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平成の「仇討ち」は認められないのか?
2006年12月25日08時55分 / 提供:PJ
【PJ 2006年12月25日】−
12月15日。冬にしては、爽やかな陽射しの射す、東京都港区にある泉岳寺の境内に居た。友人、内田裕也さんが34年もやっている「ニューイヤーロックフェスティバル」の、ニューヨーク進出のプレス発表を泉岳寺でやると発案したのだった。毎年、NHK紅白歌合戦をぶっ飛ばすとNHK前でプレス発表をやったり、平和アピールに国会をぶっ飛ばすと、議事堂前でプレス発表をやったりして来た。既成のものへの抵抗感の現れだ。
泉岳寺は都会の中のこぢんまりとした瀟洒な寺である。この日は人の混雑もなく本殿に参拝してゆったりとした気分になれるのが心地よかった。寺の左手の石段を上るとたなびく霞のごとく線香の香りと煙が身を包んだ。さらに石段を上がる。赤穂四十七士のそれぞれの墓碑を過ぎて奥の右角に、大石内蔵助の墓碑がひときわ大きく在った。老人の一団が線香片手に居るだけで静かだった。1人の藩士の墓前に若い親子づれが、線香を捧げていたのは印象的であった。石段を下りて大石内蔵助の近く隣に浅野内匠頭の墓碑が在った。
線香の煙の中で300年も前の出来事が頭の中を出たり入ったりする。目の前にある墓石たちはまぎれもなく存在している。歴史の証拠である。あの赤穂事件は本当に在ったのだと。死という無念さと、事成し遂げたという爽快さが混ざり合って、その思いに馳せると煙の空間に居る不思議さを感じたのである。
泉岳寺は、赤穂四十七士の葬られた寺である。「赤穂藩士の忠臣蔵」で知られている。(1701)元禄14年3月14日、江戸城松の廊下で浅野内匠頭が吉良上野介に対し刃傷に及び、時の将軍徳川綱吉が激怒し、浅野内匠頭は即、切腹、赤穂浅野家は断絶となる。(1702)元禄15年12月14日、旧赤穂藩士の家老、大石内蔵助以下、四十七士が吉良邸に討ち入り、吉良上野介を討ち果たし、浅野内匠頭が眠る泉岳寺へ凱旋、その首級を捧げた事件のあった日である。
当時江戸では、藩主に忠義を尽くした義士であると、人気を得たのであるが、法を犯した罪で(1703)元禄16年2月4日大石内蔵助を含む四十七士が、切腹を命じられ、泉岳寺に葬られたのである。しかし、江戸庶民はその後も赤穂藩士を支持する声が大きく、それが現代まで、小説、歌舞伎、舞台、映画、テレビと12月になると、話題が蘇るのである。
「赤穂事件」はこのように、後に脚色されたために事件の真相は明らかでないが、現在では浅野家が「善」で、吉良家が「悪」とされているのが通説だ。つまり、身内が殺されたら殺し返す「仇討ち」が、人間の真理として当然だと思っていたのだ。それと良く似た「果たし合い」「決闘」がある。いずれも、人間が止むに止まれず、自分の尊厳を守るために行うことだ。それも、他人任せでなく自分自身が全てを捨てて、信じた正義のために、身の潔白を明かすために、命を賭ける崇高な行為である。過去の歴史で、日本にも、西欧でもある、「正」と「悪」「生」と「死」の解決方法である。
時は2006年も暮れなずみ始め、2007年が目の前に迫っている。現世はいかがなものであろうか。「正」と「悪」の解決方法は変わったのであろうか。いまだに、世界の各地で戦争、テロ行為は、歴然として存在するし、やられたら、やりかえす、殺されたら、殺し返す、途方もない人間の造った、大道具の「核」をかざして。巷の庶民も、小道具の「物カネ」で親子兄弟でさえも、原因不明の殺戮がいまだに、止められない。人間の業である。
大義名分で人殺しする時代は終わっているはずなのに。赤穂藩士も大義名分を重んじていたろうが、己を捨てたサクリファイスの、見返りのない人間純粋の死を選んでいるから人々に語り継がれ、今でも、あの煙の中で生きているに違いないと思ったのである。そこには、崇高なる信義が在るように見えるのだが。
おのれの、野心、欲望のみで行う戦いは、物欲的侵略戦争である。もっと、信義と正義の戦いであるならば、最愛のものが無体に抹殺されるとしたら、自分も「仇討ち」するだろう。その気概を失ってしまった物欲のための戦いは許されざるものである。真の「仇討ち」精神を持つべきだと思う。さもないと、「正」と「悪」を判断する事は出来ない。泉岳寺の煙は頭の中に残ったようである。きれいな死に様でしか、きれいな生き様はない。
“国破れて山河あり、城春にして草木深し…”【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 池野 徹【 千葉県 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
泉岳寺は都会の中のこぢんまりとした瀟洒な寺である。この日は人の混雑もなく本殿に参拝してゆったりとした気分になれるのが心地よかった。寺の左手の石段を上るとたなびく霞のごとく線香の香りと煙が身を包んだ。さらに石段を上がる。赤穂四十七士のそれぞれの墓碑を過ぎて奥の右角に、大石内蔵助の墓碑がひときわ大きく在った。老人の一団が線香片手に居るだけで静かだった。1人の藩士の墓前に若い親子づれが、線香を捧げていたのは印象的であった。石段を下りて大石内蔵助の近く隣に浅野内匠頭の墓碑が在った。
線香の煙の中で300年も前の出来事が頭の中を出たり入ったりする。目の前にある墓石たちはまぎれもなく存在している。歴史の証拠である。あの赤穂事件は本当に在ったのだと。死という無念さと、事成し遂げたという爽快さが混ざり合って、その思いに馳せると煙の空間に居る不思議さを感じたのである。
泉岳寺は、赤穂四十七士の葬られた寺である。「赤穂藩士の忠臣蔵」で知られている。(1701)元禄14年3月14日、江戸城松の廊下で浅野内匠頭が吉良上野介に対し刃傷に及び、時の将軍徳川綱吉が激怒し、浅野内匠頭は即、切腹、赤穂浅野家は断絶となる。(1702)元禄15年12月14日、旧赤穂藩士の家老、大石内蔵助以下、四十七士が吉良邸に討ち入り、吉良上野介を討ち果たし、浅野内匠頭が眠る泉岳寺へ凱旋、その首級を捧げた事件のあった日である。
当時江戸では、藩主に忠義を尽くした義士であると、人気を得たのであるが、法を犯した罪で(1703)元禄16年2月4日大石内蔵助を含む四十七士が、切腹を命じられ、泉岳寺に葬られたのである。しかし、江戸庶民はその後も赤穂藩士を支持する声が大きく、それが現代まで、小説、歌舞伎、舞台、映画、テレビと12月になると、話題が蘇るのである。
「赤穂事件」はこのように、後に脚色されたために事件の真相は明らかでないが、現在では浅野家が「善」で、吉良家が「悪」とされているのが通説だ。つまり、身内が殺されたら殺し返す「仇討ち」が、人間の真理として当然だと思っていたのだ。それと良く似た「果たし合い」「決闘」がある。いずれも、人間が止むに止まれず、自分の尊厳を守るために行うことだ。それも、他人任せでなく自分自身が全てを捨てて、信じた正義のために、身の潔白を明かすために、命を賭ける崇高な行為である。過去の歴史で、日本にも、西欧でもある、「正」と「悪」「生」と「死」の解決方法である。
時は2006年も暮れなずみ始め、2007年が目の前に迫っている。現世はいかがなものであろうか。「正」と「悪」の解決方法は変わったのであろうか。いまだに、世界の各地で戦争、テロ行為は、歴然として存在するし、やられたら、やりかえす、殺されたら、殺し返す、途方もない人間の造った、大道具の「核」をかざして。巷の庶民も、小道具の「物カネ」で親子兄弟でさえも、原因不明の殺戮がいまだに、止められない。人間の業である。
大義名分で人殺しする時代は終わっているはずなのに。赤穂藩士も大義名分を重んじていたろうが、己を捨てたサクリファイスの、見返りのない人間純粋の死を選んでいるから人々に語り継がれ、今でも、あの煙の中で生きているに違いないと思ったのである。そこには、崇高なる信義が在るように見えるのだが。
おのれの、野心、欲望のみで行う戦いは、物欲的侵略戦争である。もっと、信義と正義の戦いであるならば、最愛のものが無体に抹殺されるとしたら、自分も「仇討ち」するだろう。その気概を失ってしまった物欲のための戦いは許されざるものである。真の「仇討ち」精神を持つべきだと思う。さもないと、「正」と「悪」を判断する事は出来ない。泉岳寺の煙は頭の中に残ったようである。きれいな死に様でしか、きれいな生き様はない。
“国破れて山河あり、城春にして草木深し…”【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
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