JAXA統合スーパーコンピュータシステム
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2日、調布航空宇宙センターにある「JAXA統合スーパーコンピュータシステム」(JSS)を報道関係者に公開した。

 「JAXA統合スーパーコンピュータシステム」(JSS)は情報・計算工学センター(JEDIセンター)が運用を担当している。JAXAの事業を推進していくためにはスパコンによる高度な数値シミュレーション技術が不可欠で、かつ限られた予算内で信頼性を上げ、開発期間を短縮していくような効率化が求められている。今後は、ますますプロジェクトの計算重要の増加が予想されるが、新システムはこれらを見越し、調布、角田、相模原の3か所に設置されていたスパコンをひとつに統合したものとなる。正確には、レンタル期間の残っている相模原のシステムは今年いっぱいで終了となる。

 センター長の藤井孝藏氏は「これまでスーパーコンピューターは、宇宙開発の個々の問題点の課題解決に使われてきたが、本格的にシステム開発のなかに導入される姿にはなっていなかった。航空機や自動車の世界では開発プロセスのなかにシミュレーションが組み込まれている。長期的に考えて宇宙開発もしっかりシミュレーションを使い、より信頼性を上げ効率化を目指していきたい」と話す。

 「JAXA統合スーパーコンピュータシステム」(JSS)のメインシステムには富士通の「FX1」が採用された。同センターが使う実際のシミュレーションプログラムが効率よく走ることが条件という観点から「ベンチマークなども私たちが使うソフトウェアでベンチマークを行い、技術評価をした」(藤井氏)という。スーパーコンピュータの性能比較プロジェクト「TOP500」の標準ベンチマーク“LINPACK”の測定では、110.6テラフロップス(1テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算速度)の実行性能と、91.19%の実行効率(理論性能に対する実行性能の比)を達成した。この結果は昨年11月のTOP500リストで実行効率で世界1位、実効性能で国内1位、世界ランキングで17位となる。ちなみに、「FX」にはクアッドコアCPU「SPARC64 VII」が搭載されている。

 メインシステムの性能について藤井氏は次のように話している。「例えばCPUを100個並べれば100倍性能が出るというのが理論的な性能だ。しかし実際には、ネットワーク接続などの環境のなかで4つのコアが常に100%稼働することは、パソコンの世界でもスパコンの世界でもない。また、ある演算をしたときに、一方は終了したが、他方はまだ終わってないということが起こると損をする。性能をいかに引き出せるかというところが勝負だと思っているが、富士通は独特の仕込みを入れることで上手く同期をとり、動かす仕込みを入れている。これによって実効性能が上がったと理解している」。

 「JAXA統合スーパーコンピュータシステム」(JSS)を具体的に見ていくと、大規模数値シミュレーションを行う中核のスパコン「Mシステム」(富士通 FX1/3008CPU、120TELOPS、94TBメモリ)、大規模計算のプレ実行や緊急利用などを機動的に行うスパコン「Pシステム」(富士通 FX1/384CPU、15TELOPS、6TBメモリ、44TBディスク)、ベクトル計算に最適化されたアプリケーションプログラム資産用のスパコン「Vシステム」(NEC SX-9/48CPU、4.8TELOPS、3TBメモリ、20TBディスク)、高度に並列化されていない一般的なサプリケーション用の計算サーバ「Aシステム」(富士通 SE M9000/32CPU、1.2TELOPS、1TBメモリ、10TBディスク)といった4つのシステムとストレージシステム(ディスク装置1PB、テープ装置10PB)で構成されている。「1つのノードには1個あたり40Gフロップスの性能があるSPARCK64が1つ搭載されていて。メモリは32GB。このようなボードが(Mシステムでは)全部で3008接続されている。シャーシは4ノードを搭載している」(研究領域リーダー・松尾裕一氏)。

 MシステムとPシステムが並ぶマシンルームには独自の空調通風方式が採用されており、通路の床からは冷却風が吹きあげられていた。この冷気は写真のように。外側通路からシステム内部に入り込み天井へ抜け、空調機を通って床下ダクトへと循環していた。

 同システムは5年間の使用を考えている。藤井氏は「5年というのは意外と長い。ムーアの法則を考えても、今後はこれで他と競っていかなければいけない」「以前に比べたら圧倒的にプロジェクトはサポートしていると思うが、現在抱えている30以上の課題を解決し、もっと有効であることを知っていただく」などと話した。

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