【追悼】小田実さん死去。生前、パブリック・ジャーナリズムの方向性語る
2007年07月30日04時33分 / 提供:PJ
写真は作家の小田実氏。小田実氏は愛妻玄順恵さんを「人生の同行者」と呼称される。玄順恵さんは、「人生の痕跡を抱きしめながら、自由な個人こそ世界人」と主張され、朝鮮半島や日本、長期滞在した中国やドイツなどの自身の経験から、世界観や歴史の全体像を知る重要性を、大学などの講演で語り続けておられるという。「韓国で出版された自伝エッセー『私の祖国は世界です』(玄岩社刊)の日本版は、07年春、出版する予定になっているんだよ。」と、小田氏は温かい眼差しで記者に話してくださった。(撮影:渡辺直子、05年12月22日兵庫県西宮市の小田実氏の自宅にて)
パブリック・ジャーナリスト(PJ)ニュースは2005年2月、小田光康編集長が「現在の日本の大手新聞社やテレビ局の権力支配による独裁構造が、マスコミュニケーションにおける言論の多様性を妨げている。新聞の再販制度や特殊指定の見直しや記者クラブ制度の撤廃など、日本のマスメディア界の構造改革が必要である。また、マスメディア界の独裁構造から、伝えなければならない事を伝えないという不作為による報道被害もある。こうした中、伝えなくてはならない問題を、マスコミに頼らず、市民自らが市民メディアを通じて、直接訴えようではないか」と指針を掲げ発足した市民メディアである。
小田氏の呼びかけにより、記者(渡辺直子)は同年4月、PJニュースの募集に応じ、PJとして登録した。その後、記者は市民の観点から、取材・記事投稿を続け、これまでに記事を投稿した数は約400本に及んだ。取材を進めていた昨年8月、作家で市民活動を続けておられる兵庫県西宮市在住の小田実氏と巡り合った。
それ以来、記者は小田実氏の市民活動の講演を取材させていただいた。小田実氏は現在のマスメディア界についてどのようなお考えをお持ちなのか。また、PJニュースのみならず、オーマイニュース、JanJanなど、市民メディアの存在価値が認知されつつある現在、今後、市民メディアはどのような方向性を持って邁進していくべきなのかなど、アドバイスいただいた。
―小田先生の市民活動の講演を聞かせていただき感じたことですが、小田先生の主張されていることは、真っ当なことで、どんどんメディアが報道するべきだと思います。なぜ、小田先生が市民活動などで主張されていることがあまりマスメディアで報道されないのでしょうか。
「メディアは主張が憲法と絡まっていると嫌がるね。私は阪神大震災直後、被災者のことを考え、災害基本法の提案や市民議員立法運動を行った。だが、マスコミはあまりそれを報じなかった。マスコミは、憲法など基本的なことを報じることに積極的ではないね」
―11月に小田先生が代表する「市民の意見30・関西」が、教育に関わる市民の政策提言を国家議員などに送付され、意見を求める行動を起こされましたが、その件について、マスコミの報道はあったのでしょうか。
「あの件について、マスコミの報道は全くされなかった。今のマスコミはそんなもんだよ。教育に関する市民の政策は政府の教育基本法に絡んでいる。わたしたち市民が憲法を基本的な原則として論議するのは当然で、マスメディアは憲法に絡んだことは報じたくないのだから、どうしょうもないね。今のマスメディアは政治に迎合しているよ。昨年、仙台で2000人集まってデモをしたのだが、その時もメディアは一切報じなかったね」
「阪神大震災以後、わたしたちが提起した被災者の公的援助を求める市民議員立法について、全国的に報じてくれたのは、東京の朝日新聞の夕刊の三行のコラム記事だけだった。そのことで、全国的にわたしたちの活動を知られるようになった。東京の新聞に載らなければ政治が動かない。大阪版にさえ載らないのだから、東京の人たちに知ってもらえるわけがない。ある日、東京の新聞に載せてほしいと考え、東京で記者会見をしたことがあった。だけど新聞に載らなかったんだよ。記者会見に集まった新聞記者が、大阪の記者だったんだよ。東京の朝日新聞と大阪の朝日新聞は違うからね」
「大阪毎日新聞では、こんなことがあったよ。ある日、一面のトップに、この運動の記事が載っていて、びっくりしたことがある。同時に、有り難かった。その日、東京毎日新聞の記者が別のことで家に来たので、大阪毎日新聞のわたしたちのことが書いてある記事を見せたら、『はじめて見ました』と、冗談交じりに言ったよ。その記者。そういうもんなんだよ。今のマスメディアって・・・」
―PJニュースのみならず、オーマイニュース、JANJANなど、市民メディアの存在価値が認知されつつある現在、今後、市民メディアは、どのような方向性を持って、邁進していくべきなのでしょうか。
「まず、市民が意見を持つことが重要。お仕着せではない自分の考えをね。そして、市民メディアを担う市民記者は、市民記者自身が自ら勉強したことを報道すればいい。報道する際、これまでのマスメディアが天皇問題などの報道をタブーとしてきた問題を、市民記者は固定観念に捕らわれない方がいいと思うよ。それとテレビに出ている評論家の言動に惑わされないことだ」
「そして、報道においては書評も重要なんだよ。記者が人を高めることも大切だからね。ただ、現象だけ追いかけていてはだめ。現象を追いかけるだけでは今の既存メディアと同じじゃない。オーマイニュースも高度な記事が出ているよ。PJニュースも頑張ってほしい。あなたたちのような市民記者の活動は大切だ」
―PJニュースは2月に発足2年を迎えるのですが、PJニュース(市民メディア)に対して、一言お願いします。
「2年になるの?よく頑張ったじゃないの。編集長は、どんな人?編集長の考え一つだからね、メディアの報道は。PJニュースのサイトを後押ししたホリエモンは今、どんな考えを持っているんだろうね。ホリエモンには再度、新たなことに挑戦してほしい気がする。PJニュースは、インターネットで全国に配信されているわけだから、全国紙と思ったらいいじゃない。全国紙になったらいいんだよ。あなたたちの活動で。頑張ってよ」
このインタビュー取材は昨年暮れ、記者が小田氏の自宅にお伺いさせていただき、小田氏が取材に応じてくださる形で実現した。小田氏は取材終了後、「あなたに早々ながら、年賀状を渡してあげるよ。わたしがパソコンで、自分で作ったんだよ、この年賀状。読み上げるよ」とおっしゃり、記者に年賀状の文面を読み聞かせてくださった。小田氏の今年の年賀状には、こんなことが書いてあった。
「先行きの見えない、芳しくもないことのつづく日本、世界ですが、新しい年の到来をともあれお祝いいたします。『リデル=スコット希英中辞典』は古代ギリシャの『喜劇』を古、中、新の三時期に分け、『新』喜劇はふつう私たち現代人が考える喜劇ですが、『古』喜劇は、『その時代のもっとも力ある人物たちを名指しで攻撃するためのもの』、『中』喜劇はそうした中心人物たちをそれとおぼしき姿で攻撃するものだと定義しています。アリストパネスの喜劇はこの『古』『中』の定義そのものの『反体制』の文学でしたが、この定義は本質的に『反体制』である文学の本質を言い表せている定義だと思います。この混沌の世の中、私は今年も変わらず自分なりにこの本質的に『反体制』である文学の仕事を続けて行きたいと考えています。『人生の同行者』玄順恵が昨年韓国で出した『私の祖国は世界です』の日本語訳が春に出版される予定です。2007年新春」【了】
■関連情報
作家 小田実氏のHP
市民の意見30・関西
小田実氏の新刊書
終わらない旅(新潮社)
玉砕/Gyokusai(岩波書店)
9・11と9条 小田実平和論集(大月書店)
小田実氏の市民活動に関するPJニュース記事
「ニューヨーク・タイムズ」から見る日本の終戦
8・14大阪大空襲を考える=市民の意見30・関西
米国の終戦は2ヶ月前だった、NYT紙面では
戦争は「神風吹かず」、特攻隊が命を犠牲にいた
「小泉首相よ、今こそ動け」中東停戦求め、首相に声明
「イラク派遣」違憲確認の訴え、大阪地裁が却下
私の「反戦」の根拠・・・作家・小田実
『玉砕』攻撃で、無駄な死を遂げた兵士たちへ
「9・11」と「九条」考える=鶴見俊輔・小田実の両氏
市民で作る「市民の政策」=作家・小田実らが呼びかけ
「教育」市民が政策提言=作家・小田実氏らが実現へ
「12・8」特別例会、「鎮魂」テーマで=小田実氏
宗教者から見た「12・8」=小田実氏の集会で
やらせミーティングは教育破壊会議か!小田実氏らが苦言
靖国神社、創設当時の日本人の思想=住職・中嶌哲演さん
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 新納 直子
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