PCメーカーや家電量販店は「ビスタ」の発売に期待を寄せる

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   米マイクロソフト(MS)は、新しいパソコン(PC)用基本ソフト(OS)「ウィンドウズビスタ」の個人ユーザー版を、2007年1月30日に全世界で発売した。これに合わせて日本国内でも、内外のPCメーカー17社が、ビスタ搭載の新製品を同日から順次、発売した。新OSの発表は01年末の「ウィンドウズXP」以来 5年ぶりで、PCメーカーや家電量販店の期待は大きい。ただ「これまでのOSで性能は十分」との声も多く、MSやPCメーカーの期待通り、販売不振が続く国内PC市場活性化の起爆剤となるかは不透明だ。

AV関連の娯楽機能を大幅強化したのが特徴

   マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長は1月15日の会見で「1月30日からPCは新しい時代に突入する。ビスタは日本のPC市場に全く新しい成長の波をもたらすだろう」と大見栄を切った。ビスタは高速・大容量のブロードバンド時代に対応してインターネット経由の動画視聴や 音楽配信、デジタルカメラの画像編集など、AV(音響・映像)関連の娯楽機能を大幅に強化したのが特徴。個人情報漏えい防止のセキュリティ機能も強化 した。

   PCメーカー各社も「ビスタ」の特徴を踏まえ、新製品ではAV関連の性能アップを競う。東芝は大容量の次世代DVD(HD-DVD)の記 録・再生ができる駆動装置を搭載した製品を投入する。富士通ソニーは、専用モニターを持たず、大画面薄型テレビを再生モニターとして使う箱(円筒)型の 製品の投入を決めた。また大半のメーカーが、地上デジタル放送の受信機能を搭載。NECは「電源を入れて2秒でテレビが観られる」と家電並みの利便性をア ピールしている。

10月以降は買い控えも加わって深刻な売れ行き不振

   調査会社BCNの調べによると、国内PC市場は06年2月以降、出荷金額で前年比10%を超えるマイナスが続き、10月以降は特に「ビスタ」発売待ちの買い控えも加わって、マイナス幅が25%以上に広がる深刻な売れ行き不振に陥っている。それだけにPCメーカーは「待ちに待った発売。市場活性化 につながる」(東芝・能仲久嗣常務)と期待の声が専らだ。

   ただ、市場では発売待ちの深夜行列ができたウィンドウズ95や同98の時のような盛り上がりは乏しい。BCNの田中繁広取締役は「現在のXPからビスタ搭載のPCに買い換えてどういうメリットがあるか、消費者に浸透し切っていない。PC市場の低迷には薄型テレビなど他のデジタル家電に需要が流れている構造問題もある」と話す。
   同日発表した主要メーカーのビスタ搭載PCの価格は、ビスタの性能を発揮するため半導体の搭載量を増やしたこともあって、ノート型の売れ筋モデルで19万円〜19万5,000円程度と、従来より1万円程度高くなる見通しで、消費者がどう反応するか、注目される。