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「撮らせてもらったら発表する」私の責任

「撮らせてもらったら発表する」私の責任
ダッカで出会った成人女性。(撮影:山本宏樹)
【PJ 2006年12月31日】− 今まで、どうしても発表できなかった一枚の写真がある。バングラデシュのダッカで出会った一人の女性の写真だ。私は、彼女に出会う前日、友人の若いNGO職員にこう話していた。「バングラデシュの貧困を撮りに来た。もちろんそれだけじゃないが、一番はそれだ。誰もが見たくないような現実もあるだろうが、それを撮って伝えなければならない」。「なに馬鹿げたことを言って」そう言われるかと思ったが、彼は「そうか、撮ってくれ。お願いする」と、そう言った。

 次の日、彼と彼の友人とともに、特になにするわけでもなかったが、ジア公園というダッカにある大きな公園を訪れた。「おいみろよ、カップルがいるぜ」彼がおどけた様子で、私に声をかける。確かに珍しい、イスラム国のこの国でカップルを見るなんて。

 彼のNGOオフィスに帰ろうと、歩いていると小さな女の子が道ばたにぽつんと座っていた。少し不自然な女の子だ・・・。まじまじと見てみる。「彼女は子どもなんかじゃない、立派な成人女性だ」。彼の声。

 体が十分に成長していない女性だった。物を乞うている様子。障害ゆえ、物乞いとなる人がいる、そう聞いてはいたが出会うのは初めてだった。バングラデシュ人独特の陽気さなんて全くない。じッとこちらを見ている。寂しそうな顔をし、ぴくりとも動こうとしない。

 「ヒロキ、撮れ」。

 「『撮るべきじゃない』を撮るべき」「『撮るべきじゃない』を撮りたい」前日までそう言っていた私だった。ファインダー越しに彼女と目が合う。凍り付いた。「撮らないといけない」動かない指を無理矢理、数枚撮り、逃げるようにその場を去った。

 帰国してからも、その写真を見ると胸が締め付けられる。伝えなければならない。しかし、だからって彼女を「見せ物」にしていいのか。わからなかった。これっきりだった。これっきり、物乞いを正面から撮ることはなかった。

 目をそらしたくなるし、カメラを向けることが正直怖かった。ただ、今ではそれを後悔している。いや、後悔するとわかっていたのだろうが、できなかったのだ。

 帰国後数ヶ月経って落ち着いて考えてみる。撮らせてもらったのに、発表しないのは彼女に対して失礼ではないだろうか。「日本人にバングラデシュの現実を伝えたい」そう思い、現地に行った私の義務はいかなる状況であっても、まずは伝えることだろう。

 それに、決して趣味で撮ったわけではない。私一人が持っていても全く意味はない。そう思い、こういう形ではあるが、公にしたいと思う。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 山本 宏樹【 東京都 】
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