「耐震強度偽装事件」改革の経過を講演=JSCA(3)
2006年12月28日02時42分 / 提供:PJ
(2)からのつづき。事件の起きる要因を制度上の問題として見ることも必要であろう。社会一般の認識は「建築の構造は建築基準法が規制し、国が認定した能力ある建築士が設計し、国に準じる機関が検査をしているので安全だ」というものであろう。しかし、現状は建築士法の不備が原因で安全性が脅かされている。
現行建築士法が耐震偽装事件を生み出す連鎖構造
現在の制度では、一人の建築士が、意匠、構造、設備を監修できる能力があることになっている。ここにおいて構造設計者(建築士)の存在を無視しており、その存在を社会は認知せず、構造設計者(建築士)が法を改正する運動を展開しても、社会からの応援がない。また、人数の多い意匠設計者の既得権を守ろうとする壁に阻まれている。
このため、最悪のケースも生まれる可能性も否定できない。たとえば、特定行政庁も指定確認検査機関も、人件費節約のため、構造設計を知らない人を検査員とする。現状の構造設計は意匠事務所の下請け業務とみなされ、下請けのため法的、社会的責任とは無縁。損害賠償保険にも入れない。報酬が低く、スキルが上がらない。最終需要者に会えず確たるモラルが育たない。そして、構造を知らない人を一貫計算ソフトのインプッターに雇い、場合によっては誤用する可能性もある。その結果、無知な申請者が作成した計算書を、無知な検査員が審査する可能性も出てくるものであった。
確認審査制度の改革審議の経過
事件後には、国土交通大臣の公的諮問機関「社会資本整備審議会・建築分科会・基本制度部会」において、建築行政全般に関し答申書が作成された。スケジュールは、05年12月19日〜06年2月22日の間に中間報告を出し、06年8月31日に最終報告をするのもであった。国交省が事務局となり、事前提出の委員意見をまとめて説明し、1回の会議時間は2時間であった。委員構成は、建築・行政法・信頼工学の学識経験者・学会、業界団体、消費者団体、労働団体、保険業界からの代表26人であった。
中間報告で、26人の委員と事務局である国交省建築指導課が意見を出し合った。論点は、(1)建築確認・検査の厳格化、(2)指定確認検査機関の業務の適正化、(3)図書保存義務付け等、(4)建築士等の業務の適正化および罰則の強化、(5)建築士、建築事務所および指定確認検査機関の情報開示、(6)住宅の売主等の瑕疵担保責任履行に関する情報開示の6項目であった。
意見の分かれたポイント
このうち意見が分かれた論点は、(1)の建築確認・検査の厳格化であった。国交省は当初「計算書偽造を発見するため、申請書に計算書入力データを電子情報(CD−R添付)として提出させ、これを新設の再計算センターにて再計算する」という提案を行った。これに対しJSCAとして、再計算センターでは、構造安全性担保の問題解決ができない、と反対した。理由は(1)現状の再計算書は、未熟者が作成していて、問題が多い、(2)提出データの再検査は(1)が原因の工学的不整合を見過ごす、(3)再計算センターは、ずさんな審査の隠れ蓑となり、確認機関を堕落させる、というもの。この問題の解決には、構造の審査にあたる者を、構造の知識と設計経験のあるものに限定し、ピアチェック制度を採用すべきと主張した。【つづく】
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現行建築士法が耐震偽装事件を生み出す連鎖構造
現在の制度では、一人の建築士が、意匠、構造、設備を監修できる能力があることになっている。ここにおいて構造設計者(建築士)の存在を無視しており、その存在を社会は認知せず、構造設計者(建築士)が法を改正する運動を展開しても、社会からの応援がない。また、人数の多い意匠設計者の既得権を守ろうとする壁に阻まれている。
このため、最悪のケースも生まれる可能性も否定できない。たとえば、特定行政庁も指定確認検査機関も、人件費節約のため、構造設計を知らない人を検査員とする。現状の構造設計は意匠事務所の下請け業務とみなされ、下請けのため法的、社会的責任とは無縁。損害賠償保険にも入れない。報酬が低く、スキルが上がらない。最終需要者に会えず確たるモラルが育たない。そして、構造を知らない人を一貫計算ソフトのインプッターに雇い、場合によっては誤用する可能性もある。その結果、無知な申請者が作成した計算書を、無知な検査員が審査する可能性も出てくるものであった。
確認審査制度の改革審議の経過
事件後には、国土交通大臣の公的諮問機関「社会資本整備審議会・建築分科会・基本制度部会」において、建築行政全般に関し答申書が作成された。スケジュールは、05年12月19日〜06年2月22日の間に中間報告を出し、06年8月31日に最終報告をするのもであった。国交省が事務局となり、事前提出の委員意見をまとめて説明し、1回の会議時間は2時間であった。委員構成は、建築・行政法・信頼工学の学識経験者・学会、業界団体、消費者団体、労働団体、保険業界からの代表26人であった。
中間報告で、26人の委員と事務局である国交省建築指導課が意見を出し合った。論点は、(1)建築確認・検査の厳格化、(2)指定確認検査機関の業務の適正化、(3)図書保存義務付け等、(4)建築士等の業務の適正化および罰則の強化、(5)建築士、建築事務所および指定確認検査機関の情報開示、(6)住宅の売主等の瑕疵担保責任履行に関する情報開示の6項目であった。
意見の分かれたポイント
このうち意見が分かれた論点は、(1)の建築確認・検査の厳格化であった。国交省は当初「計算書偽造を発見するため、申請書に計算書入力データを電子情報(CD−R添付)として提出させ、これを新設の再計算センターにて再計算する」という提案を行った。これに対しJSCAとして、再計算センターでは、構造安全性担保の問題解決ができない、と反対した。理由は(1)現状の再計算書は、未熟者が作成していて、問題が多い、(2)提出データの再検査は(1)が原因の工学的不整合を見過ごす、(3)再計算センターは、ずさんな審査の隠れ蓑となり、確認機関を堕落させる、というもの。この問題の解決には、構造の審査にあたる者を、構造の知識と設計経験のあるものに限定し、ピアチェック制度を採用すべきと主張した。【つづく】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 伊藤 昭一
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