サイバーステップ 佐藤類社長
 「同時接続15人。ひと月の売上が3万5千円。どうなることかと思いました」と回顧する佐藤氏。現在6カ国にライセンスされ、約2000万人のユーザー数を誇るオンラインバトルゲーム「ゲットアンプド」。その運命を開いたきっかけは韓国へのライセンス供給だった。佐藤氏の講演はサイバーステップの成長の歴史。それはベンチャー企業が成功するためのヒントに満ちていた。

 サイバーステップの創業は2000年4月。オンラインゲームやオンラインゲームの開発環境を作る事業のために設立された。第1作の「ゲットアンプド」を翌年の8月に完成させて、ニフティやSo-netのゲームコーナーに供給した。しかし、なかなか実績を上げられなかった。これが冒頭の「同時接続15人。ひと月の売上が3万5千円」の時代であった。

 このままではいけないと、佐藤氏は新たな提携先を開拓し始める。ゲームポータルやネットカフェへ売り込んでいくなか、渋谷のネットカフェで韓国のWindySoftの社長の目にとまり、韓国向けのライセンス契約を締結した。ゲットアンプドは韓国で大ヒットし、その成功を見て他国のゲームプロバイダーもゲットアンプドを採用した。2002年は韓国のほかに中国上海盛大社とライセンスを締結。2003年には日本のガンホーと契約。2004年にはタイ・台湾・インドの会社とも契約する。そしてついに日本での再チャレンジに着手。2006年1月でガンホーとの契約を終了したのち、日本国内向けタイトル「ゲットアンプドR」の開発に着手。同年5月から自社運営方式に転換してベータテストを開始し、2月26日に正式サービスをスタートさせる。それに先駆けて2月10日には韓国で世界大会を開催した。

 サイバーステップがオンラインゲームに特化した開発を始めたきっかけは、少数精鋭スタイルの会社にとって、家庭用ゲームよりもオンラインゲームのほうが手軽で魅力的だったからだ。オンラインゲームと家庭用ゲームを比較すると、開発費用に関してはどちらも高額である。しかし、家庭用ゲームは開発機材やハードメーカーへのライセンス料などの比率が高くなってしまう。オンラインゲームの場合、家庭用ゲームほどの完成度が無くてもサービスインでき、運営しながら開発しつづけられる。運営コストに関してはオンラインゲームのほうが高い。しかし、課金制度の採用によって、収益期間は家庭用ゲームよりも長くできる。家庭用ゲームは運営費用が要らない代わりに、売り切りのため商品自体が短命になる傾向があり、収穫期間が短い。

 収益の構造は家庭用ゲームとオンラインゲームでは正反対のグラフになる。家庭用ゲームの場合、発売日の売上が最も多く、それ以降は勢いを失っていく。しかしオンラインゲームの場合は運営開始後もユーザーは増えていく。飽きのこない、長い時間遊べるタイトルを開発すれば、家庭用ゲームよりもオンラインゲームのほうが収益力が高いのだ。

 ただし、オンラインゲームがすべて成功しやすいわけではない。家庭用ゲームとは違い、固定的な運営費用が発生するからだ。固定費の主な内訳はサーバ保守費用、回線使用料、人件費、販促費、課金決済サービスの手数料である。ゲットアンプドのデビュー時のように、同時接続15人、売上3万5000円ではお話にならない。オンラインゲームが利益を生み出すには、損益分岐点を超えてからもユーザー数が増えていくことが大切だ。要するに、コストよりも多くの売上を確保していくことが必要である。

 これを逆に捕らえると、売上よりもコストを小さくしていく工夫も必要だ。そこで、もっとも大きなコストとなるゲーム開発費を考える。国ごとの特性を考えると、韓国ではたくさんのオンラインゲームがあるため、コミュニティとして発展できるという前提のほかに、なにかライバルとは違う新しい要素を用意する必要がある。欧米では戦略性とリアル志向が重視される。このリアル志向という部分は物凄くコストがかかる。そのため、アメリカではゲーム制作に巨額の投資をして、世界規模で売りさばくというハリウッドスタイルのゲーム作りがメインになってしまった。一方、日本ではゲーム性が重視される。ゲームの楽しさ、細部までこだわった丁寧な作りが求められている。