XPでは上段のように表示される漢字が、Vistaでは下段のように表示される

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   いよいよ一般向けの発売が迫った次世代OSの「Windows Vista」。2007年1月15日に行われた報道機関向けの発表会では、PCメーカー18社がVistaに対応した新製品を発表した。その一方で、従来のOSで作成した文字が、Vistaでは違った字体で表示される、という問題を指摘する声も挙がっている。マイクロソフト社も、対応するフォントを提供するなどの対策を講じてはいるが、細かい字体の違いを重視するユーザーは、注意が必要だ。

Vistaのフォントは新規格に対応したのだが

   製品には「地デジ対応チューナー」を搭載するなど「家電」としての機能を大幅に強化、セキュリティー面が向上するなど、様々な面が刷新されたVistaだが、刷新されたポイントのひとつが、日本語のフォント環境だ。従来は文字コードの制約のため、「印刷物で使われている漢字とPC上に表示される漢字が異なる」、つまり、「略字」の使用を余儀なくされていた、という問題が生じていた。Vistaのフォントは新規格に対応し、「正しい」文字で表示できるようになった、というのだ。今回の新規格では文部科学省の国語審議会が答申した「表外漢字字体表」が採用されており、これには、基本的には「旧字」の字体が取り入れられている。

   だが、単純に「旧字なので正しい漢字だ」とはいかないのが悩ましい問題なのだ。例えば、「辻」と入力したファイルをXP以前のOSで作成し、それをVistaで開くと、二点しんにゅうの旧字形の「つじ」に入れ替わってしまうのだ(画像参照)。人名などで一点しんにゅうの「『辻』さん」が正しい名前の表記、という人も少なくない。そのような人が二点しんにゅうの「『つじ』さん」と表記されたら、困惑するに違いない。

人名間違いで刷り直しにでもなったら

   この問題をDTP業界内の勉強会で早くから提起していた、フォント専門家の宮崎徹さん((株)ユービック代表)は、こう警告する。

「普通の文字化けなら、ぱっと見て気づくのですが、今回は何の『警告』もなく、知らないうちに字体が入れ替わっていることが問題なんです。WindowsDTPで印刷が終了した後、人名間違いで刷り直しにでもなったら、編集者にとっては大問題です」

   マイクロソフトでは、XPで作成した文書がVistaでも同じ字体で表示されるようなフォントを提供し、一応の対応策は講じているが、宮崎さんは「小手先の対応」と批判している。

   細かい字体の違いが重大な違いになってくる編集者にとっては、新OSの導入には、十分な注意が必要になりそうだ。