従軍慰安婦問題を取り上げたNHK番組をめぐり、政治的圧力で放送直前に内容を改変され精神的苦痛を受けたとして、取材を受けた市民団体と共同代表がNHKと制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長はNHKと2社の責任を認め、総額200万円の支払いを命じた。

 問題となったのは、NHKが6年前に放送した従軍慰安婦問題を民間人が“裁く”「女性国際戦犯法廷」の番組内容。取材に協力した市民団体「バウネットジャパン」が、国会議員らの圧力で勝手に番組内容を改変されたとして、NHKと制作会社2社にあわせて4000万円の損害賠償を求めていた。

 一審の東京地裁は04年、取材される側の信頼を侵害したとして制作会社にだけ支払いを命じた。控訴審では、政治家の圧力により番組が改変されたかどうかが、新たな焦点として浮上していた。

 判決は「NHKは、番組制作担当者の制作方針を離れてまで国会議員などの発言を必要以上に忖度(そんたく)し、当たり障りのないように番組を改変した」と指摘。NHKは変更についてバウネット側に説明する必要があったのにしなかったとして、NHKらに200万円を支払うよう命じた。

 一方、「政治家が番組内容に直接介入した」との原告の主張は退けた。

 判決の主文が言い渡されると、原告団は顔を見合わせ、確認するように裁判長の言葉を聞き入った。傍聴席からは押し殺した声で「よし」と発する人も。閉廷後は、法廷前の廊下で支持者らと歓喜と祝福に包まれた。【了】