企業犯罪とメディア(下)、「悪の駆逐」がメディアの使命か。
2007年01月27日09時40分 / 提供:PJ
(上)からのつづき。繰り返される企業犯罪。だが「事件と人権」を関係づけるメディアは少ない。人民裁判を見るような狂気の報道は視聴者の関心を高める。不二家の事件では、「納豆にガが混入」という数年前の話まで伝えられた。記事にはことの詳細が明確ではない。ほかでもない、風説の流布の可能性もある。加害者の不二家側では抗弁のしようがない。抗弁したらまさしく思うツボ。また記事になるだけだ。
ヒューザー事件は人命に関わる不安を与えた。パロマ事件では死者が出た。不二家では法令違反や安心にあたいしない事業展開があったが、一人の被害者も出していない。伝統ある「ペコちゃん」マークを愛するならこれ以上追求するべきではない。失職する従業員、閉店に追い込まれたチェーン店。彼らの生活権は誰が保証するのか。愚かなメディアの報道に便乗して悪を追求する声は高くなるばかり。「一犬虚に吠えて、百犬実に吠える」とはこのこと。今一度、わが身を振り返るがいい。なんらの法令違反もしなかった人間がいるのか。裁判官気取りのメディア、追随する愚衆。これが日本人の心根なのであろうか、情けない。
東横イン事件から数カ月後、奇妙なリアクションが経済雑誌で見受けられた。西田憲正社長(当時)の「多少スピード違反をしましてな」という発言には、経営者の素直さが表現されているというのだ。法律の遵守も大切だが、そこには低額で良好なサービスを提供するために、「余分な設備は不要だった」との思いがにじむ。言うまでもないがPJ、ルール違反を擁護する立場にはない。経営者の事業家精神を確立せよと言いたいだけである。
西田氏は、「アナタもスピード違反したことがあるでしょ?」と言いたかったのだ。責は当然社長自身にある。昨今の風潮のなかでは、言えば言うほど叩かれるだけ。危機管理への認識不足があっても、内心この言葉に納得する経営者も多いはずだ。『あるある大事典』での関西テレビと日本テレワークの暴走とて同じ状況。視聴者のインタレストを満足させることしか考えていない。データの改ざんなど仕方がなかったとウラの声が聞こえてきそうだ。アパホテルの耐震構造事件でも同様の弁明。違いがあるとすれば、公共電波を駆使できる手段を持つか持たないかの差でしかない。
評論家大宅壮一氏(1900ー1970)は1956年、飛躍的なテレビの普及に伴う状況を「一億総白痴化」と表現、流行語となった。現代のマスメディアの横暴と、報道の低俗化はまさに大宅氏の言葉どおり。先見の明は的中したようである。アメリカでも、元ワシントンポストの記者だったカール・バーンスタインは「テレビによる馬鹿文化“idiot culture"」(マルチメディア/インターネット事典)と呼ぶ。大仰にいえば、メディアと読者視聴者の粗末な関係は、世界的な傾向なのかもしれない。
「法令遵守が日本を滅ぼす」の著者、郷原信郎氏は元東京地検特捜部や長崎地検次席検事などを務めた法律学者だ。だが氏は、ルールがあれば社会が制御できるなど現実的でないと強調する。「古い牛乳を混入した結果、食中毒がおこり、子会社では牛肉擬装事件を起こす。ブランドは地に落ち、雪印食品は廃業せざるを得なかった」(産経新聞・1月24日)と言い、冷静な報道を期待する。コンブライアン遵守は現代社会が企業経営に求める最大の要求。同時にそれを増幅させるのがメディア。その結果、企業社会が崩壊するというのだ。
25日、「東横イン事件」一周年の取材に出かけたPJ、茨城県内の関東鉄道車内で「マナーを守って快適に」というポスターを見つけた。公共の場で化粧をする愚。迷惑行為と思わないらしい座席の座り方。雑音、あたりを憚らない大声の携帯電話…。鉄道会社にとっては顧客の迷惑を排除したい気持ちで一杯なのだ。だがこれらは社会生活を営む人間として持つべき最低のマナー。家庭内でしつけられるべき筋合いのものだ。マナー違反を繰り返す愚かな乗客にはポスターは目に入らない。同様、ルールを強化し、メディアが執拗に報道しても「反社会行為」はなくならない。
雪印乳業と不二家、東横インとアパホテル。事件の内容に差はあっても、同業者の罪に敏感であったはず。それでも企業犯罪は繰り返され、読者や視聴者は愚衆と化し、人民裁判の手先になる。『「安心」求める消費者』は産経新聞で読んだ。マスコミ関係者へ向けて話した郷原信郎氏の思考回路は極めてマトモである。だが、フジ産経グループの失態と、説明責任を果たせないマスメディア企業トップの思考回路は狂っている。報道従事者が、報道を忌避してどうする。彼らが、企業犯罪者へ「なぜそのような事件を起こしたのか」と、聞く権利も知る権利も担保されない。
「悪の駆逐」がメディアの使命ではない。追求すべきは経営者の感覚と事業スタンスなのである。「企業犯罪の加害者たち」と社員らを追求してはならない。職を奪ってもならない、幼子を路頭に迷わせてはならないのである。関西テレビ社員に対しても同様であるのは言うまでもない。【了】
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ヒューザー事件は人命に関わる不安を与えた。パロマ事件では死者が出た。不二家では法令違反や安心にあたいしない事業展開があったが、一人の被害者も出していない。伝統ある「ペコちゃん」マークを愛するならこれ以上追求するべきではない。失職する従業員、閉店に追い込まれたチェーン店。彼らの生活権は誰が保証するのか。愚かなメディアの報道に便乗して悪を追求する声は高くなるばかり。「一犬虚に吠えて、百犬実に吠える」とはこのこと。今一度、わが身を振り返るがいい。なんらの法令違反もしなかった人間がいるのか。裁判官気取りのメディア、追随する愚衆。これが日本人の心根なのであろうか、情けない。
東横イン事件から数カ月後、奇妙なリアクションが経済雑誌で見受けられた。西田憲正社長(当時)の「多少スピード違反をしましてな」という発言には、経営者の素直さが表現されているというのだ。法律の遵守も大切だが、そこには低額で良好なサービスを提供するために、「余分な設備は不要だった」との思いがにじむ。言うまでもないがPJ、ルール違反を擁護する立場にはない。経営者の事業家精神を確立せよと言いたいだけである。
西田氏は、「アナタもスピード違反したことがあるでしょ?」と言いたかったのだ。責は当然社長自身にある。昨今の風潮のなかでは、言えば言うほど叩かれるだけ。危機管理への認識不足があっても、内心この言葉に納得する経営者も多いはずだ。『あるある大事典』での関西テレビと日本テレワークの暴走とて同じ状況。視聴者のインタレストを満足させることしか考えていない。データの改ざんなど仕方がなかったとウラの声が聞こえてきそうだ。アパホテルの耐震構造事件でも同様の弁明。違いがあるとすれば、公共電波を駆使できる手段を持つか持たないかの差でしかない。
評論家大宅壮一氏(1900ー1970)は1956年、飛躍的なテレビの普及に伴う状況を「一億総白痴化」と表現、流行語となった。現代のマスメディアの横暴と、報道の低俗化はまさに大宅氏の言葉どおり。先見の明は的中したようである。アメリカでも、元ワシントンポストの記者だったカール・バーンスタインは「テレビによる馬鹿文化“idiot culture"」(マルチメディア/インターネット事典)と呼ぶ。大仰にいえば、メディアと読者視聴者の粗末な関係は、世界的な傾向なのかもしれない。
「法令遵守が日本を滅ぼす」の著者、郷原信郎氏は元東京地検特捜部や長崎地検次席検事などを務めた法律学者だ。だが氏は、ルールがあれば社会が制御できるなど現実的でないと強調する。「古い牛乳を混入した結果、食中毒がおこり、子会社では牛肉擬装事件を起こす。ブランドは地に落ち、雪印食品は廃業せざるを得なかった」(産経新聞・1月24日)と言い、冷静な報道を期待する。コンブライアン遵守は現代社会が企業経営に求める最大の要求。同時にそれを増幅させるのがメディア。その結果、企業社会が崩壊するというのだ。
25日、「東横イン事件」一周年の取材に出かけたPJ、茨城県内の関東鉄道車内で「マナーを守って快適に」というポスターを見つけた。公共の場で化粧をする愚。迷惑行為と思わないらしい座席の座り方。雑音、あたりを憚らない大声の携帯電話…。鉄道会社にとっては顧客の迷惑を排除したい気持ちで一杯なのだ。だがこれらは社会生活を営む人間として持つべき最低のマナー。家庭内でしつけられるべき筋合いのものだ。マナー違反を繰り返す愚かな乗客にはポスターは目に入らない。同様、ルールを強化し、メディアが執拗に報道しても「反社会行為」はなくならない。
雪印乳業と不二家、東横インとアパホテル。事件の内容に差はあっても、同業者の罪に敏感であったはず。それでも企業犯罪は繰り返され、読者や視聴者は愚衆と化し、人民裁判の手先になる。『「安心」求める消費者』は産経新聞で読んだ。マスコミ関係者へ向けて話した郷原信郎氏の思考回路は極めてマトモである。だが、フジ産経グループの失態と、説明責任を果たせないマスメディア企業トップの思考回路は狂っている。報道従事者が、報道を忌避してどうする。彼らが、企業犯罪者へ「なぜそのような事件を起こしたのか」と、聞く権利も知る権利も担保されない。
「悪の駆逐」がメディアの使命ではない。追求すべきは経営者の感覚と事業スタンスなのである。「企業犯罪の加害者たち」と社員らを追求してはならない。職を奪ってもならない、幼子を路頭に迷わせてはならないのである。関西テレビ社員に対しても同様であるのは言うまでもない。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資
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