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【独女通信】独女に「自分磨き」単行本が売れている理由

【独女通信】独女に「自分磨き」単行本が売れている理由
PHP研究所の兼田将成さん。現在発行されている「自分磨き本」の売れ筋の一部を紹介してくれた。
最近の30代独身女性は「自分磨き」が大好きだ。エステやマッサージに通ってお肌を磨き、スポーツジムやエアロビクスで体を磨き、マナー教室やお茶、お花で教養を磨く。そんな時代を反映してか、書籍の売れ行きも「自分磨き本」のジャンルが大きく売れ行きを伸ばしている。

本屋の店頭にもコンビニのラックにも山ほど積まれている「自分磨き本」を見てみると、君島十和子著『「自分を磨く」努力はいつも楽しい』、上月マリア著『“なりたい女(わたし)”になる自分磨き』ほか『歩きながら「綺麗」になる本』とか『好かれる女性になる100の秘けつ』など、似たようなタイトルのものがズラリと並ぶ。タイトルは異なっても、テーマや結論は似ていて、要は「ふだんの考え方や行動を変えることで、魅力的な人間に変身し、人生が変って幸せになれる」ということなのだ。

「自分磨き本」にすっかりハマっているという明美さん(33歳)は、「この手の本は、私にとって麻薬みたいなもの。読むと元気になれるから、手放せないんです」という。明美さんは某一流広告代理店の企画担当で、デキる女だと仕事場での評価も高い。本を読まなくても十分元気に見えるけど……?「人には“仕事が恋人よ。私は独身主義”とか言ってごまかしてますが、実は結婚願望がすごく強いんです。何度も恋をしてるけど、最終最後はうまくいかない。 “疲れるんだよ”的なこと言われて、いつも彼が去ってっちゃう。モテるんだけど、長続きしない。で、私の性格に問題があるのかなぁと……」。

明美さんは超美人というほどではないが、プラダをすっきり着こなして、見た目は間違いなく「男性が連れて歩きたがる女性」だ。「『自分磨き本』を読むと、中に書いてあるフレーズがいちいち自分にあてはまるんですよね。<人と自分を常に比べている>とか、<人の顔色をうかがいすぎて、本音を隠してしまう>とか。だからよくないのかなー、と思って読むとそうではなくて、<そんなあなたでいいんです>とか、<誰でもみな同じです>なんて書いてあって、安心させてくれる」。明美さんに聞いてみると、「自分磨き本」に共通しているのは、今ある自分を否定しない……ということだ。なるほど、「自分磨き本」は、ある意味カウンセリング的な役割を担っているのかもしれない。

「こういう本が売れるのは、最近、尊敬できる先輩や相談できる友達がいなくなったせいじゃないかな。だから本に頼っちゃう。ホントだったら親しい友人や先輩がアドバイスしてくれるようなことが、本に書いてあるからつい読んじゃうんだと思います」。「自分磨き本」は、親友の代わり、というのは派遣のプログラマー絵理さん(36歳)。30もなかばを超えると、職場では自分の弱みを見せられない。ましてや「人生これでいいのだろうか?」とか、「私はホントは何がしたいの?」といった漠然とした悩みは、人に話しても答えが出るはずがない。そこで「自分磨き本」や「自己啓発」の本を開き、答えを探そうとしてしまう。

絵理さんが手に取る「自分磨き本」は、著者を選ぶという。瀬戸内寂聴などの「すでに完成された崇高な精神をお持ちの方」の本ではなく、自分と同じくらいの年齢か、少し年上の人が書いた本。多少、著者自身にも迷いがありそうなキャラクターが書いた物を選ぶという。「要はお友達代わりかな。新しい本が出るとつい手にとって、よし、これ読んで私もがんばるぞ!」という気になるんです。

「自分磨き本」が売れる理由は何なのか、その道の専門家に聞いてみた。取材に協力していただいたのは、人生論や経営論などの「自分磨き本」では老舗ともいえる出版社「PHP研究所」の文芸出版部の兼田将成さん。『ハッピーリセットブック』や『逆境をバネにする方法』など、女性のための「自分磨き本」をたくさん手がけてきた方だ。

このジャンルで売れている本の、最近の傾向は?とたずねてみると、「本の体裁で申し上げますと、売れているものには2通りあって、ひとつは薄く、文字は少ないもの。つまり絵や写真を多く使った、エッセンスだけを抽出したようなものですね。もうひとつは、松下幸之助さんとか稲盛和夫さん、本田宗一郎さんなどが過去に書かれた、自己啓発の王道をいくような本が、最近多く読まれています」。兼田さんのお話によると「自分磨き本」の草分け的著者が書いた、読み応えのあるタイプと、薄くて絵や写真を多用したタイプの、両極端のものが売れているという。

「これまではどちらかというと仕事、人生、遊び、恋愛……と、それぞれの部門ごとに啓発するテーマが分かれていたんですが、最近は“人生”という大きな枠組みの中でとらえる本が多くなっていましたね。書店の店頭を見ても、そういうものが主流になっていると思います。また、古くは沢村貞子さんのような方の生きかた、しぐさなどで学んでいくというものでしたが、最近はそれに加えてスピリチュアルなもの、たとえば心の問題もケアしてくれるような本が増えていると思います」と、兼田さん。

いま大ブームの「自分磨き本」。では、このブームはいつ頃から始まったのだろうか?兼田さんに聞いてみた。「これは私なりのとらえかたなのですが、3年くらい前にSMAPの“世界で一つだけの花”という歌がヒットしましたね。ちょうど同じ頃からではないかと思います。つまり、 “ナンバーワンにならなくてもオンリーワンになればいい”といった価値観が一般的になり、それが現在の自分磨きにつながってきているのではないかと思います」。

競争社会、比較社会の中で疲れ、自分に自信が持てなかった人が、新しい価値観のもとに、自分に磨きをかけることで居場所を手に入れる。人に評価されることを求めるのではなく、自分でほめられる自分になる。自分を愛せるようになると、自然に自信に満ちたふるまいとなり、結果、人との関係も変化していく、幸せが舞い降りてくるという図式。納得できるできないはともかく、こういう本が売れるということは、独女が皆きれいに賢くなり、世の中の空気が少しよくなることは間違いない。

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