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「千の風」になりたい、わたし。

2007年02月06日12時02分 / 提供:PJ

pj
「千の風」になりたい、わたし。
(撮影・製作:今藤泰資)
秋川雅史という歌手の名を、わたしは知らなかった。もちろん、この歌が新井満という人の思い入れ深い翻訳によるものなど知るよしもない。暮れから正月にかけ、悪性の風邪で数日寝込んだある日、NHKで「千の風になって」を聴いた。歌手もいいが、歌詞がまたいい。そのいわれを知って、ますますこの歌に傾注した。

 数日後、久しぶりにCDを買いに走った。レンタルのコーナーでは貸し出し中のものが多く、カバーの汚れが目立つ。なるほど、人気があるらしい。帰宅早々、「威風堂々」という勇ましいタイトルのCDをパソコンにダウンロード、以来毎日聴いている。いや、聴きまくり、歌いまくっているという方が正解かもしれない。

 退職後2年間、近くの大学に通学、修士論文を書き上げた。長時間、デスクトップに向かう時間が増えたそのころから、急に声が出なくなった。掛かりつけの医師から、「なんでもありませんよ」と軽くあしらわれたが、 自分ではボリュームのある声だと思い込んでいたからショックだった。加齢だから仕方がないかと諦めた。

 ここ数日、CD「千の風になって」を歌いまくったせいか、不思議な効果が現れた。発声が元に戻ったのだ。ボリューム一杯で歌う「千の風」は人に聞かせるものではないが、自分自身へのいやしにはなっている。そう思ったから、今度はネットで買ったシングル盤を長男と長女宅へ送った。娘は折りしも誕生日、単純に「ありがとう」とメールを寄越した。息子は「あれ、この歌はもしや…?」とメールで聞いてきた。「そのとおり、墓の前で泣くことはない」と返した。

 子どものころからわたしは死者を見続けてきた。戦時中、B29爆撃機での死者は積み木状に放置されていた。戦後すぐ、赤痢で死んだ父の遺体はただちに荼毘に付され、数人の家族で骨を拾った。数年後、隣室で亡くなった縁者の遺体はわたしに襲ってくるようで怖かった。結核で闘病生活を続けた13歳の時、わたしは明らかに死の一歩手前にいた。毎夜、熱にうなされ、夢の中をさまよった。母の亡くなった夜は兄と二人、遺体の傍で寝た。一晩中、兄の腕時計の音が耳について眠れなかった。

 わたしは長い間、死と向き合ってきたようだ。この歌を聴いてから、またそう考えるようになった。わたしは「千の風」になりたい。千の風になって、愛する孫たちの上をさまよいたいと思った。いずれは果てるこの身、この歌のように気持ちよく果てたいものと、宗教家の心境になっているが、「威風」という風と、「千の風」の関係は、わたしにはわからない。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資

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