21日、六本木にオープンした国立新美術館(撮影:東雲吾衣)

写真拡大 (全5枚)

東京・六本木。緑豊かな青山公園を抜けると、うねるような“異形”の建物が目の前に現れる。構想に30年を費やし、5館目の独立行政法人国立美術館として昨年夏に竣工した国立新美術館(林田英樹館長)だ。3万平方メートルの広大な敷地に建設された新たなアートの発信拠点が21日、オープンした。

 国際的建築家・黒川紀章氏がデザインした同美術館は、個性的な外観にとどまらず運営方法も独特だ。独自の作品収集を行わず、国内最大級の展示スペースに、企画展や公募展を呼び込む。また、来場者獲得のために、日本初上陸の三つ星フレンチレストランを招き入れるなど話題性を散りばめ、開館初年度は企画展2展のみで来場者22万人を目指す考えだ。開館記念展として、「20世紀美術探検隊―アーティストたちの三つの冒険物語―」が開催されている。

 一方、200メートルほど東に位置する旧防衛庁跡地。2007年春にオープンする「新しい街」・東京ミッドタウンにも「新サントリー美術館」が開館する。1975年に開館した旧美術館(東京・赤坂)を移転、館内に茶室を設けるなど、主に日本美術を取り扱う美術館として3月末のオープンを予定している。

 「新サントリー美術館」の開館により、徒歩圏内に六本木ヒルズの「森美術館」を含め3館の美術館がせめぎ合う“一大アート空間”となる六本木。地図上で三角形に結ばれる「六本木アート・トライアングル」が完成し、港区を文化・芸術振興地区と位置づけたい自治体と歩調を合わせ、年間300万人を呼び込みたい考えだ。

 しかし、近年の国立美術館の来場者数を見ると、全体の05年度実績では、常設展示のみの来場者は前年比4%減の25万5000人と前年割れ。企画展から流れた人数も含めた常設展の入場者も、既存の国立美術館4館のうち2館が前年を割りこんだ。

 「他の美術館と協力しながら、芸術の新たな拠点となるよう努力したい」――。林田館長は開館前日の祝賀パーティーのあいさつでこう語り、アート拠点・六本木の振興に意欲を示した。しかし、バブル崩壊後、来場者が半分以上に落ち込んだ「美術館離れ」を目の当たりにしたのは、ほかでもない、当時文化庁長官だった林田館長自身だ。魅力ある展覧会作りが、来場者を呼び込む第一条件。新美術館は、「企画展と公募展を運営していく独自のスタイルなので、他の美術館とは差別化できる」と自信を見せている。【了】