チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督が、若手育成における独自の理論を展開。アーセナルのアーセン・ベンゲルが打ち出す育成方針に“ダメ出し”するほどの自信を見せた。

 ロシア人富豪のロマン・アブラモビッチがオーナーに就任して以来、巨額の資金を投じて戦力補強を進めてきたチェルシー。しかし、今冬の移籍マーケットでは、新戦力の獲得を見送るなど、クラブの補強方針を若手育成モードにシフトチェンジしつつある。その方針転換に手ごたえを感じていると語るモウリーニョは、リーグカップで「若手中心で戦う」とのポリシーを貫き通し、結局決勝戦でチェルシーに敗れたアーセナルのフランス人監督を暗に批判しながら、MFラッサナ・ディアラの台頭を例に、独自の若手育成論を語った。

「リーグカップでたまにプレーするか、それともラッサナ・ディアラのようになるか。選手は、どちらを選ぶだろう? ディアラはチャンスが巡ってくるまで、じっと耐え続けた。その間も、ハードワークを続けながらね。そして、ようやくポジションを手にし、それ以来スタメンに定着している。いまや彼は、リーグカップ要員などではなく、チャンピオンズ・リーグでもスタメンを張る選手に成長した。選手にとっては、チャンスを小出しに与えるよりも、完璧に準備を整えさせてから、試合に出してやるほうがいい。その証拠がディアラなんだ。無名だった彼が、いまやチェルシーに欠かせない選手に成長したのだから」

 さらにモウリーニョは、現在リザーブリーグで凌ぎを削る若手選手の中に、チェルシーの将来を担う人材を見出したようだ。

「リザーブには、クオリティの高い選手が揃っているよ。右サイドバックや、センターバックにいい選手がいるんだ。ただ、プレミアレベルで戦うには、まだ物足りないね。チェルシーのトップチームでプレーできるレベルまで育てるのは、生半可なことじゃない。来シーズンになれば、FWのベン・サハーあたりがトップチームに上がってくるだろう。それ以外にも、2人くらいは使える選手がいるかもしれない」

 巨額の赤字を計上し続けるチームの経営戦略として、若手育成路線を打ち出しつつあるチェルシー。リーグ連覇の偉業を成し遂げながら、巨額の資金をつぎ込む戦力補強が、正当な評価を妨げてきたと主張するモウリーニョにとっては、願ってもない方針転換と言えるかもしれない。