色は“白”が一般的であるが、なかには「口から流れた血によって、茶色くなっている」と唱える者もいたらしい。

 また、口裂け女への対策法も、流布した時代・地域によって変化が見られる。たとえばウワサが広まり出した70年代後半の京都では、“問いかけに「ふつう」と答えなければ、鎌で切り殺される”とされていた。しかし、筆者が小学生だった90年代中盤(神奈川県)には、“何を言っても殺される”と広められており、助かる方法としては“ポマードと3回唱える”、“ベッコウアメをあげる”などが挙げられていた。それも00年頃には、“「まぁまぁです」と答えれば、殺されない”に変化していたというのだから、驚きだ。

 なぜ口裂け女の話は日本中に浸透し、しかも二転三転しながら語り継がれているのか? 某大学で民俗学の研究をしているT教授は、こう語る。

 「もっとも関心を持つ層が“子ども”であることが、重要なポイントでしょう。どこからか仕入れた『口裂け女』の話に恐怖を覚えた子どもは、さも自分の周りで起こったことのように別の子どもに話す。それを聞いた子どもも同じく恐怖した場合、2人の間には“同じ気持ちをわかち合っている”という共有感が生まれます。また、話した子どもには“相手の子を震撼させるような情報を提供した”という優越感も発生する。そういった心理的作用があって、『口裂け女』の話は全国に拡大していったのだと思います。内容が微妙に変化しているのは、誰かが作為的に手を加えているからでしょう」(T教授)

 なるほど。ちなみにこの口裂け女、最近はお隣・韓国にまで上陸しているという話を聞いたのですが・・・?

 「大きく騒がれたのは04年ですが、83年からすでに語られてはいたそうです。韓国では、『赤いマスクの女』として恐れおののかれているみたいです」(同)

 服を変え、マスクを変え、さらには名前まで変えて人々に恐怖を与えている「口裂け女」。あまりのワールドワイドな活躍ぶりに、ビックリです。(安田明洋/verb)