15日、英たばこ大手ギャラハーの買収手続きを開始すると発表したJTの木村社長(撮影:東雲吾衣)

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日本たばこ産業(JT)<2914>は15日、英たばこ大手ギャラハーの買収手続きを開始すると正式に発表した。2007年上期をメドに完全子会社化し、スイス・ジュネーブにあるJTの海外拠点との経営統合を目指す。

 英国法に定められた友好的な買収方法を採用し、ギャラハー株1株あたり約2635円で全株を取得する。取得額は1兆7310億円で、ギャラハー社の純有利子負債を含めた買収総額は約2兆2530億円に上る見込みだ。日本企業による企業買収として過去最大となる。JTはすべて現金で決済する予定で、JT保有の現金7000億円のほか、米メリルリンチなど金融機関からの借り入れで調達する。

 ギャラハーは世界5位のたばこメーカーで「メンフィス」や「シルクカット」などの銘柄を持つ。買収が成立すれば、世界第3位のJTのたばこ販売数量(05年実績)は6000億本(JT・4100億本、ギャラハー・1900億本)規模となり、現在首位の米フィリップ・モリス、第2位の英国ブリティッシュ・アメリカン・タバコとの差を縮めることになる。また、市場別では、JTの主要市場の日本・台湾・マレーシアの3市場に、ギャラハーが40%以上のシェアを持つ英国・北欧諸国など5市場が加わり、ロシア・ウクライナも有力市場として浮上するなど、シェア2位以上の市場の数は10になる。

 健康意識の高まりや高齢化により国内市場が縮小する中、JTはギャラハーが強いロシアやCISなど成長が有望視される海外市場に活路を見いだすことで収益増を図るとともに、ギャラハーが持つかみたばこなどの製造技術や流通網を活用することでコスト削減を目指す。

 15日夕、東京都千代田区の帝国ホテルで開いた記者会見で、JTの木村宏社長は「外部 資源の獲得を通じた規模の拡大により、世界的なたばこメーカーとして競争力を高めることが必要との結論に達した」と強調。「これまでの提携案件の積み重ねから、お互いをよく知っており気心が知れていた」というギャラハーに11月末、JT側から買収提案を持ちかけ、規模拡大で将来的な収益安定性を確保したいという思惑が一致したという。他の海外たばこメーカーに対しての買収の可能性については否定した。

 また、木村社長は買収金額について「ギャラハーが生み出している利益を考えると、妥当な金額である」と述べ、現金による買収については「ギャラハーの株主にとってもっとも魅力的な方法」と説明した。【了】