ゲーマー用ヘッドホン「SteelSound 4H」
 「Icemat」や「Steelpad」などのゲーマー用マウスパッドを手がけるソフトトレーディングが、次に注目した分野はゲーマー用ヘッドホンだった。マウスパッドの質にこだわったソフトトレーディングのことだから、ゲーマー用と言うには理由がある。ソフトトレーディングのビンセント氏によると、「ゲームで勝つために重要な音がよく聞こえるように、ゲームの勝敗に関係ない音は聞こえないように作っている」そうだ。「だから音楽を聞く人、音質にこだわる人にはオススメできません」という。いったいどんな音になるのか興味深い。そこで「SteelSound 4H」をお借りして試した。

 ただ、初めにお断りしておかなくてはいけない。今回の被験者である私は音楽や音質にこだわる人間ではない。いま使っているヘッドホンは大手メーカー製とはいえ、普及価格帯の3000円くらいの代物だ。箱には音質にこだわったと書いてあった気がするけれど、値段なりの性能だろう。私もそれで満足している。だからオーディオ雑誌の批評家のような分析はできない。ただし、本当に違いがあるなら、私のような人間にも解るはずだ。妙な例えだが、都会の蕎麦屋で一番安いざる蕎麦と、信州の手打ち蕎麦屋が出す1000円以上の十割蕎麦の違いを知ったときは本当に驚いた。自分は食通でも何でもないけれど、蕎麦の香りとはこういうものかと感動した。その経験以来、良いものは素人にも違いがわかるはずだと思う。いや、それなりのお金を取るからにはそうあるべきだろう。

 まず「音楽に適さない」という話がいかほどのものか確かめたい。ゲームに適したヘッドホンというだけではピンと来ない人も、「音楽に不適」とまで言われたら驚く。ヘッドホンとは本来、音楽を聞くための道具だ。ゲーマー用ヘッドホンは音楽を否定してしまうのか。PCで音楽を聴きながら作業したり、DVD映画を鑑賞したりする人もいるだろう。そんな人たちはヘッドホンの音質にもこだわっているはず。ゲーマー用ヘッドホンは、そんな“音質へのこだわり”を否定してしまうのか。

 ビンセント氏が説明してくれた「ゲーム用」は、カウンターストライクのような射撃戦ゲームを指している。「SteelSound 4H」の箱にはプロゲーマーと共同開発と書いてあるが、このプロゲーマーは「Steelpad」と同様にカウンターストライクのプレーヤーたちである。ビンセント氏によると「爆発音の中でも足音や跳弾の位置が解るように、重低音を抑え、足音や銃声、跳弾の音域を強調しているそうだ。音楽用のヘッドホンではすべての音域においてよく聞こえるように、イコライザーで言うとフラットになるように設計されている。しかし「SteelSound」シリーズは低音を抑え、高音を上げる。イコライザーでは右上がりになるようセッティングされているという。

 「SteelSound 4H」を国内通販サイトで調べたら8000円前後だった。比較対象となるヘッドホンは私が普段使っている3000円のマイク付きヘッドホンだ。さて、音楽を聴いてみよう。趣味や年代についてはご笑納いただくとして、まずはJPOP。寺尾聡さんのReflectionsだ。私にとっての寺尾さんは石原軍団の刑事役だが、元々はミュージシャン。「ルビーの指輪」は30代以上の人なら誰もが知っている国民的大ヒット曲で、寺尾聡さんの低い声に魅力がある。それが損なわれたら辛い。しかし、聴き比べた率直な感想は「SteelSound 4H」のほうが全体的に深みと迫力があり、いい音だということだ。値段が倍以上違うから良い素材を使っているだろうし、密閉型だから音が逃げないということもある。やっぱり高いヘッドホンは良いなあ、と思う。

 いやまて、それは今回の実験ではマズイ。「SteelSound 4H」は音楽に不適のはずが、音楽も良い、という話になってしまう。音質にこだわる人はオーケストラでヘッドホンを評価するのかも、ということで、次のCDは加古隆さんの「パリは燃えているか」。このタイトルにピンと来ない人でも、NHKスペシャル「映像の世紀」のテーマ曲と言えばわかる人も多いだろう。弦楽器の低音がたくさん使われているけれど「SteelSound 4H」はしっかり聞こえた。聞き比べてみると、低音よりも、高音を強調しているのかな、という気がする。しかし、わざわざ聞き比べなければ意識しない程度のことだ。話が違う。